新たな出会いと解放
「うーん、この先が宿だよな」
だけど…うーん?
「?どうかしたの?水紫」
「なんか、襲われている男を見つけてな」
「水紫くん!助けようよ、今すぐ」
…うわ、奏瀬さん、天使かよ
「報酬とかあるかも。うへへ」
アート…お前…
「めんどくさいけど、やるか」
「「がんばれー」」
お前らは、何もしないんだな…いや、わかってたよ、うん…。あ、そうだ、早く奏瀬にも戦う術を学ばせようかな。楽になりそうだよね。
「自分に設定、ホロウ…」
スッという効果音がなり、水紫の姿は誰にも捉えられなくなった。
「………」
水紫は無言で、襲っているやつに近づいて言った。
「おい、金を出せ!」
うわぁ、お金かぁ。まぁ、ギルド入って稼げば良いのにな。
「今はそんな金などない。他をあたってください」
まぁ、普通はそういうよね。
「はぁ!?何言ってるんだ。てめぇ奴隷商人何だから、金ぐらい今すぐ用意出来るだろ」
…奴隷商人だと……待て、この世界には奴隷もいるのか。
「」
水紫は無言で手刀を作り、襲っている男の首の真上に置いた。そのまま、流れるように手刀を振りおろした。
「ガッ!?」
「ひ!?」
襲っている男は苦しそうな呻き声を出し、倒れた。
同時に奴隷商人も何故か変な声をあげた。
え?なぜだろう…
「解除」
水紫は認識されるようになった。目の前の奴隷商人は、目をキョロキョロしていた。目の焦点が合っていない。
「おい、大丈夫かー。おっさん」
やはり、返事がない。
…立ったまま、気絶しているのか?器用なやつだ。
そう思いながらも水紫はチョキで男の腹を小突いた。
男は急にはっ、としてようやく目を覚ました。
「ひぃ、お助けを」
と、男は自分の腕で顔を庇った。
「おい、大丈夫だ。一回落ち着け。それにお前を襲った奴はそこに転がっているだろうが」
と言って、指をさした。男はしばらく、水紫と倒れている男を見つめて、ようやく。
「すみませんでした。それと助けて頂きありがとうございます」
「ん、あぁ、良いんだ」
「ですが、なんと、お礼をしたらいいか…」
と、男は考えるように目を伏せ、そして、
「そうだ、私は奴隷商人をしているアルスという者ですが、良かったら商品を見ていってくれませんか?」
テンプレ…なのか?
「あぁ、良いが俺…金は持っていないんだ…」
「大丈夫です、1回だけ、タダで売ってあげますよ」
「分かった、それなら行くよ」
「では、ついて来てください」
アルスは先導するように、水紫の前に立ち、進んだ。
水紫は、アート達に付いてくるように、指をクイッと曲げて指示を出した。
数分後、一つの建物に着いた。
アルスは、扉を開けて、
「さぁ、どうぞ。お入りください」
「あぁ」
水紫は後ろを向かずに、アート達に待っているように、指示を出した。勿論、無言で。
「地下に、居ます。ついて来てください」
そう言い、アルスは地下への階段を下っていった。水紫もそれに続いた。
長い長い階段を降りようやく地下に着いた。地下の広い空間には、多くの牢屋があった。
「では、私はここで待っておりますので、どうぞ好きな奴隷をお選びください」
「あぁ、」
水紫は頷き、それぞれの牢屋を見に行った。
水紫は歩きながら考えていた。
酷い…ここにいる奴隷達は皆、捨てられた者や、売られた者なのだろうか…そう考えると、胸がきりきりと傷んだ。
基本的に、水紫は良い性格をしているのだ。だから、こういう奴らは放っておけない。
だが…救えるのは一人…
「くそ!」
水紫は自分の力の無さにイラつき、ドンっと壁を殴った。
不意に、水紫の頭の中で声がかかった。
『確かに、水紫の考えているとおりだね』
「ん、ステータス?それともアート?」
『アートだよ、水紫』
「で、何の用だ?」
『水紫の考えていることは間違いは無いんだよ。だけど…ここはお店だからね…』
「っ、そうだけど…」
『だから、君が見た限りで一番酷そうな子を救うんだ。君の手で』
「いきなり何を…」
『良いから…。おっともう限界だ、後でね、水紫』
一番酷そうな子か…。
「今見た限りでは、あの子かな…」
水紫は少し早歩きをし、その子の牢屋の前まで来た。
暗くて、顔はよく見えない。
「…誰?」
「俺はな、お前を買いに来た奴だ」
「私を…?」
「あぁ」
水紫は少し考えて、小声で喋った。
「なぁ、お前は何故ここにいる?」
「商品だから…」
「何故そうなった?過去に何が起きたのか詳しく教えてくれ」
「……」
返事はなかったが、暗闇でコクンと頷く影が見えた。
俺は、牢屋の前に座り、聞く体制を取った。
「私はクルルです…。私が生まれたところは北の地方の村です。そこは平和なところでみんなも優しくて住みやすかったです。だけど、私が5歳の時」
クルルは、そこで話を一旦切った。思い出したくない過去なのだろうか?
