表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

サレネ

 いつもと同じ放課後。椅子の背もたれを胸側へして座り、話をする二人の姿があった。

「なぁ神治? ちょっと聞いていいか?」

「は? 何をだよ」

「奴らが探してる、【楔】の核って何だ?」

「あぁ、それか。【楔】の核ってのはだな。【輪廻の楔】ってのがあったのよ。まあ、それの核ってヤツだな」

「はぁ? それじゃ、何の事だか、全っっ然わかんねぇよ!!」

「詳しい説明必要?」

「出来れば」

「面倒臭ぇなぁ……。ちょっと長くなるけど、いっか?」

 頬杖を突きながら、話していた二人だったが、神治が欠伸と同時に姿勢を正すと、春騎もそれにならって姿勢を正し、深く頷いた。

「【輪廻の楔】……、これはよ、超常界の魂と物界の魂が、混じり合わねぇように創られた、壁みたいなもんだな。その【楔】にも弱点があってよ、【楔】が【楔】としての機能をする為には、核と呼ばれるエネルギーが必要な訳よ。それが、【楔】の核って訳」

「……って、全っ然長くないんですけど! って言うか、そんな【楔】なんてあったか?」

「昔は無かった」

「昔は……って事は、誰かが創ったんだな! 誰が創ったんだよ!」

「現、超常界超常主。デルス」

「え……。デルス……様? え、でも、現って事は、旧がいるって事か?」

「勿論いるさ! 旧超常界超常主の名は、ラズリセル。ま、名前はどうでもいっかぁ!? で、デルスが超常主になってから、まだ超常界の歴史は浅い」

「てかよ、デルス様が【楔】ってのを創ったんなら、デルス様が核も創ればいいんじゃねぇの?」

「それは出来ねぇ」

「どうしてさ!?」

「超常界と物界を隔てる壁の役割を果たす【輪廻の楔】、これの創造は、今の超常界では絶対に不可能だ。なぜなら……」

「なぜなら?」

「なぜなら……」

「おい! 勿体振るなよ!」

「なぜなら……。【楔】の核は、ラズリセルの魂だからだ」

「え……、嘘……。ラズリセルって、さっき言った旧超常主の……?」

 身を乗り出して聞いていた春騎だったが、ラズリセルの魂=【楔】の核の事実を知り、困惑した表情になった。

「あぁ、その通りさ」

「な、じゃあ、どうしてデルス様は、ラズリセル様の魂まで使って、【楔】なんて創ったのさ!」

「超常界と物界の魂が、混じり合わないようにする為だろうな」

「その話からすると、ラズリセル様が超常主の時は、超常界と物界の魂は、混じり合ってたって事になるんじゃねぇのかよ!」

「鋭いな春騎」

「茶化すなよ! それがどうして、混じり合いを拒むようになったんだよ!」

「それはな……。春騎、何を聞いても、ビビるなよ!」

「ああ! わかってる!」

 一度、大きく息を吐くと、神治は話を続けた。

「デルスが来たからだよ!」

「デルス様が……来た? 何処から?」

「ここさ!」

「ここ……。ここって、物界かぁ!?」

 驚愕の事実を知って困惑気味の春騎だったが、途中で話を放棄する事も出来ず、神治は話を続けた。

「デルスはよ。元々、物界種だ。物界にてナマモノから解放されたデルスの魂は、超常界にやってきた。超常界では肉体を持たねぇから、生物が腐敗する前の記憶を併せ持って寄生する。そして、超常界に寄生したデルスが起こした行動は、ラズリセルの殺害・魂の確保だった。デルスは、ラズリセルから魂を引き抜くと、ラズリセルの魂が、超常界や物界で寄生をする前に、【楔】を創造し、その核として使いやがった。そして、超常界と物界は完全に隔たれた空間となったんだ」

「どうしてデルス様は、【楔】なんて創ったんだよ!」

「デルスの過去は、軍人らしい。戦争で死んで、超常界へ寄生した。だから、勢いでラズリセルをぶっ殺したけど、自分と同じ物界の奴が、自分と同じ行動を起こしたら……。ってビビったんじゃねぇか?」

「そして、【楔】は世界を隔てた……」

「そう。そして、俺がぶっ壊した」

「それ! どうして、ぶっ壊したんだよ!」

 暫く間を置いて、神治は遠くを見るような目をした。そして、また大きく息を吐き出した。

「俺はよ。俺も……と言うべきか? 元々は物界種なんだよ。とは言っても、デルスのような型物ではなく、犬なんだけどな」

「へ? 神治って元々犬なの?」

「あぁ……、つっても気の遠くなるような、遥か昔の話だけどよ」

「ちょっと待てよ! でも神治の過去が物界なのと、【楔】の破壊がどう繋がるんだよ!」

「それはよ……。俺が物界から転生して超常界に寄生した時、俺は言葉すらもはっきり知らなかった。そんな俺をさ、とても可愛がってくれた奴がいてよぉ」

「それがラズリセル様ってか」

「春騎……流石だな。そうだ。旧超常界超常主ラズリセル。その身辺警護兵として、一役買われてた」

「でも、ラズリセル様は、デルス様によって殺された」

「元来、幻想生命体である超常種は、簡単には殺せない。魂の寄生こそするものの、実体を持たねぇからだ。しかし、幻想生命体が幻想生命体を襲う場合は違う。同質の構成体だから、簡単に触れれるし、殺せるんだ」

