Lesson10 わかればいい
「さて、理由を話してもらおうか」
私とレオン先生は、3ーAの教室にいた。
――私は、覚悟を決めて、今日の出来事をレオン先生に話した。
はあ……っ。
深いため息がこぼれる。
怒られる!
身構えた、次の瞬間――
「くだらんな」
心底くだらない、といった様子でレオン先生が言った。
「オレが、おまえの家名で見返りを求めているだと?
そもそも、オレに足りないもがあると思うか?」
――いかにもレオン先生らしい言葉だ。
「それに、家名でいったらオレは負けていないからな」
そう言って教えてくれたのは、母が聞いたら土下座しそうなほどの、エリート中のエリートの家名だった。
「家名なんてものに振り回されるな。
今までのオレを見てきて、それでも信じられないと言うなら仕方がないが――お前はそうなのか?」
――そう問われて、自分がいかに愚かだったか思い知った。
信じられないはずがない。
この学校で、私に親身になってくれた人の一人じゃないか。
よく知らないクラスメイトの一言なんかで、私はなんて失礼な思い違いをしていたのだろう。
「違います……そうじゃないです」
「先生を疑うなんて……本当に、バカでした。すみません……」
うつむいたまま、深く頭を下げた。
「わかればいい」
よろしい、と言わんばかりに、レオン先生は満足そうにうなずいた。
――胸の奥に残っていた黒いものが、ようやく消えた気がした。
私の気持ちが晴れたのが伝わったのか、レオン先生がさらに言った。
「家名で、周りに色々言われる辛さは、オレも知っている。」
「これから先も、つきまとうものだが……、いっそ、家名を利用するくらいに考えろ。」
「家名に押しつぶされてはダメだ。」
……レオン先生でさえ、色々言われてきたんだ……。
それは、信じられないことだった。
家名で悩んでいるのは、私だけじゃなかったんだ。
――ちゃんと先生と話せてよかった。
しみじみと思っていると――、
「明日は、今日の分の補習を追加するからな」
容赦ない言葉が飛んできた。
そ、そんなー!!
自分でまいた種とはいえ、嫌なものは嫌だ。
今日の分を追加したら、明日の私はどうなってしまうのだろう。
明日の自分に起きることを想像すると、ガタガタと震えることしかできなかった――。




