対人戦闘?一方的な攻め
「いつでも来いよ」
「おぉ、それなら、一気にやってやるよ」
男は駆け出し、瞬間に水紫の目の前まで来た。
「小僧、俺の勝ちだ!」
と、言い男は剣を振りかぶった。
……はぁ…
水紫はため息をつき、呪符を前に突き出し、一言…
「縛れ…」
一言、そういった。それだけで男は、何かに縛られたように体が動かなくなっていた。
「おっさんさぁ、無駄が多すぎるよ。馬鹿なんじゃねぇの?」
「く…お!?何だ、体が動かん」
「あぁ、無駄だよ、俺が解除しない限りそれは解けねぇよ」
「ちっ、クソが!分かった、俺が悪かった。だから、はやく解放しろ」
「あぁ、2度と俺に歯向かうなよ?」
「…」
無言の了承か?つまらん、まぁ、いいか。
「分かった、解放」
と言い、男を解放した。
「あ〜ぁ、つまらない試合したな。おい、アートと奏瀬早く出るぞ。早く休みたい」
水紫は、男から目を逸らした。刹那、その男から殺気を感じた。男は大剣を振りかぶり、
「うおぉ、死ねやぁ!」
水紫はそちらを振り向かずに、呪符を突き出した。
「なぁ、聞こえなかったのか?なら、もう一度言うぞ?『2度と歯向かうな?』」
「っ!?」
やはり、男は体が動かなくなった。
「ち、何でだ。その力のトリガーは別の言葉だった筈なのに」
「言葉を発しないと能力が発動しないなんて誰が言った?」
「っ!」
「それと、お前の人生は縛った。もう俺に近づくことすら出来ねぇよ」
「やってみねぇと分からないだろうが」
男は、まだ諦めずに水紫に近づこうとしていた。だが、体はいうことが聞かなかった。
近づこうとしていた瞬間に男の足は違う方向に向かった。
「ちっ、くそ」
男は、水紫に近づけないと分かりそのままギルドを出ていった。
すると、歓声が湧いた。
「うおぉすげぇな小僧」
「まさか、あいつに勝てるとは」
「お、おう、」
水紫はさっきの空気とのギャップに驚いていた。
あの男がいなくなってから、ギルドにはいつもの光景が戻っていった。
水紫はアートと奏瀬の元に行った。
「あの、水紫ごめん、信じられなくて」
「その話はな、ここを出てからにしてくれ」
「あの、ミアさん?そのごめんなさい」
「だから、いいって、すまんな騒ぎを起こして」
と言いポケットに手を突っ込み、一つの白い呪符を取り出した。
「ミアさん?」
「迷惑料だ、受け取れ。この呪符はな、お前の人生を良いように向かわせるための、そのまぁ…御守りみたいな物だ」
「御守り…ですか。これはミアさんが作ったのですか?」
「あぁ、俺の呪術を流し込んでな。あ、効果は絶大だからな。悪い奴らからは守ってくれるし。もしかしたら、良いことが起こるかもな」
「はぃ、ありがとうございます。大事にします」
「では、じゃあな」
「はい♪」
水紫達は、再びギルドの出口に向かった。今度は、水紫に突っかかって来る奴はいなかった。
ギルドを出ると、外はすっかり朱く染まっていた。
「おぉーもうこんな時間かー」
「あの、水紫…改めてごめんね」
「良いから、そのことは。俺が勝てたんだし」
勝てたというより、自身はあったのだが
「そうなのかな、うん…」
それでも、アートの声は沈みがちだった。
「あの、ね、水紫くん、それって、あの時の黒いお札?」
「うん、そうだよ、お前といるときに偶然作られた呪符」
「うーん、でも、あれはもうちょっと強力なお札じゃなかったの?」
「あのお札はね、強力だよ。だけど、奏瀬が消えた後は、そういう脅威に備えて、名執と協力して、量産したんだよ。まぁ、そのお札も尽きたんだけどな」
「そうなんだね、守ってくれてありがと。それと」
奏瀬はアートの方を向き、
「アートも、元気だしなよ」
奏瀬が声をかけたら、アートは顔をゆっくりと上げた。そこには、一筋の涙が…
あれ、この世界に来てから、俺の前で女の子泣きすぎじゃないか?
「あのね、水紫くんが、そう簡単に人を嫌うわけないでしょ?」
「でも、私、酷いことを」
「水紫くんも、そんなことしないよね」
「当たり前だ。やるわけねーだろ」
アートに向き直り
「だってさ、アート」
「そうなんだ…ありがとう。疑ってごめんね」
そこで、アートは笑顔を見せた。
「さていくぞ、宿に」
アートの手を握り、歩き出した。
「え!?」
「やっさしいね、水紫くん」
「別にいいだろ、俺の仲間なんだから」
「ふふ…」
「っう…///」
「おい、アート。なに、紅くしてんだ?」
「な、何でもない!…ただ、水紫は優しいなぁって…」
アートは今にも消え入りそうな声で呟いた。
みじかい




