4 魔族、ギャルメイクデビューをする
翌朝、シャナにあわせた食材をつかい、スープをつくった。
少し甘味のある魔草を加え、香りをつける。
「おいしそう~!いただき卍~!!」
シャナが両手を合わせて元気に笑う。この儀式も慣れてきた。
はふはふと頬をふくらませる姿は、出会ったときの迫力を忘れさせるほど無邪気だ。
「まじありがとね!今日はお礼にギャルメイクやったげる!」
「メイク?」
「そ。あーしのバッグに残ってたメイクだけど!ほら、マジュ座って!」
シャナが強引に私を座らせる。
「ってかマジ肌きれ~!ファンデなくてよくね?はい、目つむって~」
ポンポンと何かで肌を叩く感触。シャナが白粉のような粉を肌全体にのせているらしい。
目元もなにか塗られてくすぐったい。
横でリンとリコが、珍しい道具に目を輝かせている。
「おけ!めちゃきゃわ清楚ギャルじゃん!」
にかっと笑うシャナが、やたらギラギラと飾られた鏡を差し出す。
「これが……私?」
鏡の中には、目がぱっちり大きくなり、血色の良い顔をした自分が映っていた。
「リンリコもやるから座って!」
はしゃぐシャナに従い、双子も素直に腰かける。
リコのブロンド髪を右サイドに高く結い、リンのシルバー髪は左サイドに高く結った。
「二人はコギャルメイクね~」
そういいながらシャナが手にとったのは青く輝く鱗粉。
「・・・鱗粉?!」
「アイシャドーのこと?ラメ入りでかわいいっしょ!」
「こ、これは毒ではないのか?」
「毒?ウケる、やば。」
塗られた粉は毒々しく見えるのに、肌にのせれば不思議と馴染み、華やかな印象を生んだ。
「仕上げにグロス塗るからね~」
「ウンディーネと約束していた例の…というか、テカりすぎでは……?」
「チークはオレンジで・・・よし!リンもリコもまじコギャルじゃん!激かわ!」
二人はご機嫌にサイドの髪を揺らしながら喜ぶ。
うん、たしかに可愛い。
「まじうちら最強のギャルサーじゃね?」
楽しそうに笑うシャナ。
「シャナは昨日のメイクはやめておいた方が……」
「あ~、ヤマンバメイク?まぁ、あれはプリ撮る用に盛っただけだから~」
何を言っているのかわからない。
シャナは目元に金の粉を瞼に塗りこんでいた。
「最強ギャルはやっぱゴールドアイシャドーできまり!」
「これでつけまがあれば最高なのにな~」
そういって短い睫毛の束を手のひらでにぎる。
……よくわからないが、ギャル族には大事なものなのだろう。
「ってか、メイク用具ってどこで手に入んの?」
「え?」
「あーし、ギャルだからメイクとか買えないとサゲなんだけど?」
「リン知らないヨ!」
「リコも知らないノ!」
「ま、アクアリップさんがグロスくれるらしいし、聞いてみるか~」
「え?本当に会いにいくのか?」
「もちのろん!」
シャナは本気らしい。あのウンディーネに・・・?
「いや、危険だからやめた方が・・・」
「メイクはギャルの命だから!」
「命・・・」
でも昨日はメイクを落としてても生きていたと思うが。
「メイクできないとかギャルの死!」
「死・・・」
私は言葉を失った。心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなり動悸がする。
――とにかく。
シャナのための食事と、魔界素材でつくるメイク用品とやら。
この二つをどうにか整えてやらねばならない、と強く決意する。
ウンディーネなんかにおくれをとるわけにはいかないとかそういうわけではないんだからかな!




