↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バラの乙女とバラの騎士と黄金のバラ  作者: 香田紗季
バラの子どもたち編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/35

2-1

読みに来てくださってありがとうございます

第二部を始めます。

ハッピーエンドにならない可能性に怯えております。

甘い要素がかなり少なくなりますので、ご承知おきください。

 ここ最近、エリヤ王妃の機嫌が良くない。


 エリヤ王妃は王太子妃となったその日から、王兄妃とクラベルとの3人で王家の「ヴェレッド王のバラ」を管理するようになっていた。原木と、エリヤ王妃が育ててきたザイト王の分身たる「ヴェレッド王のバラ」の2本のバラだ。だが、クラベルがどんなに手伝っても、王家の「ヴェレッド王のバラ」はアシェル伯爵家に咲くバラのようには光り輝くことがない。アシェル家の「ヴェレッド王のバラ」を知る人は、これこそが本物であり、王家にある方が(まが)い物だ、などと言うようになった。当然エリヤ王妃の耳にも聞こえる。面白くない。


 実際、バラの妖精ガロファーノの分身でありクラベルが育ててきた「ヴェレッド王のバラ」を見てしまえば、その違いは歴然としている。そもそも自分が咲かせたバラは黄金ではない。そのこともエリヤ王妃のプライドを傷付けていた。初めは大丈夫だと思っていたのだ。それなのに、実物を見てしまえば、いかに本物の「ヴェレッド王のバラ」が素晴らしく特別なバラであるかを実感させられてしまう。一度アシェル家にある「ヴェレッド王の黄金のバラ」を1本譲ってもらったが、葉は棘と共に全て取り除かれていた。茎だけでも挿し木で発芽するという人もいたがそれを許される雰囲気ではないし、同じ木なのに違う花や劣った花が咲いたとしたらそれはそれで屈辱だ。枝変わりという言葉でごまかせるものでもないだろう。


 その上、エリヤ王妃のバラの騎士だった王ザイトが、為政者としては穏やかすぎるのも気になった。自分の騎士として一緒に過ごしているときにはいい人だと思ったし、親身になって助けてくれるところに惹かれたが、それは狭い範囲の中でしか通用しないものだったらしい。要望書を全て叶えていたら矛盾が生じるということを理解してくれない。小さな要望一つ一つを国王自ら丁寧に聞くので、請願者が後を絶たない。まだ順番が来ないとトラブルになる。エリヤ王妃は理解した。これが、王の器ではないものが王になったということなのだと。おそらくバラの妖精ガロファーノであれば、ばっさり切り捨てることができるだろう。


 やはり、王妃になってはいけなかったのか。


 侯爵令嬢だったのだ。通常ならば王妃になる可能性を十分に持つ身分である。王妃になって実家の父も喜んだし、父は実際以前より幅を利かせている。だが、それ以上に多くの人がその様子を窺い、発言力を増しているのが、アシェル伯爵だ。


 父侯爵によると、アシェル伯爵は元々非常に有能な人だったらしい。王城で財政副長官をしていたが不正を見つけると必ず糾弾し、徹底的に追い詰めるのだという。


「学生時代はジャッカルと呼ばれていた。ジャッカルはライオンの食べ残しの死肉をあさる。あいつは身分が高い者の不正の『痕跡』から不正を暴く。あいつに見つかって退学させられた奴は何人もいる。復讐しようとした家もあったようだが、そういう家はじきにお取り潰しになった。あいつの父親もジャッカルだったんだろう。敵に回したら恐ろしい男だ。それだけはよく覚えておけ」


 父の言葉を聞いてから、エリヤ王妃はアシェル伯爵が怖くてならない。不正などしていなくとも、何か言いがかりをつけれるのではないかという気持ちになってしまうのだ。一度アシェル伯爵と文官が話をしている近くを通ったことがあるが、あまりに怯えていたのだろうか、王妃様は体調が優れないのではないかとそれはそれは心配された。あの一件で、王妃は自分がアシェル伯爵に苦手意識を持っていると気づかれたのではないかと気が気ではなかった。


