ギュビャム
(忌ま忌ましいアルモレヌスめ! このままでは、ダロンの兵がここへ攻めて来るのも、時間の問題か……。近衛兵!! 守りを固めるのだ! 早急に!!)
ダロンの兵は残った七闘鬼三体で構成された小数で、超常界へ攻め入った。超常界の兵も、それなりには応戦したが、力の差は歴然で、近衛兵達は成す術もなく打ち倒され、デルスのみを残す状態となった。
そしてデルスは、瞬殺にて討ち取られたという。
(おい! 聞こえるか!? ナルル)
(久しぶりじゃねぇか。聞こえてるぜ、アルモレヌス)
(今回の戦いには?)
(もちろん、参戦してねぇ)
(よし! じゃあ、暫くの間、お前が超常主をしていてくれ! 頼んだぜ!)
(了〜解!!)
『すまねぇな……ナルル』
「神治……。この戦い……、意味、あるのか?」
下校時、校門前で春騎は、疑いを隠せない表情で、神治に話し掛けた。
「春騎。あと三体だ。あと三体倒したら、終わりにする。だから、俺を信じてくれ」
神治は春騎を直視したまま、そう呟いた。
「あと三体で終わるのか? ダロンはいいのかよ! あと三体って、七闘鬼の事だろ!? アイツら、自分達の故郷を返して欲しいだけじゃねぇのかよ!?」
春騎は神治に掴み掛かったが、側にいた望に、引き離された。
「道程君。あと三体だけ……。頑張りましょう。流君を信じて、ね」
望の一言で、春騎はうなだれるしかなかった。
「あと三体ですか……。その三体の中に、俺も入っているんだろうね。ん? アルモレヌス?」
突然聞こえた声に、三人が顔を上げると、スーツ姿のサラリーマン風の男が立っていた。
「ギュビャム……。今度はお前かよ!」
「俺の相手は、誰がしてくれるのですか? あのデルスとかいう、手応えのない奴みたいなのは、嫌ですがね」
そう言って、ギュビャムは声を殺して笑っている。
「俺だ! 俺がお前の相手をしてやる!! 一瞬で終わらせてやるから、覚悟しとけよ!!」
春騎が、二人を押し退けて前に出た。
「成る程。ルシベスですか。あなたとは初対面ですからね。自己紹介をしておきましょう。私だけ、あなたの事を知っているのは、フェアではありませんからね。……私の名はギュビャム。邪闇界七闘鬼のうち、三武神が一人、怒号のギュビャムです。私の身体は、ヤービダヌより硬く、バノドスよりパワーがあります。それでは、始めましょうか? アルモレヌス側近兵ルシベス。爆炎の戦斧ルシベスさん」
そう言って、ギュビャムは軽く会釈をした。
「お前ぇ! 俺の事、ナメてんじゃねぇぞぉぉぉ!! 速攻だ! 速攻、マジで行くぜぇぇぇぇぇぇぇ!! 敵に塩を贈ったこと、後悔しやがれ!!」
春騎が走り出すと、ドオンと爆発音がしたと思うと、春騎は無数の棘の突き出た深紅の鎧に身を包み、ギュビャムへと走り込んでいった。
「何が爆炎の戦斧だ!! いくぜぇ! 粉砕奥義、ダブルメガトンハンマー!!」
声と同時に、両手に巨大なハンマーを取り出すと、ギュビャムを挟み込むようにして、打ち付けた。
「これじゃ、足りねぇってんだろ! 追加奥義、クラッシュアーックス!!」
そしてそのままギュビャムを空中へ放り投げると、両手のハンマーを巨大な戦斧へとチェンジし、戦斧の刃をクロスするようにして、斬り付けた。
「どうだ! キザ野郎!」
両手に持った戦斧を、ブゥンと振り回すと、左の戦斧を肩に担ぎ、右の戦斧でギュビャムのいる辺りを指した。
「悲しいですねぇ。俺は、そんなくだらない技を、見に来たのではないのですがねぇ」
砂埃の中から現れたギュビャムは、無傷の状態で、服に付いた砂を払うと、バトルフォームへとチェンジした。
「ヤベェ!! 春騎!」
神治が咄嗟に飛び出した時、すでに遅く、春騎の身体はギュビャムの腕にて貫かれ、春騎の背中より出た手が春騎の頭を掴むと、まるでトマトか何かのように握り潰した。
「悲しいですねぇ。ルシベスは、ルシベスではなかった……と。型物が残っていましたか……」
潰れた春騎から手を離すと、崩れ落ちた春騎を踏み潰し、神治達の方へと近付いてきた。
「春騎を……。春騎を殺りやがったなぁ!! ギュビャム! お前ぇぇぇ!!」
怒りに満ちた目で、睨む神治を涼しげな表情で、「あなた達と、特には変わりませんよ」とギュビャムは、サラっと言うと、神治に対し、手招きした。
「殺す! 殺してやる!! ギュビャム! 俺の強さを忘れたとは、言わせねぇぞぉぉぉぉぉぉ!!」
「アルモレヌス。あなたのデータは、先の戦いにおいて、すでに収拾済みです。俺が、あなたに負ける通りはありません」
「その戦いで、俺に殺されかけたのを、忘れたのか!!」
「それも、過去の話。どうぞ、かかって来てください。返り討ちにしてくれますよ!!」
そう言って、再度手招きしたギュビャムに対し、バトルフォームをとった神治は、暫く相手を睨み続けた。
「じゃあ死んどきやがれ!!」
そう叫んだ神治だったが、ピクリとも動かない。
「どうしたアルモレヌス! 俺が恐くて動けないのか!!」
「もう終わった。ギュビャム、お前の負けだ」
「何を言っている! 来ないのならば、俺からいくぞ!!」
余裕の笑みを浮かべたギュビャムが、攻撃姿勢に入ろうとした瞬間だった。ギュビャムの身体に、十字の線が入ったと思うと、ギュビャムは「え? あれ?」と情けない声と共に崩れ落ちた。
「斬られたことすら、気が付かねぇなんて、弱ぇ証拠じゃねぇか!?」
そう叫ぶと、装備武具を解除すると、望の所へと歩み寄った。
『速い!! わ、私にも見えなかった……。物界の肉を身に付けてもこのスピード……、アルモレヌス、お前はどこまで強くなっているのだ……』
望の身体にいる事も忘れ、サレネは、驚愕の思いで、神治を眺めていた。
「望……。次はお前かもしれねぇ。死ぬんじゃねぇぞ……」
そう言って、神治は寂しそうに、肩を落として帰っていった。




