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読みに来てくださってありがとうございます。
今日もいつもの時間に更新します。
ちょっとバラの妖精が怖いかも・・・
よろしくお願いいたします。
クラベルと「再会」したガロファーノは、クラベルを王から守るために動かなければならなくなった。クラベルに、2人が一緒になるにはクラベルが妖精になることが一番いい方法だと言ったが、国外逃亡の方が穏便だとは思う。だが、妖精1人の力では国中のバラに言うことを聞かせることは難しい。そこでガロファーノは、協力者になったら最高に心強い方の所に行くことにしたのだ。
ガロファーノは、クラベルと奥の庭園で別れた後、神殿に転移していた。神殿の奥に、人が滅多に訪れることの無いバラの庭園がある。色とりどりのバラの花が咲き乱れ、一年中途切れることがない……異常な空間である。
「ガロファーノです。お話があります、神官様……いえ、バラの妖精」
庭園でバラの手入れをしていた神官に、ガロファーノはそう呼びかけた。
「いつから気づいていたんだい?」
「王城から俺を放り出した時でしょうか。あんなこと、普通の人間は知りませんからね。それに、神官様とだけ呼ばれて、名は一切明かされず、神殿に行っても会えない。神殿の神官に王族に近い血の者はいないはずなのに、バラの力を奪い、使うことができる。『バラの乙女』と『バラの騎士』について、恐ろしいほどの知識を持っている。冷静に考えれば思い当たることはたくさんあったのに、気づかなかった自分が恨めしい、っていう所でしょうか」
「まあ、気づくだけよい。今の王、あれなど全く私が誰なのか分かっておらん。人を顎でこき使う」
「人ではないでしょうに」
「あいつの前では、神官という人だ」
「確かに」
「それで? 私に何の話だ?」
「アシェル家の『ヴェレッド王のバラ』の中で休んでいた時は、助けてくださってありがとうございました」
「ああ。王のやること、考えることがあまりにも理不尽だったのでな、神官としては王の言うことを聞かねばならんのでバラの力を奪ったが、クラベルを守る男がいなくなったら大変だからな、ついでに鍛えただけだ」
「そのクラベルのことです」
ガロファーノはこちらを見た神官の目をじっと見つめた。
「王からベルを守るために一番いいのは、俺がベルに与えた妖精の命を使って、ベルが妖精になることだと思っています。ただ、ベルにその決断は難しいかもしれない。2番手の策として、アシェル一門ごと国外逃亡することを考えています。その時、国境を守るつるバラたちが王の命令に従う可能性がある。俺の力だけでは、守れない。だから、あなたの力を借りたい」
「ふむ、そういうことか」
神官は何か考えているらしい。
「お前は、必要となったら私にその体を差し出すことができるか?」
「ベルを守るために必要なことならば、考える」
「そうか。私の興味はクラベルにあるわけではない。クラベルの中に集まりつつあるローズの魂を守るために、その器であるクラベルを傷付けたくないのだ」
「俺は真の『バラの乙女』の選定の時、王と直接対決し、すぐに国外に転移したいと思っている。その位の時間は稼げるか?」
「よかろう。約束する。私は神官としてその場にいるから、連携はとれるだろう」
「では、そのように」
ガロファーノはアシェル家ではないところに再び転移したようだ。何か工作するのだろう。
愚かな奴だ。いや、まだ若いから仕方がないのか。
バラの妖精は、当然ながら妖精だ。人間のために力を貸すのは、相手が自分が気に入ったとか、面白そうだとか、結局は自分の基準で、自分が楽しむためだ。ローズに力を貸したのはローズが気に入ったからに他ならず、ヴェレッド王以下ヴェレッド王国を守護し続けたのは、ローズが願ったからに他ならない。
バラの妖精の関心は、未だにローズにあった。ローズが人間でなかったらどれほど良かったかと、ずっと思っていた。だから、ローズと共に自分の寿命が尽きるまで生きるにはどうしたらいいか、バラの妖精はそれだけを考えていた。
そこで思いついたのが、「バラの乙女」だった。ローズの魂を無理矢理砕き、10人の候補の中で、誰が真の「バラの乙女」になっていくのかを時間を掛けて見るのは面白かった。だが、最初の「バラの乙女」は、ローズのバラ好きで世話を一生懸命にする要素だけを持ち、ローズの他の面……例えば、バラの妖精を愛する心だとか、他の女性に対して嫉妬する心だとか……は全く持ち合わせていなかった。さらに、バラの妖精のことを、全く覚えていなかった。
つまらない。これでは、ローズになっていない。バラの世話が好きなら、「ヴェレッド王のバラ」の世話でもさせておけばよい
次の「バラの乙女」候補の10人には仕掛けをした。脱落すると、他の候補のところにその者の持つ欠片の要素が飛ぶようにしたのだ。絞れてくると、少しずつ、以前のローズの要素を含み持つようになる。だが、ランダムに飛ばしたせいで、中心の欠片となる、バラ好きで世話を一生懸命にする心に、怠け心が飛んできてしまった。また、その頃は魂の欠片が等分割だったため、拮抗した2つの心の間で「バラの乙女」候補だった少女は疲れ果て、真の「バラの乙女」になることができなかった。唯一、選定会の時に「ヴェレッド王のバラ」が黄金のバラでない、という事件になり、人間たちが慌てる様は見ていて面白かったが、ローズの復活には至らなかった。
何度か繰り返される「バラの乙女」選定の中で、バラの妖精は、望ましい要素の欠片を大きくし、それ以外の要素のものを小さくするなどして、力が拮抗しないように調整した。また、今のシステムのままでは、ローズの器が人間であることに変わりなく、せっかくローズを復活させても、また会えない時と一緒にいる時を繰り返さねばならないのが面倒だと思うようになった。
どうしたら人間を妖精に作り変えることができるだろうか?
妖精は自分の興味をとことん深めた。そして、妖精は人間の命に干渉できないが、人間同士なら干渉した例を発見した。これを応用するならば、半妖半人の王家の者なら、人間の命に干渉できるということになる。「バラの騎士」は王族から選ばれる。「バラの騎士」が真の「バラの乙女」の命に干渉するようなことがあればいいのだ。
バラの妖精は機会を待った。そして、ガロファーノがクラベルの命を何とか救おうとしていることを察知した。
バラの妖精は、ガロファーノの記憶に緩衝し、半妖精として記憶の奥底にある、命の渡し方に気づかせた。ガロファーノはバラの目論見通り、呼び起こされた知識を使って自分の命をクラベルに流し込み、クラベルに妖精の命が宿ることになった。クラベルは、望ましい魂の欠片を持ち、既にいくつかの要素を吸収している、真の「バラの乙女」候補筆頭である。クラベルが人間の器を捨て去れば、妖精になる。妖精になったクラベルの意識をローズの下に置けば……あるいは、消してしまえば、ローズが完全に復活する。
バラの妖精は、ガロファーノの望みを叶えることを、自分の望みを叶えることに繋げることに成功しつつあった。ガロファーノにも、クラベルにも、悪いとは思わない。だってそれが妖精というものなのだから。
バラの妖精が黒すぎる、と思った方、その通りです!
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