・・・・・・・・・・


 「バラの乙女」選定の日から1年が経った。国内の勢力図は1年前と全く違ったものになっていた。以前は王家を頂点とした明確な序列順位が決まっていた。今は形式上は王家がトップになっているが、実質上はアシェル伯爵家が国の決定権を握るようになっていた。小さな請願1つひとつに対応していたザイド王がダウンし、アシェル伯爵が宰相として政務を取り仕切ることになったのだ。初めはエリヤ王妃が反対していたが、アシェル伯爵の、


「それでは、王妃様に全てお願いできますか?」


 の一言で取り下げざるを得なかった。元々財務副長官として国庫の流れを掌握しているアシェル伯爵である。アシェル伯爵がいなければ国が回らない状態になるまでに、それほど時間はかからなかった。


「父上が頑張ってくれているから、俺たちは俺たちの計画を進められる」


 ガロファーノは咲き始めた黄金の「ヴェレッド王のバラ」に触れながら、クラベルに言った。


「もう、いつ生まれてもおかしくない状態だ。僕たちの子どもは、この国の未来を変える大切な子。今までも毒の混入未遂は何度もあったし、生まれてからも誘拐や殺害を防がなければならない。大丈夫、バラたちが守ってくれる。心配するな」


 はち切れそうなクラベルのお腹には、男の子がいることが分かっている。


「この子にはバラの力が流れているかどうかわからない。だが、妖精と半妖精の子どもなんだ。これまでの王家の持つバラの力以上の力を持つようになる可能性が高い、と俺は思っている。この子がバラの力を使えるようになったら、すぐに制御できるようにしなければならないな」

「ガロ、私にはバラの妖精としてのことは分からない。だからあなたに全てお願いするしかないわ。でも、この子には妖精としての生き方だけでなく、人間として生きる部分も残してあげたい。それに、私はこの子に重荷を背負わせたくない。お願い、この子がもし役割を望まないと言った時には、許してあげてね?」

「心配いらない。もし将来役割を拒否したとしても、そのことは咎めないと約束しよう」

「ありがとう、ガロ」

「いいんだ、ベル。ベルが言いたいことを言えなくなったら、俺はきっと父上になぶり殺しにされるだろう」

「ガロでも敵わない?」

「あの人、文官のはずなのに、自分の家の騎士団の団長をやっていたような人だよ? 俺が後を継いで団長になった後も、新人訓練は必ず父上がやっていた。そして、新人全員が医務室送りだ。いろんな力をうまく使わないと、バラの蔓だけではどうにもならないかもしれない」

「そうなの……」


 ガロファーノはそってクラベルのお腹に手を添えた。


「名前、決めないとな」

「そうね」


 微笑む2人の姿にもう1人が加わったのは、その3日後だった。生まれた子はラクスと名付けられた。バラの力の有無はまだ分からないが、バラの妖精になって色が変化したガロファーノと同じ、赤い目をしていた。力を持っている可能性は高いとガロファーノは言う。


「今年最後の『ヴェレッド王のバラ』だ。ラクスの誕生に間に合ったね」


 棘を抜いた黄金のバラをラクスに握らせる。焦点の合わないはずの新生児の目が「ヴェレッド王のバラ」に集中すると、バラの花びらがバラバラと崩れ、白金に光り……そして、ラクスの体内に消えていった。


「今の、何?」

 

 震える声でガロファーノにクラベルは尋ねた。


「この子は、ラクスは……いや、きちんと調べてからにしよう。妖精の力の使い方は、妖精の国で教える」

「この子を連れて行ってしまうの?」

「違うよ、訓練の時だけ向こうに行く。そうしないと、力が制御できない内は被害が大きいと思う」

「そんなに強い力を持っているの?」

「可能性の段階だが、おそらく。俺より強いかもしれない」

「そう」


 この子は私が守る。化け物だなんて絶対に呼ばせない。


 ガロファーノを悪く言う時の王家の人々を思い出し、クラベルは固く心に誓った

読んでくださってありがとうございます。

いいね・評価・ブックマークしていただけるとうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。