2-1-98 付録1 シオンの旅
シオンがセレナとフィーを探す旅は、思った以上に長く、複雑なものだった。
彼女は手がかりを一つひとつたどり、旧友であり、かつて刃を交えたライバルでもあった二人の行方を追っていた。
《双児の双剣》に選ばれるのはただ一人──
その資格を巡る争奪戦の始まりで、三人は伝説の門を守る存在と対峙した。
単独では到底突破できない門番を前に、彼女たちは自然と役割を分け、背中を預け合った。
素早い動きで道を切り開くフィー、強力な風の魔法で支えるセレナ、そして四大元素を操り隙を突くシオン。
即席の連携だったが、その戦いで三人は互いの力量と覚悟をはっきりと知った。
その後に待っていたのが、双児の双剣を巡る本当の戦いだった。
共に戦ったからこそ、容赦なく刃を向け合えた。
そして戦いの果てに、三人は勝敗以上のもの──互いを認め合う感情を手に入れた。
だが決着の後、彼女たちは同じ道を選ばなかった。
それぞれが自分の答えを求め、別々の場所へと歩き出し、やがて音信も途絶えた。
それでもシオンは信じていた。
あの門番との共闘と、双剣を巡る戦いの中で生まれた絆が、消えているはずはないと。
「フィーも、セレナも……今、どこで何をしているのか……」
道すがら、シオンは空を見上げ、小さく息を吐いた。
それでも探すことをやめなかったのは、あの戦いで結ばれた絆を、もう一度信じたかったからだ。
再び会えさえすれば、きっと──
彼女たちは共に戦ってくれる。シオンはそう信じて疑わなかった。
最初に見つけたのは、フィーだった。
灼熱の砂漠に囲まれた街で、彼女は傭兵団の一員として生きていた。
酒場には荒々しい笑い声が響き、団員たちが肩を組んで騒ぐ中、フィーもまた豪快にジョッキを傾けていた。
「よ、シオン!久しぶりじゃないか!」
声をかけられた瞬間、フィーは迷いなく近づいてくる。
その快活な笑顔は、昔と何ひとつ変わっていなかった。
「探してたんだ、フィー」
そう告げると、フィーは腕を組み、どこか楽しげに口角を上げた。
「まさか、また一緒に戦おうってんじゃないだろうな?」
「そのつもりだ」
真剣に頷くシオンを見て、フィーは一瞬だけ視線を逸らし、そして大きく笑った。
「ははっ。お前の頼みなら、断れるわけないだろ」
次にシオンが向かったのは、山間にひっそりと佇む小さな村だった。
セレナはそこで医師として暮らしていた。
戦いから距離を置き、穏やかな日々を選んだ彼女は、村人たちから深く信頼されている様子だった。
「……シオン?」
診療所の前で声をかけられ、セレナは驚いたように目を見開いた。
「会いに来た」
その一言に、セレナは苦笑しつつも、柔らかな微笑みを浮かべる。
「また、厄介なことを頼みに来たんでしょう?」
「ああ。その通りだ。協力してほしい」
小さく息をついた後、セレナはどこか懐かしそうに言った。
「あなた、本当に変わらないわね……」
やがて三人は、山の中腹にある広場で顔を揃えた。
双児の双剣を巡り、命を懸けて剣を交えたあの時以来──
三人が同じ場所に立つのは、これが初めてだった。
「懐かしいな。こうして三人で集まるなんてさ」
フィーが腕を広げると、セレナが小さく肩をすくめる。
「あなたがいると、どうしても何か起こる気がするのよ」
シオンは二人を静かに見渡し、深く息を吸った。
「……二人とも。もう一度、力を貸してくれないか──王国の未来のために」
「もちろんだ」
フィーは迷いなく答え、
「ええ。私も、もう一度戦うわ」
セレナもまた、穏やかに頷いた。
その瞬間、シオンの胸の奥に、じんわりと温かなものが広がった。
再会とともに、彼女たちは再び同じ道を選んだのだ。
かつての戦いで築いた絆は、時間を経てもなお、確かにそこにあった。
「よし……行こう」
言葉はそれだけで十分だった。
互いを信じ、共に進む。
それが、彼女たちの変わらぬやり方だった。
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