表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/78

2-1-20 出航準備

出航準備は着々と進んでいた。

王国の広場には魔法使いたちが集まり、連携魔法のための陣が静かに組み上げられていく。


サーラはその先頭に立ち、周囲の準備を見守りながらも、胸の奥に溜まる緊張を隠せずにいた。

視線の先には、集まってくれた仲間たちの姿がある。

その一人ひとりの存在が、彼女の背中を押していた。


まず、アリアがサーラの隣に立つ。

いつもと変わらぬ冷静な表情で、陣の配置を最終確認していた。

だが妹に向ける眼差しには、言葉にしない覚悟と、不安を包み込むような優しさが滲んでいる。


その隣では、リアナが魔法陣の制御を担当していた。

複雑な数式と魔力の流れを無言で追いながら、微調整を重ねていく。

彼女の横顔には、研究者としての集中と、姉としての決意が同時に宿っていた。


やがて、軽やかな足取りでアリスが陣に入る。

余裕のある笑みはいつも通りだが、その身に纏う魔力はすでに高く活性化されている。

背後にはエグバート先生が厳しい表情で立ち、陣の隅々まで鋭い視線を走らせていた。


この作戦の要となる面々。

いずれも熟練の魔法使いだ。


それでも、数が足りない。


「……あと四人」


サーラが小さく呟いた、その時だった。


背後から、軽やかな足音が近づいてくる。

振り返ると、月の騎士団の装束に身を包んだルナが、息を整えながら駆けつけてきたところだった。

彼女の手首には《巨蟹の腕輪》が光る。


「噂は聞いたわよ。私も手伝わせて」


普段の勇壮さを保ちながらも、どこか切迫した色を帯びた声。

戦士としての威厳を失わぬまま、彼女は迷いなく陣に加わった。


続いて現れたのはシオンだった。


「間に合って良かった」


彼女の背後に、二人の少女の姿があるのに気づき、サーラは思わず声を上げる。


「その子たちは、もしかして……!?」


シオンは一歩前に出ると、迷いのない声音で二人を紹介した。


「こちらは《磨羯の籠手》の継承者セレナ。

そして、《双児の双剣》の使い手フィー」


紹介されたセレナは、無言のまま拳を胸に当てて一礼した。その籠手は重厚で、彼女の立ち姿には揺るぎない安定感があった。


フィーは軽く肩をすくめ、片方の剣をくるりと回してみせる。


「堅苦しい挨拶は苦手だけど、足は引っ張らないよ」


その軽口とは裏腹に、双剣に宿る魔力は鋭く研ぎ澄まされていた。


伝説のデバイスの持ち主である二人が、今ここに立っていることが信じられなかった。


「シオン、どうして……?」


問いかけると、シオンは静かに頷いた。


「彼女たちは私の仲間です。

共に戦うために、力を貸してくれることになりました」


サーラは一瞬言葉を失い、すぐに深く頭を下げた。


「ありがとう、シオン。本当に助かる」


その瞬間、広場を抜ける風が、ふっと強くなったように感じられた。

陣は完成し、魔力の流れも安定している。

離陸まで、あとわずか。


サーラは胸の奥で自分を奮い立たせ、深く息を吸おうとした。


「待って!」


その声が、空気を切り裂いた。


振り返ると、エレインが息を切らして駆け寄ってくる。

サーラが送った手紙を強く握りしめ、その瞳には迷いのない決意が宿っていた。


「私も行くわ。

あなたを一人にさせるなんて、できないもの」


思わぬ言葉に、サーラは目を見開いた。

だがすぐに、その覚悟が胸に染み渡る。


「……ありがとう、エレイン。

でも、私は一人で行くんじゃない。あなたがいてくれたら、もっと心強い」


—-


一方、大型飛空挺フェンリスの内部。


シェリーは囚われの身のまま、《双魚の鏡》を見つめていた。

帝国の手中にあるという現実が、重く心にのしかかる。


「……みんな、来てくれているんだわ」


鏡に映るサーラたちの姿に、思わず安堵の息が漏れる。

だが、その安らぎは一瞬だった。


「何を見ている?」


背後から、冷たい声が響く。


振り返ると、そこにはエドリック・スコルニアが立っていた。

冷酷な策略家──その視線は、獲物を見定めるかのように鋭い。


「……何も。ただ、鏡を見ていただけよ」


震える声で答えるシェリーをよそに、エドリックは《双魚の鏡》へと視線を移し、薄く笑った。


「不用意な行動は、往々にして望まぬ注目を集めるものだ。……賢明とは言えないな」


その言葉は、冷たい刃のように胸に突き刺さる。

シェリーは鏡を握りしめ、俯くしかなかった。


「覚えておけ、シェリー。

私の目は、常に君に向けられている」


淡々と告げると、エドリックは踵を返し、部屋を後にする。


残されたシェリーは、一人静かに立ち尽くした。

不安と恐怖が胸を締めつける──それでも、鏡に映ったサーラたちの姿を思い出し、必死に心を繋ぎ止めていた。


ブクマでサーラたちの応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