表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

ヤービダヌ

(ほう。ルシベスという奴は、ここに住んでおるのか。ではワシは、邪魔の入らぬこの場で、ルシベスを殺らせてもらおうかのぉ)


「じゃあ、行ってきます」

 春騎は、相変わらず誰もいない家へ向かってそう言うと、鍵の確認をして学校へと向かった。

 普段と何も変わりない、登校時間。の、筈だった。しかし、春騎の周りに、他の生徒の姿が見えない。春騎は、一人で登校していた。

「ようやく、出てきおったんかいな。もう、待ちくたびれたで……」

 登校途中、突然現れた中年太りの、いかにも喧嘩とは無関係そうな男が、春騎へ話し掛けた。

『うわぁ! 変なオヤジ襲来だ! ヤベッ! 関わったら、長そうじゃねぇかぁ……』

 なるべく、目を合わせないようにして、春騎は横を通り過ぎようとした。

 しかし男は、それを阻止するが如く、春騎の後ろから肩を掴んで離さなくなった。

『このオヤジ、超ヤベェ! 能力解放して逃げる? 一般人にそんな事したら、ヤバイっしょっ!! どうしよう……。あ〜! マジでオヤジ、ウゼェんですけど!!』

 男の掴んだ手を振り解こうと春騎は、無我夢中で暴れた。そして結局、「あ〜! もう、放せっつーの!! 遅刻すっだろぉが!!」と大声を出すと、男を投げ飛ばしていた。

『うげ!! やっちまったぁ……。ここは、そのままそろーっと……、そろーっと……』

「って、何処行くんじゃい我ぇ!! 人んこと、あんだけ投げ飛ばしくれて、なんにも言わんと逃げよういうのは、あかんのとちゃうんやないか!?」

「うわぁぁぁ!! 起きやがったぁ!! あれだけぶっ飛ばされて、起きやがったぁ!!」

 逃げようとするも、どうしたら良いかわからない状態に陥り、春騎は、オッサン・進行方向を交互に見ていた。

 男は、春騎の側までやってくると、額にかいた汗を、ポケットからハンカチを取り出して拭いている。

「ワシは、邪闇種七闘鬼が一人、ヤービダヌ。ルシベスやろが!! 逃げんと、勝負せいや!」

 ポケットにハンカチをなおすと、そう叫んで、仁王立ちになった。

「嘘ぉ! 七闘鬼ぃ!! この前の小さなオッサンの方が、強そうだったじゃん!! よっしゃぁ!! 当たりだ! やってやるぜ!!」

 仁王立ちのヤービダヌの前に立つと、気合いと同時に深紅の武具を身にまとった。

 しかしヤービダヌは、襲ってくる様子もなく、仁王立ちのまま、春騎に向かって右手を伸ばすと、手首から先を曲げて春騎に『来い』とアピールした。

「何をぉ!! ナメてんじゃねぇぞぉ!」

 春騎は飛び出すと、右手に持った斧でヤービダヌの頭を強打した。

「弱い」

 強打した筈のヤービダヌの声が聞こえた瞬間、春騎はヤービダヌを直視した。

 確かに春騎の斧は、ヤービダヌの頭を直撃していた。しかし傷どころか、凹むこともせず、頭に斧が春騎の手を支えに乗っているだけだった。

「えぇぇぇ!! マジでぇ!! 何、コイツ!?」

「斧と盾を振り回す輩だと聞いておったで、えれぇ力持ちだと思っておったんじゃが、ワシの勘違いだったようじゃな。……ほんじゃあ、もう死ねやぁぁぁ!!」

 斧が当たっていたヶ所をさすりながら、春騎の方を向くと、形相の変わったヤービダヌは大声で怒鳴り付けた。

 叫びと同時だった。ヤービダヌは走り出すと、春騎に突進してきた。春騎は堪えようとしたが、皮膚が異常に硬く、触れても掴む場所もなく、建物のコンクリート壁へと叩き付けられた。

「ガハァッ!!」

 口から血を吐き出した春騎だったが、身につけた深紅の鎧が身を守り、身体が潰れることはなかった。コンクリートの壁には、大きな衝撃波を受けたようなヒビが入っていた。

「が! グハッ! っんつぅ身体だよ!! やってくれんじゃねぇかぁ!! もう……、手加減しねぇからなぁ!! ぁあ!!」

 フラフラと立ち上がると、春騎は気合いを入れ直した。

「ほう。これまでは、本気や無かった……つぅ訳かいな!? そりゃあ弱いわ。弱くて当然や。オノレ、ふざけとらんと全力でこんかい!! ワシは、ちっともオモロないでなぁ!!」

