2-2-7 女王候補隊の奮闘
東部戦線──
ナディア・ヴァルシオン率いる帝国の特殊部隊は、山岳地帯を利用した奇襲によって王国の背後を突く算段だった。
険しい地形と不意を衝く機動力。短期決戦で一気に勝利を奪う──それが彼女たちの描いた青写真である。
だが、その動きはすでに読まれていた。
王国軍は山岳の奥深くで待ち伏せの準備を整え、ヴァイ率いる女王候補隊のパーティが、じわじわと包囲網を狭めていく。
「地形が味方してくれるわ。レイラ、今よ」
ヴァイの冷静な指示に応じ、レイラが《宝瓶の壺》を掲げる。
地鳴りと共に岩壁が崩れ、進軍路は完全に塞がれた。
狭い谷間に閉じ込められた帝国の特殊部隊は、身動きが取れず混乱に陥る。
そこへ、シオンが《人馬の槍》を構え、風を裂くように駆け込んだ。
「一撃で仕留める」
無駄のない、研ぎ澄まされた動き。
一点突破の槍撃が次々と敵陣を貫き、帝国兵はなすすべもなく倒れていく。
部隊の崩壊を悟ったナディアは即座に撤退を決断する。
だが、その退路すらも、すでに封じられていた。
「……!」
セレナが《磨羯の籠手》で岩を砕き、最後に残された道を塞ぐ。
「これ以上の進軍は不可能だ」
シオンの静かな声が告げる現実に、ナディアは苦々しい表情で撤退命令を下した。
だが、王国軍はその一瞬の隙を逃さない。
無人戦車が連動するように動き、ヘルダルは一機ずつ分断され、各個撃破されていく。
機体そのものは健在でも、随伴する歩兵を失った帝国軍の士気は、見る間に崩壊していった。
ナディアは辛うじて残存兵をまとめて退却する。
しかし、この戦いの敗北が決定的であることは、誰の目にも明らかだった。
一方、西部戦線。
カール・ユグドラシル率いるエリート魔法剣士部隊は、大胆な正面攻勢に打って出ようとしていた。
だが、それが陽動であることはすでに看破されており、無人戦車の前では決定打にならない。
その瞬間、フィーたちのパーティが側面から襲いかかる。
《双児の双剣》が光の軌跡を描き、フィーは楽しげに敵陣を駆け抜けた。
「あなたたち、派手すぎるのよ。見え見えだったわ」
エヴァの《天秤の鎖》が絡みつき、ヘルダルの動きを拘束するたび、帝国兵の士気は確実に削られていく。
「これで終わりかしら?」
冷ややかな言葉と共に、最後の抵抗は潰えた。
カリナは《金牛の鎧》を纏い、ヘルダルの猛攻を真正面から受け止めながら突進する。
その圧倒的な持久力と機動力に、帝国のエリート兵たちは徐々に消耗し、ついに戦線を維持できなくなった。
「これ以上は無理だ!」
歯噛みしながら、カールは撤退を命じる。
だが、その退路もすでに王国軍に押さえられていた。
各個撃破されていくヘルダルを前に、彼はもはや撤退以外の選択肢がないことを悟る。
こうして、西部戦線もまた崩壊した。
東西両戦線での敗報を受け、将軍機ヴァルクは前線に姿を現すことなく撤退を選択する。
その巨大な影が戦場に現れることは、最後までなかった。
中央戦線では、ヴォルフガングの重装部隊が執拗な攻撃を続けていた。
だが、エレインの防御陣は一歩も退かない。
《白羊の盾》が展開するバリアは、いかなる攻撃も跳ね返し、
ルナの的確な援護によって敵の攻勢は完全に止められていた。
ヴォルフガングは戦況を見渡し、部下たちに目を向ける。
顔には疲労と苦悩が浮かんでいるが、その眼差しは冷静だった。
「諸君、我々はここで無駄に消耗するわけにはいかない。敵は予想以上に手強い」
一瞬の沈黙の後、彼は深く息を吐く。
「全軍、撤退だ。自分の命を最優先にしろ。この撤退が、次への準備となる」
戦いが終わり、静寂が戻った頃。
ミーナは不満げに《獅子の剣》を見つめ、ぽつりと呟いた。
「結局、一度も剣を振るう機会がなかったわね」
エレインは苦笑しながら、彼女の肩を軽く叩く。
「まあ、戦いは勝てばいいのよ」
「それはそうなんだけど……なんだか物足りないのよね」
そう言いながらも、ミーナの表情にはどこか満足そうな色が浮かんでいた。
仲間たちと力を合わせ、戦線を守り切った──その事実が、確かな充実感をもたらしていたのだ。
こうして、帝国軍の侵攻は王国軍の見事な迎撃によって阻まれた。
戦術の妙と女王候補たちの奮闘が、戦場の流れを決定的に変えたのである。
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