お別れ会
さて、依頼を達成したがまだ、午前なんだよね。
街に帰ってきてからは、すぐにギルドに寄って、依頼を達成したことを報告した。
ミーシャは、早過ぎますっと驚き、どう終わらせたのか聞いてきたが、流石にクルルのプライバシーに関わることなので聞き流した。
「……あむ、んむ、んぐんぐ…ごくん」
「あ、あの、く、クルルさんはなな、何をしていらっひゃるので?」
震えながら声を絞り出す、水紫の視線の先には…
──クルルが、アプルをまた、一つ袋の中から取り、しゃくしゃくしている光景があった。
「噛んだね、みあにい…」
「思えば、私まだご褒美貰ってなかったから。なでなででも良かったけどそれだけだとご主人様よくしてくれるから、アプルってどういう味かなって、味見した」
本当の理由は、少し経てばそのなでなでも独占できるのではとクルルは考えた。
すると、急に額に痛みが走る。クルルは顔を上げてみると、近くに水紫の拳があった。どうやら、小突かれたようだ。
「うぅ、痛い」
「クルル…お前何の為にこの依頼したんだよ…」
「食べるため?」
「いや、合ってるんだけども!だけど、今回は会のために集めたんだろ!勝手に食べちゃ駄目じゃないか」
「うぅ、ごめん…ご主人様」
水紫はうん、と一つ頷き、
「では、午前中までに料理で使う具材買うぞー」
「「はーい」」
この街に来てから3日目なのだが、この世界にはさすがに時計は無く。時間は、魔道具によって正確に鐘が鳴らされていることが分かった。
3ノ刻、6ノ刻、9ノ刻、12ノ刻の3時間ごとに鳴らされている。
「みあにい、このアプルも何かの料理に使うんだよね?」
「あぁ、アプルはだな、煮るつもりだ。地球で食べた物より、糖が多いからデザートになるのかな」
「で、メインはどうするの?」
うーん、異世界っぽくないけど、
「鍋!ってのはどうだ?」
「鍋かぁ。みんなで鍋かぁ。夢だったんだーみんなで食べるご飯」
「お、おう」
クイッ、誰かが俺の服の裾を引っ張った感覚がした。
首を回して後ろを見てみると、クルルだった。
「うん?どうした?もしかして気になるのか、鍋」
「うん、聞いたこと無かったから」
「まぁ、簡単に言えば、俺と祠の故郷の味だ」
「へーそうなんだ。美味しいの?」
「出汁次第だな」
「じゃ、ダシ取るために早く買い物行こうよ」
「おーけい」
市場に着き、美味しい汁が出来そうな海藻と魚を買うことにした。
「クルル、匂い嗅いでみて?この魚どんな匂いする?」
「クンカクンカ…うん?えーとね、何か潮の匂いがするよ」
「なら、みあにい。このお魚って鍋に合いそうじゃない?」
「うん、じゃこれを2匹…えーと、1000テラか。所持金は残り2000テラね、あとはお塩と砂糖。うーん、この世界に醤油ってあるかなぁ」
「みあにい、この市場大きいから、色々探そうよ。ていうか、お塩とお砂糖は宿屋のお母さんくれそうじゃないかな?」
うん、それもそうかと、心の中で頷いた。
野菜は、何が良いかなぁ。
やっぱり、きのことか、葉っぱ系の野菜…と。出来るだけダシが染み込みやすいものにしたいかな。
買い物を終え、宿に帰ってきた水紫達は早速、料理を作っていいか宿のおばさんに聞いた。事情を話すと、
「そうかそうか、お別れ会なんだね。それならば厨房を一部貸そう」
「ありがとうございます。では早速調理します」
「頑張りなー」
◇ ◇ ◇
…出来たー、魚が入った鍋!海藻の潮の味がお汁に溶けだしていて良い味になった。
さて、部屋で待っているみんなに持っていくか。
これが、終わったらこれで別れる。寂しくなるが、まずはご馳走してやるのが先だよな。
「みあにい、出来た?」
「あぁ、早速持っていこうか」
「落とさないでよ?」
「はは、落さないよ」
そう言いながらも階段を慎重に上がり、やっと部屋の前までたどり着いた。
先に祠が部屋に行き、ドアを開けていてくれたのでスムーズに部屋に入った。
テーブルに置くまでが料理だよ。誰が言ったかって?まぁ、多分俺の言葉だろう。テーブルに置き、みんなを呼ぶ。
鍋をみんなで囲い、ジュースやらコップに入れ、俺はみんなに向け一言、
「乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
みんなも返してくれた。
さて、鍋の蓋を取るぞー。
パカッ
あ〜、やっぱり潮の香りが良いなー。
「ご主人さまこれが鍋っていうのなんだね」
「いい匂いだね。奏瀬もこれ作れるの?」
「まぁ、材料があればね。今度作ろっか?」
「あーみんなで鍋囲むの初めてだよ、みあにい」
「ん、そうか。ではみんな食べようか」
俺はみんなの器を取り、具と汁を盛り付ける。
うん、野菜も柔らかくなってる。
「では、頂きます」
「「「「頂きまーす」」」」
みんなで合掌した。
「はむ、ん。美味しい、ご主人さま」
「そうだね、お汁の塩味が何とも」
「うあー、さすが水紫くんだね、料理上手だね」
「はぁ、お魚の味も良い。お鍋おいしい〜」
俺達は、感想を言いながら、味わいながら、だが、淡々と鍋を食べていった。
そして、食べ終わり、寝る前にアートから一言があった。
「水紫ありがとうね」
「うん?」
「水紫の料理美味しかったよ。ありがとう」
「良いって、他に言うことあるんじゃないか?」
「うん、これから帰るけど、短い間だけど楽しかったありがとう。そして、1回帰ったら次に地上に来れるのは少し先になるよ。奏瀬はそれでいい?」
「いいよ。水紫くん少しの間お別れだね。ちゃんと、この子達の面倒見るんだよ?見なかったら…」
据わった目で、
「叩くよ」
「お、おう、頑張るわ」
「それでは、行くよ。じゃね」
「お姉ちゃん達はまたね」
「短い間だけど僕、楽しかった」
アートは指を鳴らし、魔力を放った。そのまま奏瀬を包み言った。
「これは、帰還魔法だよ。では、ばいばい」
「おう、頑張れよ」
そう言い、アートと奏瀬はシュンっという音と共に消えた。
すこし、寂しくなるが。また会えるとと思ったら、明日からまた頑張れる、そう感じた。
水紫は祠とクルルとベッドに入りながら、そう思う。
この頃忙しい、そんな気がする




