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2-1-19 見えてきた突破口

サーラは、魔力蓄積の問題をどうしても解決しなければならないと痛感していた。

既存の魔力バッテリーでは、どう工夫しても限界がある。このままでは、グラビティウムの秘策そのものが成立しない。


——一人で抱え込んでいる場合じゃない。


そう思い立った彼女は、迷うことなく姉・リアナが勤める研究所へと向かった。


研究所に足を踏み入れると、静まり返った空気の中に、張り詰めた魔法研究の気配が漂っていた。

無数のルーンが刻まれた器具や計算用の魔導板が整然と並ぶその光景は、サーラにとって見慣れたものだが、今日はどこか重く感じられた。


リアナの姿を見つけると、サーラはすぐに駆け寄り、息を整える間もなく切り出した。


「リアナ、今の魔力バッテリーじゃ全然足りないんだ。どうすればいい?」


突然の相談に、リアナは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに研究者の顔に戻った。


「サーラ、それはかなり深刻な問題ね。今の技術じゃ、大量の魔力を一気に蓄積するのは確かに難しいわ。

……どれくらいの出力が必要なの?」


サーラは焦燥感を抑えきれないまま、持参していた設計図を取り出し、机の上に広げた。

リアナはそれを受け取り、しばらく無言で視線を走らせる。


やがて、魔法計算用のノートを取り出し、次々と式を書き始めた。


「自重200キロのドローンに、四人分の搭乗重量……しかも高度と距離を確保するとなると……」


計算を進めるうち、リアナの表情は次第に引き締まっていく。


「ざっと見積もっても、必要な推力は約4000ニュートンね。

今の技術でそれだけの魔力を蓄積するとなると……」


彼女はペンを止め、はっきりと言い切った。


「相当な量の魔力バッテリーが必要になるわ。1つや2つじゃ、到底足りない」


サーラはその数値を聞いて、思わず小さく息を吐いた。

リアナもまた、眉をひそめながら腕を組む。


「……私の知識だけじゃ限界があるわ。少し待って、エグバート先生を呼んでくる」


そう言って、リアナは足早に研究室を出ていった。


しばらくして現れたのは、魔法工学の権威であるエグバート先生だった。

彼はサーラの前に立つなり、設計図に鋭い視線を向ける。


「ほほう……これはまた、随分と無茶な設計だね」


口調は穏やかだが、その目は真剣そのものだった。


「魔力蓄積の問題は、確かに最大の壁だ。

魔力を循環させて持続的に使う方法、周囲の自然魔力を取り込む手法……考えられる案はいくつかあるが」


エグバート先生は一つ一つ指を折りながら、首を横に振る。


「どれも、この規模の出力を安定して賄うには力不足だ」


提案と否定を繰り返す中で、サーラの表情は次第に曇っていった。

何かが引っかかっている気がするのに、それを言葉にできない。


そんな彼女の様子を見て、いつの間にか近くに立っていたアリスが、ふいに口を開いた。


「サーラ、魔力量がイメージできてないんでしょ?」


サーラははっとして振り返る。

アリスは、いつもの軽やかな笑みを浮かべて続けた。


「例えばね。

一人で竜巻を起こすくらいの魔力が、八人分必要ってこと」


その例えを聞いた瞬間、サーラの思考が一気につながった。


——八つ分の竜巻。


「……一人じゃ無理でも……」


次の瞬間、彼女は顔を上げた。


「連携魔法! そうだ、それならいけるかもしれない!」


声を上げたサーラに、研究室の視線が集まる。


「複数の魔法使いが同時に力を合わせれば、大きな魔力を生み出せる。

それに、魔力転送の技術を組み合わせれば、効率的に魔力を集中できるはず……!」


エグバート先生はしばらく黙っていたが、やがて深く頷いた。


「なるほど……連携魔法か。

八人分の魔力を、一つの目的に束ねる。確かに理にかなっている」


リアナも、その言葉に続く。


「ええ。これなら、魔力蓄積の問題を根本から回避できるかもしれないわね」


アリスも嬉しそうに手を叩いた。


「やったじゃない、サーラ!」


サーラは胸の奥で、固まっていたものが少し溶けるのを感じた。

不安が消えたわけではない。それでも——道筋は見えた。


「……これで、ようやく前に進める」


小さく息を吐き、サーラは次の準備へと思考を切り替えた。

ドローンを動かすための最大の壁は、確実に乗り越えつつあった。


ブクマでサーラたちの応援をお願いします!

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