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ルシベス

(ルシベスよ、目覚めよ! ルシベス! 既に気が付いておるじゃろうが、物界において、アルモレヌスの存在が明かとなった。ルシベスよ、覚醒し、アルモレヌスより【楔】の核を取り戻すのじゃ!!)

『んぁ? 朝か……。変な夢見たな。ルシベスって何だ? ま、いいか。夢だしな。気にしねぇ』

「よっっと!!」

 突然、掛け声と共にベッドから飛び起きると、春騎は制服に着替えると、キッチンにてパンを焼き、朝食を摂り、誰もいない家へ、「行ってきます」と声を出し、鍵の確認をしてから、登校していった。


「神治! 聞いてくれよ! 今日、変な夢を見たんだ!」

 通学途中でであった神治に、挨拶も無しに突然話し掛けた。

「おいおい。春騎、今日も朝から変なのか?」

「何だよ、今日もって! って、それはいいさ。聞いてくれよ神治。今日、夢の中に、変なジジイが、出てきたんだよ!」

「あん? ジジイがどったって?」

 呆れ顔で話を聞く神治だったが、春騎は話をやめない。

「でよ、そのジジイが言うんだよ。ルシベスよ、目覚めよ! って。なぁ、ルシベスって何だと思う?」

「な! ルシ……。いや、何だろうな。お前の夢なんだから、お前が一番知ってんじゃねぇの?」

「それが、全くわかんねぇんだよな。なぁ、聞いてるか?」

『春騎がルシベス。成る程な、だから昨日の奴の事もわかったのか……。でも、コイツ、自分がルシベスの寄生型物だって気付いていねぇみたいだな。覚醒する前に、殺っちまうか!?』

「ん? どったの? 神治、顔が恐ぇぜ!」

「うわぁぁぁ!!」

「いってぇな! 何すんだよ!」

 顔を突然覗き込まれ、神治は咄嗟的に春騎の頭を殴り付けていた。

「すまねぇ! 悪ぃ、悪ぃって。突然、目の前に顔出すからだろ!!」

「だからって、殴る事ぁねぇだろ!?」

「だから、悪ぃって言ってんじゃねぇかよ!」

 神治が走り出すと、春騎もその後を追い掛けていった。笑顔で。


 放課後、いつものように神治と春騎は、帰りもせずに、教室の中で話をしていた。

 その時だった。

 辺りの空間が歪んだような錯覚に陥った。

「また……だ……。まただ! 昨日と同じだ!!」

 春騎が叫ぶと、今日は二人の目の前に歪む影のような存在が姿を現した。

「ルシベス様、まだ覚醒なされていないのですか?」

 影のような存在は、春騎に近付くと、春騎の周りをユラユラと浮遊しながら、春騎に尋ねる。

「何の事だよ! ルシベスって何だよ! それって、夢の話じゃねぇのかよ!!」

 現実を直視出来ない春騎は、目を塞いだまま叫んだ。

 その様子をただ見ていた神治だったが、静かに立ち上がると、春騎に近寄りポンと肩を叩いた。

「春騎。目覚めたくねぇなら、目覚めねぇ方がいい。でもよ、お前に寄生したルシベスは、俺の親友だ。だからよ、もし目覚めるんだったら、俺の為に目覚めろよな!」

「神……治……。何を……、言って……」

 不安を隠せない表情で、神治の顔を覗き込んだ春騎だったが、刹那表情が凍り付いた。

「春騎、見てろ! これが、超常界と物界の融合能力だ!」

 そう言って、右手を握り締めると、腰の横に付けた左手より、青白く光る刃を抜き出した。

「貴様は……アルモレヌス!! まさか、ルシベス様の側にアルモレヌス様がおられるとは!」

「くくっ!! ギィャッハッハッハッハァ!! 甘かったなぁ! テメェも物界に輪廻寄生しやがれ!」

 悪魔の形相に、不気味な笑みと笑い声を高々とあげる神治は、驚愕する影に向かい斬り掛かった。

「ぅおっと! 危ないですねぇ。アルモレヌス様……、物界の型物に寄生されても、その荒々しい気性は変わらないのですね」

 神治の一撃をユラッと避けた影は、春騎の傍へとやってくると、ゆっくりと神治に話し掛けた。

「へっ! いくら避けたって、テメェからは攻撃出来ねぇだろうがよ!」

 そう言って、第ニ激を繰り出した神治だったが、影にその光の刃が当たったと思った刹那、後方に吹き飛ばされていた。

「な! 何をしやがった!」

「昨日、グラミスの魂が消えました。グラミスは、アルモレヌス様を探していた為、アルモレヌス様に排除されたものと考え、デルス様より物界への干渉対策として、捜索隊には、この【型物の魂の欠片】を植え付けられたのです。これにより、我等超常界の精神体も、物界へ干渉出来るようになったという訳です」