「あのさ、辛いなら無理に話そうとしなくても良いぞ?」
「」大丈夫です。えっと、私が5歳の時。盗賊が攻めてきました。名前は確か…血界十字」
「」
水紫はつい、口をポカンとだらしなく空けて無言で、固まってしまった。
痛い…痛すぎるぞ…。
「えっと、そいつらは具体的に何処を活動拠点にしていて、なぜ襲ってきたんだ?」
まぁ、襲う理由は大体分かる。村を襲って得た金や子供、女をそういう雰囲気の店で売れば金になるからだろう。
「えーと、北の国じゃないのかな。わからないけど、その人達はその方角はから襲ってきたから。理由はお金になるからだと思う」
「お前は復讐したいか?」
「え?」
やっぱり、分かりにくい言い方じゃ、だめか。
なら、と、水紫は続けていった。
「お前を今から、俺が解放してやる」
「かい…ほう…?」
「あぁ、今は金が無いから、少し待ってもらうけど、」
水紫はひと呼吸し、続けた。
「金が溜まったら飯も沢山食わすし、住む場所も与えてやる。お前を売った、奴らも懲らしめてやることもさせてやる」
「……………」
「駄目だったか?」
無言が続く。
あぁ、やっぱり人を信じることはできないのか。
「……………………」
これは仕方がないな。嘘かどうかも、俺に着いていくかも、この子が決めることだしな。
「そうか…ならお別れだ。じゃあな」
水紫は回れを右をし、違う子を探しに行こうとした。
だが、背中に声がかけられた。
「…待って!私、幸せになりたい。だから、あなたと一緒にいきたいです…」
と、言われ、思わず水紫は笑みを零してしまった。
なんだ、意外と素直じゃねぇか。
「うん、素直になれば可愛いじゃないか、すみませーん」
奥の方で、はーいという声が聞こえた。タタタタッと小走りで来ているのだろうか。
「はい、お決まりでしょうか?」
はぁはぁと、息を切らしているようだ。
「あぁ、このクルルって子にするよ」
「分かりました、では開けます」
牢屋が開いた。顔は、牢屋の中では暗かったので、見えなかったが、電気の下で改めて見ると、綺麗な顔立ちをしている、少女だった。頭には、狼の耳。そして、見えないが尻尾も隠れているのだろう。
「よ、これからよろしくな。クルル。お前、亜人族だったんだな。」
「…うん、よろしく。ご主人様…。亜人族は大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
と、クルルの耳と頭を交互に撫でた。
「ん、やめて、くすぐったい」
「HAHAHA 。では、支払いは…」
「命の礼です、どうぞ」
「ありがとう」
水紫とクルルは、長い長い階段を登っていった。
一緒に登るクルルの目は、わくわくとしていた。耳はピコピコとしきりに動いていた。よほど、外に出るのが楽しみなのだろう。
そうこうしているうちに、扉の前へと来ていた。
「では、行くぞ。外だ!」
「…うん!」
ギィ、と音を鳴らし扉を開いた。相変わらず太陽は眩しく、笑顔でいるクルルを迎えているようだ。
読みやすくなるように
頑張ります(^-




