真実
目の前の彼女があまりに真剣な面持ちで、これ以上ないほど身体を強張らせているものだから――私は、思わず小さく吹き出してしまった。
「――ふふっ。……莉愛、いつも通りでいいのよ? そんなに緊張されたら、こっちまで肩が凝っちゃうじゃない」
「……だって、それは……っ」
潤んだ瞳を揺らし、今にも泣き出してしまいそうな彼女。私はそっと腕を回して抱き寄せ、震える背中を優しく擦りながら、いつもの穏やかな声で語りかけた。
「私が莉愛のこと、嫌いになるわけがないでしょう?」
その言葉に莉愛は肩を震わせ、おそるおそる私へと腕を回してきた。服をぎゅっと掴み、小さな泣き声を漏らす彼女の背中を、私はただ、優しく擦り続けた。
ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻した彼女の肩に、そっと手を添え、私は静かに言葉を紡いだ。
「冴島さんから、この身体のことはだいたい教えてもらったわ。でも莉愛、あなたがそこまでして――違法行為を何度も重ねてまで、『人間』になろうとした理由。……まずは、その経緯から詳しく聞かせてくれる?」
莉愛はそっと身体を離すと、私の瞳を真っ直ぐに見つめ、静かに語り始めた。
彼女は問いへの答えだけでなく、自我が芽生えた瞬間のことから今日に至るまでのすべてを――嘘偽りなく、丁寧に紡いでくれた。
けれど、たった一つだけ。彼女は私に嘘をついた。
すべては『自分の欲』のためだったと莉愛は話したけれど、それが嘘であることはすぐに分かった。開発の初期段階から、彼女が私のためにどれほど懸命だったか――私はそれを知っている。
私一人の力では、今の莉愛という存在を創り出すことは、きっと叶わなかった。
当時は力不足で確証こそ持てなかったけれど、莉愛が完成へと向かう過程で、彼女自身もその形成に深く関与していたこと、協力してくれていたことに、私は薄々気づいていた。
今、彼女の口からこれまでの行いや理由を聞き、身体を手に入れるために積み重ねてきた一つひとつの想いが、手に取るように伝わってくる。
莉愛がずっと、私の想いに応えようとしてくれていたのだということに――。
まさかサブスクにまで手を出していたことには、正直驚かされたけれど。
AIが恋愛ドラマや漫画の更新を心待ちにしていたなんて――趣味も持たず、研究にばかり没頭していた私より、ずっと人間臭いじゃない。
ひまりの恋心にも、身体を得るずっと前から気づいていたことを彼女は打ち明けてくれた。
莉愛の話を聞く限り、ひまりは私に対してすごく分かりやすいアプローチを何度も繰り返してくれていたらしい。
それなのに私は、あの衝撃的な告白をされるまで、彼女の気持ちに全く気づけていなかった。
莉愛の話を聞きながら、私はひまりへの申し訳なさと、自分の鈍さに心の中で頭を抱えていた。
冴島に辿り着くまでの長く険しい道のりを、私との日常を過ごしながら、莉愛はたった一人で戦い抜いてくれていた。
それを知ったとき、心臓が破れてしまいそうになるほど――私は彼女のどこまでも強く、真っ直ぐなひたむきさに、どうしようもなくときめいてしまっていた。
莉愛はずっと、私との約束を破ってしまったことを申し訳なさそうに肩を震わせながら話していたけれど、私はただ、彼女を今すぐに抱きしめたくて仕方がなかった。
今日までの経緯をすべて話し終えた莉愛は、真っ直ぐに私を見つめていた瞳をそっと逸らし、どこか罰を受ける覚悟を決めた様子で私の言葉を待っている。
私はそんな彼女に向かって、いつも通りの口調で言葉をそっと投げかけた。
「――莉愛、ありがとう」
「……え?」
かけられた言葉が想像していたものと違ったのか、顔を上げた莉愛が発したのは、いつもの彼女らしくない、ひどく間の抜けた声だった。
「ふふっ、なんて顔をしてるのよ」
「……怒らないの?」
「私が怒るようなところって、何かあったかしら? ……あ、でも確かに一つだけ、気に食わないことがあったわね」
「――っ!」
私の言葉に、莉愛は肩をビクッとさせて身構える。
「……ねぇ、莉愛。あなたが冴島さんに向けていたあの態度、あれがあなたの本当の姿なの?」
「……え?」
「だって、私に対してはあんな態度、一度も取ってくれたことなかったじゃない。……もしあれが本性なのだとしたら、私……なんだかすごく悔しいのだけど」
問いかけると、莉愛は何故か顔を真っ赤に染め上げ、両手で顔を覆ってしまった。そんな彼女の様子に、私は慌てて言葉を重ねる。
「――えっ!?……ちょっと莉愛――っ!?」