 実体を持たないような影は、ユラユラと揺れながら、光さえも吸収してしまいそうな、漆黒の欠片を取り出した。

「そうかよ! 結局、テメェらは、物界の型物の事など、何とも思ってねぇって事か!?」

「当然です。型物など下等で汚い魂と、我々超常界の、崇高で汚れない存在を一緒にしないで頂きたい」

 攻撃をガードされた事で、少し動揺した神治だったが、その言葉を聞いた途端、光の刃を再度構えた。

「テメェら超常界の奴らは、結局それだ! 自分達は、神にでもなったかのように、物界の奴らを汚らわしいモノと分別しやがる。そんなテメェらも、元はと言えば……っと、どうでもいいわなそんな話! そろそろ、その汚らわしい物界の魂の一部と、なっちまいやがれぇ!!」

 声と同時に神治は飛び出すと、影に向かって斬り付けた。影はユラッと刃を避けると、存在の一部を空間に露出させたと思うと、鋭利な槍のような物体を神治突き付けた。神治は、後ろのめりに避けると、バックステップした後、刃を構え直した。

「成る程な。言うだけの事は、あるじゃねぇか!? 物界に干渉出来るってのも、あながち嘘じゃねぇみてぇだな! これは、ちとやべぇか!? とか言うと、思ったかぁ!!」

 神治は影に向かって駆け出すと、影の手前でスライディングに切り替え、影の後方に回り込むと、立ち上がりと同時に斬り上げた。

「ふふふ。無駄ですよ。いくらあなたが、超常界最強のアルモレヌス様であっても、物界にて型物となってしまったあなたでは、私に敵う筈がありません」

 斬り上げを予測していたかの如く、影は斬撃を避けると、空間から突如現れる突きを無数に繰り出した。

 神治は、その攻撃を刃で塞ぐ事しか出来ず、後退すると体制を立て直した。

「たかが雑魚ごときが、自惚れてんじゃねぇよ! テメェ、俺が本気でやり合っていると思ってねぇか?」

「アルモレヌス様ともあろうお方が、強がりとは情けない。仕方ありません。一撃で、粉砕して差し上げましょう。ついでに、核も返してもらいますよ!」

 影は、神治の周囲に隔離空間を作り出すと、中心の神治目掛けて、隔離壁から栗の棘のような槍を突き付けた。

「ふふ。アルモレヌス様も、物界に堕ちてしまえば、ただの愚物ですか……。さて、【楔】の核でも回収して……」

 串刺しになった神治に近付こうとした影は、その動きを止めた。

「ま、まさか……。そんな……。そんな、馬鹿なぁ!!」

「ぅぅぉおおおおぉ!! もう、許さねぇ! 許さねぇぞぉ!!」

 串刺しになった筈の神治……だったのだが、神治は、青白い鎧に身を包み、気合いと共に、隔離空間を粉砕した。

「雑魚が! 雑魚の分際がぁ!! このアルモレヌスを怒らせた事を後悔するがいいわぁぁぁぁぁ!!」

 既に神治としての面影など、殆ど無くなったアルモレヌスは、刃を構えると影へと斬り掛かろうとした。

「ぐわぁぁぁ!! な、何が! 何が起こったんだぁ!!」

 その途端、深紅の光に包まれたと思うと、影は一面の空気に溶けてなくなるかのように、消えて無くなった。

「神治を……。神治を痛め付けんじゃねぇよ! アルモレヌス様を痛め付けんじゃねぇよ!!」

 そこに立っていたのは、深紅に燃えるような、光を放つ斧と盾を携えた春騎の姿があった。

「春騎! 目覚めたのか!」

「神……治……? ……いえ、アルモレヌス様、長い眠りより目覚め、ルシベス降臨致しました」

 春騎は片膝を付くと、神治に深々と頭を下げた。

「やめろよ、春騎」

「しかし! アルモレヌス様!」

 神治は、春騎を立たせると、普段の神治に戻り、ニカッと笑ってみせた。

「俺達、友達だろ!」

 そう言って神治が差し出した手を、春騎は握りかえすと、「だな」と笑いかえした。




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