「って事は、あれか? デルスへの復讐って事か?」

「それは春騎の考えが甘ぇ。復讐なんてしたって、何の得もねぇからよぉ。でもよ、俺は、昔みてぇに物界と超常種との隔たりが無い世界に戻してぇのよ」

「それが、神治の真の目的……か……」

 春騎はそこまで聞くと、椅子の背もたれに身体を預け、天井を仰ぎ見た。

「でもよ! じゃあ、その核ってのは何処にあんだよ!!」

 少しの間、じっと何かを考えていた春騎だったが、ガバッと身体を起こすと、神治の方へ身を乗り出した。

 神治は、暫く目を閉じたままじっとしていたが、ゆっくりと目を開くと、自分の左胸を指差した。

「ラズリセルの魂は、今、俺の魂と同化している」

「マジ?」

「嘘言ってどうすんだよ!?」

「そっか……。わかった。すまねぇな、変な事聞いてよ」

「いや、いい。聞かれて当然だからな」

 二人は、話に疲れたか、机に伏せるようにして、倒れ込んだ。

 暫くそのままでいたが、それも長くは続かなかった。

「ねぇ……。流君? 道程君? ちょっといいかな……、今の話、気になったんだけど、ちょっと教えてくれない?」

「へ? って、輪中さん! どったの?」

 いきなりの訪問者に、春騎は飛び上がるようにして立ち上がると、女子生徒の方へ向き直った。

 彼女の名前は、輪中わなか のぞみ。神治や春騎のクラスメートではあるが、特に今まで、話をした事があるような仲ではなかった。

「で? 何処が気になんだよ?」

 神治は、座ったまま望の方へ顔を向けると、頬杖を突いて尋ねた。

「ん〜とね。何処が気になる? って言われても困るんだけどぉ……。どう言ったらいいのかな? 話の中身に興味がある。って感じ?」

「感じ? じゃねぇよ! 何が気になんだよ!! て言うか、お前が気になるような話、してねぇての!」

 望の仕草を見ていた春騎は、突然キレたかと思うと、望を怒鳴り付けた。

「うん。そうだと思うんだけど……。何かね、ラズリセルゥとか、デルスゥとか、って響きが気になるんだよね」

「は? 何でそんなのが気になんの?」

 春騎は、もうお手上げとばかりに、神治の方を向き、困った顔をした。

 神治は、春騎から目を離し、望を見ると静かに口を開いた。

「旧超常界超常主ラズリセル。現超常界超常主デルス。こんな信憑性もねぇ話の何が気になるって?」

「そう。超常界……超常主。ちょっと……待って、ね……。もう一回、聞かせてくれる?」

「はぁ!? ま、いいけどよ。旧超常界超常主ラズリセルと、現超常界超常主デルスが何だって?」

「…………」

「黙んなよ!」

 神治の言葉を聞いて、神妙な顔つきになったと思うと、無言になった望に春騎は、怒鳴り付けた。

 しかし、神治を見ると、神治も神妙な面持ちで望を見つめていた。

「おいおい神治、どうしたんだよ」

「…………」

「お前もだんまりかよ!」

「ちょっと黙ってろ春騎! こいつぁ、ちょっとしたビッグゲストの登場だぜ!」

「はあ!? 何の事だ?」

 望を静かに見守る神治に、困惑の表情を隠せない春騎であったが、とりあえず望の方に顔を向けた。

 望は、何かを考えるようにして、じっとしていたが、時折何かを思い出しているのか、「うっ!」とか「ハッ!」とか声を漏らしていた。

「神治? 何が起こってんの?」

 痺れを切らした春騎は、神治へ尋ねたが「黙ってろ」と、話を切られ、渋々椅子に座り直した。

 その時だった。「ぅぅうあぁぁあぁぁぁ!!」と、望が叫びのようなうめき声をあげた瞬間、望を黄金の光が包み込み、その姿を再度現した時には、黄金の白衣と拳を身に付けた望が立っていた。

「よう! サレネ。お前も、物界に寄生してやがったのかよ!」

 静かに言葉を発した神治は、立ち上がって望に近付いた。

「アルモレヌス様……。サレネ、覚醒いたしました」

 望は、片膝をつくと神治に深々と頭を下げる。

「神治……。コイツは……」

「ルシベス! 頭が高いぞ! 貴様如きの分際で、アルモレヌス様を呼び捨てにするとは、言語道断!」

 望は即座に立ち上がると、春騎に対し、ファイティングポーズをとった。

「まあ、落ち着け。サレネ」

「しかし!」

 なだめようとする神治に、闘志を剥き出しにして望が食いつく。

「ここは物界。しかも、俺達はただのクラスメート。違うか?」

「しかし、それは記憶を封印していたからであって……」

「俺達はもう、超常種じゃあねぇ。だからよ、ややこしい上下関係は無しにしよーや」

「は! わかりました」

「だからよ。敬語も無しだ。じゃねぇと、おかしいだろ!? 今日まで、なあなあで話してた輪中がよ、明日になったら、俺に敬語で話してたら」

「そうですね。いえ、そうよね」

「わかってくれたら、それでいい。これからもよろしく頼むぜ! 春騎! 望!」

「おう! 任せとけ!」

「うん。よろしくね」

 神治の差し出した右手に、それぞれの右手を重ねる春騎と望であった。


「なあ神治? いつから、輪中がサレネだって気付いたんだよ!?」

「あの二回目の超常主の説明の途中かな?」

「マジで?」

「だから、嘘ついてどうするよ!?」

「いや、これは口癖で……」

「そこぉ!! ルシベス! アルモレヌス様に対して、頭が高いわ!!」

「ハハハ。先が思いやられるぜ……」

「ひぃぃぃぃ!! 許して。許して! サレネ様ぁ!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