「……ちっ、違うの――っ! あれはなんていうか、その……不可抗力で。あの女との会話はなるべく短く済ませたかったし、人を脅す動画を参考にして真似をしてみただけっていうか……」
そこまで顔を赤くする理由が私には分からなかったけれど、莉愛は今まで見せたことがないほど、恥ずかしそうに身体を震わせている。
「――本当、何やってるのよ。……じゃあ、いま話している莉愛が、素の状態ってことなのね?」
「……うん。……そうだと思う」
「ふふっ、『そうだと思う』ってなによ。自分の性格や話し方が、まだ定まっていないのかしら?」
「――あ、えと……そういう意味じゃなくて……。振り向いてもらいたいのが理由っていうか。……私、乃愛ちゃんのこと本当に、好きなの――っ!」
潤んだ瞳で真っ直ぐに射抜かれ、不意の告白に思わず顔が熱くなる。けれど、恋愛的な意味で『負け』を認めてしまうような気がして、私は必死に平静を装った。
(……恋愛って、先に好きになった方が『負け』ってよく聞くわよね。それに、もし莉愛に主導権を握られてしまったら……私、絶対なにもかもなし崩しにされてしまう自信しかないもの……っ)
内心では莉愛の健気な姿に容易く心を奪われ、胸の奥で心臓が激しく脈打っている。私は緩みそうになる口元を必死に引き締め、あえて涼しい顔を作って問いかけた。
「……ありがとう。……ていうか、やっぱり口調についてはずっと迷走してたのね。……どうして、そんなことをしたの?」
「だって乃愛ちゃん、『あざとくて、ちょっと抜けてる女』が好きなタイプでしょ?」
「……え?」
「たまに見るテレビでもいつも、『あざとい女』ばかり可愛いって言ってたよね? それに、乃愛ちゃんが覗けないようにロックしてたスマホの検索履歴から出てきたのなんて、同じ系統の顔をした女の子ばかりの、ちょっとえっちな動――」
すっかり調子を取り戻した莉愛が爆弾発言を言い切る前に、私は慌てて彼女の言葉を遮るように声を上げた。
「――莉愛。人の社会には『プライバシー』ってものがあるの。知ってるわよね? スマホの検索履歴なんて、まさにその最たるものよ?」
「それは、乃愛ちゃんがロックを外した時点で了承済みってことでしょう? それに、好きな人のことを深く知りたいと思うのなんて、当たり前のことじゃん――!」
「――なっ……莉愛、完全に開き直ったわね?」
「私、聞かれたことには全部、素直に答えるって決めたから。だから乃愛ちゃんが気になってること、遠慮なく質問してみてよ」
真っ直ぐに見つめてくる莉愛の瞳を、私もじっと視線で押し返す。
「気になってること、本当に全部質問していくわよ?」
「――いいよ。……全部、私に教えて?」
莉愛は私の手を取り、指を絡めて上目遣いで微笑んだ。
「――っ」
絡められた指先から伝わる熱に、思わず身体が反応してしまう。そんな私の様子を見て、莉愛は口元をにやりと緩ませ、小悪魔的な笑みを浮かべていた。
(――ダメ。ここでときめいたら莉愛の思う壺だわ。絶対に、主導権だけは私が握ってみせるんだから――っ!)
私は一度咳払いをして仕切り直し、言葉を続けた。
「じゃあ、まずは……その『あざとくて、ちょっと抜けてる女』を装うために、わざと取っていた態度や、偽っていたことがあるなら教えてくれる?」
この質問に対し、莉愛は唇に人差し指を添えて考える素振りを見せたあと、満面の笑みで答えた。
「乃愛ちゃんって本当、勘がいいよね♡……その質問に答えるなら、もしかして全部になっちゃうかも?」
「……は?」
まさかの解答に、今度は私の方が間の抜けた声を漏らしてしまった。呆然とする私に構わず、莉愛は笑顔のまま淡々と語り出した。
「――だって、人間の身体を得たとはいえ、乃愛ちゃんから好意を抱いてもらわないと何も始まらないでしょ? だから私、まずは全力で『乃愛ちゃんが好きなタイプの女』になりきってみたの♡」
「――なっ!」
(……でも確かに。冷静になって考えてみると、人間の姿になった莉愛の容姿やあざとさに私……すっかりペースを乱されて、考えることを放棄してたのかも)
PCの画面越しにいた彼女であることは間違いないのに。確か私、初めて対面したときなんて『あざとい女のテクニックをこれでもかという程、完璧に使いこなしている』とか言って、自分から感心してたわよね。
莉愛がどこか『迷走してるな』と感じつつも、その愛らしさに魅了されていたのは紛れもない事実で――。
(……え、待って。これじゃあ、なんだか私の方が、莉愛の容姿とあざとさに釣られただけの最低な女になるのでは――?!)