 再びヤービダヌが仁王立ちになると、春騎は「ぉぉぉおおお!」と雄叫びをあげながら、斧を振り上げ走り込んでいった。

 春騎は、接近と同時にヤービダヌの腹部へと渾身の一撃を放った。

「ど、どうだ。やったか!?」

「やはり弱いもんは、弱いまんまやなぁ! 期待して損したで」

「く! くそぉ!!」

 春騎がもう一撃と構え直した瞬間、ヤービダヌは春騎を捕まえジャンプした。

 空中でヤービダヌから逃げようと、もがいた春騎だったが、それも虚しくヤービダヌに押し潰されるように、地面に叩き付けられた。

「グホァ!! ガッ、ガハァッ!!」

 更に血を吐き、のたうちまわる春騎。

 そんな春騎へ追い撃ちをかけるように、ヤービダヌは高く飛び上がると、身体を丸め、春騎の腹の上に激突した。

 何度もヤービダヌは飛び上がり、春騎の上に落下する。

 そんな中、春騎の深紅の鎧に無数のヒビが入り始めた。

『のほほほほ。後少しやなぁ。後少しで、鎧も粉砕して、あんたの肉をミンチにしてあげまっせぇ!』

 攻撃の手を緩めないヤービダヌ。血を吐き、もがき苦しむ春騎。鎧のヒビは、もうヒビではなく、亀裂と化していた。

「あれぇ……。なかなか、春騎がこねぇから見に来てみれば、面白そうな事してんじゃねぇか!? なぁ、ヤービダヌ」

 声の方向を振り返ると、神治が笑って立っていた。

 ヤービダヌは、少し驚いたように後退りした。

「気にすんな。俺は止めねぇからよ。好きにやんなって!」

「おい、アルモレヌス! ルシベスが負けそうなのに、えれぇ余裕やないか。ルシベスが死んだら、お前のせいやからな!」

 ヤービダヌは少し落ち着いたように、春騎の方へ向き直った。

「おいルシベス! アルモレヌスからよぉ、オノレの抹殺許可がおりたでぇ。所詮、友達いうても、大したことあらへんなぁ」

「おい、ヤービダヌ! 春騎をぶっ壊したいんなら、もっとマジで殺れよ! じゃねぇとお前、死ぬぜ!!」

 神治が後ろから叫んでいたが、ヤービダヌは既に聞いていなかった。

「神……治……? マジかよ!? し、しゃあねぇな……、フ、フルパワーで、い……くか!! ぅぅおおおぉぉぉ!!」

 春騎は立ち上がると、雄叫びと共に気合いを入れ直した。深紅のオーラが燃え上がり春騎を包み込んでいく。そして、春騎が再び姿を現した時、火炎が揺らめくような鎧と盾を身にまとい、春騎の身体よりも大きな戦斧を肩に乗せていた。

「オッサン! 遊びは終わりだぁ!!」

 春騎は飛び出すと、盾を戦斧に付け両手で戦斧を握り締めると、ヤービダヌに斬り掛かった。

「ほぉ。来いや! 来いやぁ!! そのチンケな攻撃が終わった時が、オノレの最後じゃあ!!」

 ヤービダヌは再び仁王立ちになると、春騎の攻撃を身体で受け止めた。

「所詮は雑魚や!!」

「へ! 言ってろ!! まずは……、腕一本貰ったぁ!!」

 春騎が駆け抜けると、ヤービダヌの左肩から炎が上がり、ヤービダヌの左腕が切り離され飛び去ると同時に、瞬時に焼け炭のようになって地に落ちた。

 ヤービダヌの左肩は、焼けたようになり、一滴の血も出ていなかった。

「なかなか、出来るようになりましたなぁ。それじゃあ、ワシも本気で殺らしてもらいまひょうか!?」

 腕が無くなったにも関わらず、痛みがないのか、うっすら笑みを浮かべたヤービダヌは、全身に力を溜め始めた。

 ヤービダヌの皮膚が、みるみるうちに変化する。型物の肌が水気を失いカサカサになると、渇いた地面のようにヒビ割れると、光沢を浴びた鱗のような形状になっていった。

「十闘鬼が一人、絶対防御のヤービダヌ。本気で行かしてもらいまんでぇ!!」

 ヤービダヌは飛び上がると、春騎目掛けて急速落下した。

 春騎が落下地点を予測し、攻撃を回避すると、ヤービダヌは地面に激突した。

 ヤービダヌが激突したアスファルトは、粉々に粉砕し、砂のようになって舞い上がる。その瞬間、またヤービダヌは大きく空中へ飛び上がった。

「バ、バケモノめ……」

 春騎は第二撃の突撃を見つめると、まるで野球バットを握るようにしてヤービダヌの落下を待った。

 急速落下するヤービダヌ。打ち返さんと待ち構える春騎。そして、ヤービダヌが春騎のストライクゾーンへ入った瞬間、「うぉぉおお!!」と掛け声と共に、春騎は戦斧を振り込んだ。

 ヤービダヌと戦斧が交差した瞬間、黄色い閃光が辺りを包み、光が無くなった時、ヤービダヌの皮膚に突き刺さった戦斧が現れた。

「もうちょっとやったんやけどなぁぁぁぁ!!」

 ヤービダヌは不気味な笑みと共に、戦斧を掴むと、身体から引き離そうとした。

「オッサン! 俺の武器は、斧だけじゃないんだぜぇ!!」

 その刹那、盾と同化した戦斧は、極大のハンマーに形を変えたと思うと、春騎の気合いと共に、地面へと叩き付けられた。

 しかし、地面にヒビ一つ入らない。よく見ると、ハンマーで叩き付けられたヤービダヌは、深紅の巨大な盾の上で、粉のようになり、風に拐われていった。


「おい神治! どうして助けてくれなかったんだよ!?」

「まあ、いいじゃねぇか!? 勝ったんだからよ!?」

「神治ぃ!!」

「アハハハハハ!!」

「逃げんな!! お前!!」

 遅刻確実だったが、二人は仲良く? 学校へ急ぐのだった。

『春騎……。まだ、完全に覚醒してねぇのか!? ルシベスの能力……、まだまだ解放させねぇと、春騎……ヤベェじゃんかよ!!』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