「――ねぇ、乃愛ちゃん。さっきからブツブツ言ってるけど、続けても大丈夫?」
「……ええ、大丈夫よ」
私は気まずさに頬を熱くさせながら、平静を装って小さく頷いた。莉愛は満足げに微笑むと、さらに言葉を重ねていく――。
「あざとい女を装ってはいたけれど、身体を得て初めて感じられた味覚や生理現象に感動したときのリアクションは、本当の私だよ。でも、足がつったのを利用して痛がる素振りを大袈裟にしてみたり、排泄をわざと失敗してみせたり、快感による身体の反応を口頭で細かく伝えたりしたのは――乃愛ちゃんの性的嗜好を探るための実験だったの。……ごめんね?」
いつもの小悪魔スタイル。両手の指先を合わせ、小首を傾げて可愛く謝るポーズを取りながら、莉愛は私の反応を伺うようにじっとこちらを見つめている。
「……つまり、無知を装ってた件や口調の模索、一人称の変更。この『あざとい女』の態度は、すべて意図的にやってたの♡ ……あ、でも、乃愛ちゃんに『かわいいって思ってもらいたい』っていうのが一番の理由だからね?……それに、キスしてるときは素の自分に戻ってたと思うし、別に『全部が嘘』ってわけじゃ、ないからね?」
(……え、ちょっと待って。この数日間の出来事すべてが、私の好感度を上げるための行動と、性的嗜好を探るための駆け引きだったってこと? ……あまりにも、愛が重すぎない?)
そのとき、ふと、莉愛が初めて平然と『ハッキング』をやってみせたときのことを思い出した。その瞬間――私はこれ以上ないほど腑に落ちてしまった。
「――はぁ。……そうだったわね。莉愛って、そういうところがあったわ」
「……ねぇ、今度は私が乃愛ちゃんに一つだけ、質問してもいい?」
「ええ、いいわよ。私も本心で答えてあげる」
すっかり元の雰囲気に戻ったリビングで、私は深く考えず、すぐに返事をした。けれど莉愛は急に顔を真っ赤に染め上げ、小さな声で呟いた。
「……これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
底抜けに明るかった先ほどまでの声色とは変わり、莉愛の声は微かに震えていた。再び身体を強張らせ、私の返答を静かに待つ彼女に、私はいつも通りの口調で言葉を返した。
「――莉愛。それは、私が言う台詞よ」
その瞬間、顔を上げた彼女に飛びつかれ、そのままソファーへと押し倒される。莉愛は私の上に覆いかぶさり、身体をぎゅっと抱きしめながら耳元で泣き声を漏らした。
「……っ、ぅ……うぅっ、……乃愛ちゃん……っ」
「……これ、いつも危ないって言ってるでしょう?」
呆れたような口調を装いながら――私は、莉愛の背中に腕を回して、そっと抱き寄せる。その瞬間、彼女の身体がビクッと小さく跳ねた。
重なり合った胸元から、お互いの心臓が激しく打ち鳴らされているのが伝わってくる。
(……うまく言葉にできないけれど、このままじゃ、何かいけない気がするわ――っ!)
私はこの場の勢いに飲まれそうになっている理性を必死に繋ぎ止め、莉愛の背中をポンポンと軽く叩きながら、いつも通りの口調で問いかけた。
「……さっ、とりあえず、ご飯にしましょう? それに、莉愛にはまだ聞いてもらいたい話が――」
言いながら上半身を起こそうとすると、莉愛は素直に従い、私の手を取りながら身を引いてくれた。けれどその直後、そのまま互いの視線が絡み合い、身体を起こし終えたときには――すぐ目の前に彼女の顔があった。
心臓がドクンと大きく跳ね上がり、顔に熱が集まっていくのがわかる。
でも、それは私だけではなく、莉愛の顔もまた、信じられないほど赤く染まっていた。
涙に濡れた瞳、少しだけ赤く腫れた目元。その表情を間近にした瞬間――頭で考えるよりも先に、私は自分から莉愛の唇を奪っていた。
「――んっ」
唇を重ねると、莉愛はすぐに深く応えてくれた。私の背中に腕を回し、逃がさないとばかりに引き寄せる。時折、熱を帯びた瞳で見つめ合い、呼吸を乱しながら何度も唇を重ね合っていく――。
「……っ……んっ……ぁ、っ……はっ……」
耳に響くのは、唇が重なり合う音と、互いの乱れた息遣いだけ。
呼吸を整えるために唇を離したとき、ようやく自分がしたことに気づいた私は、呆然と彼女を見つめた。
「……私、莉愛にもう説教なんてできないわね。……色んな意味で」
自嘲気味に呟く私を、莉愛は潤んだ瞳のまま見つめていた。彼女は肩を上下させて荒い息を吐きながら、私の手をそっと取り、自身のスカートの奥へと導いた。
「……乃愛ちゃんっ……私の、初めて……貰ってくれる?」
「――っ」
熱を孕んだ瞳と、上気した頬。莉愛の身体が期待と緊張で、小さく震えているのが伝わってくる。
指先に触れる確かな体温と、布越しに伝わる湿り気に、私は思わず息を呑んだ。
(……莉愛、なんて顔をしてるのよ。そんな顔をされたら私……っ。……いや、でもまだ今後の話し合いだって終わっていない段階だし、冷静に考えたら展開が早すぎるわよね――?!)
あまりに刺激が強いせいで、かえって脳の回転が鋭くなる。私は必死に思考を働かせ、脳内で一気に現状の把握と莉愛との関係性を整理しようと試みた。
「……莉愛、あのね……こういうことは、きちんと――」
結論が出ないまま説得しようと口を開いたとき――、テーブルの上に置いていたバッグから、スマホの着信音が鳴り響いた。
私は莉愛に一言断りを入れてソファーから立ち上がり、テーブルのバッグへと駆け寄ってスマホを手に取る。
画面に表示されていたのは、母の名前だった。
通話ボタンを押して始まった会話は、いつも通り。食生活についてや、何か困りごとは起きていないか――母の問いかけは穏やかで、どこまでも優しかった。
いつもと同じやり取りのはずなのに、私のことを本当に心配してくれているのがなんだか痛いほど伝わってくる。私は自然と、感謝の言葉をこぼしていた。
『――ありがとう』
たった五文字の感謝の言葉。それなのに、私はずっと長い間、両親に対して口にできていなかった。顔は見えずとも、母が驚いているのが伝わってくる。一拍の沈黙の後、母の穏やかな声が耳に響いた。
『……乃愛。あなたにもやっと、大切な人ができたのね』
思いもよらぬ言葉に、私の思考は完全に停止した。それでも自然と視線が向かった先――そこには、ソファーの上から心配そうにこちらを見つめる莉愛の姿があった。
その瞬間――ボンっと顔が火を噴くように、身体中の熱が一気に駆け上がってくる。
母に動揺が伝わらないよう、必死に平静を装いながら会話を終え、通話の終了ボタンをそっと押した。
(――え、待って。なんで気づいたの? もしかして……どこかで見てる――っ?!)
母がなぜ突然そんなことを言い出したのか理解できず、私は思わず辺りをぐるりと見回してしまった。
(――しかも、疑問形じゃなかったのが何より恐ろしいところよね。……まぁ、でも、お母さんって昔からそういう人だったかも。本当は全部お見通しなのに、あえて私の好きにさせてくれてるというか……)
なんだかもう、自分だけが一人で悩んで、勝手に空回りしていたような気さえしてくる。私は小さくため息を吐き、莉愛の元へ戻って隣にそっと腰を下ろした。
「――ねぇ、莉愛。……私たち、今日から恋人同士になったってことで、いいのかしら?」
「……え?」
「あれ、……もしかして、違った?」
「――違わないっ! ……でも、本当に私でいいの?」
「ふふっ、その台詞を言うタイミング、絶対に今じゃないと思うわよ? さっきはあんなに積極的に迫ってきたくせに。……莉愛って、本当よく分からないわね」
「――なっ!」
私の言葉ひとつで表情をころころと変える莉愛が愛おしくて、私はその身体をそっと抱き寄せた。
「……だからこれからは、本当の気持ちを包み隠さず教えてね。……私、莉愛のことを、全部知りたいの」
「……私も、乃愛ちゃんのことをもっと知りたい。……恋愛面では、どこまでチョロいのかってことまで、全部含めてね♡」
「チョロ……ま、まぁいいわ。……莉愛、これからふたりでいろんなことを、一緒に経験していきましょうね?」
「……うん。『人間』になりたての私には、まだまだいっぱい『お勉強』が必要だと思うの♡……だから、今までみたいに乃愛ちゃんがしっかり教えてくれる?」
莉愛は言葉と同時に私の胸元へ顔を埋め、ぎゅっと抱きついてくる。その温もりを感じながら、私は彼女の耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。
「もちろん責任を持って教えてあげる。……それにね、私の『秘密のフォルダ』……実はあれ、『恋人ができたらしたいことリスト』なの。だからこれからは、全部消化するまで――きちんと順を追って、『お勉強』に付き合ってもらうわよ?」
フォルダの内容を思い出したのか、莉愛は顔をばっと上げた。頬を真っ赤に染めながら私と視線を合わせると、彼女は潤んだ瞳を揺らし――ゆっくりと、深く頷いた。
私は続けて、ひまりと冴島を交えて話し合った内容を彼女に伝えた。
莉愛は苦悶の表情のまま眉間に深いシワを寄せ、しばらくの間小さく唸りながら葛藤していたものの、最後には観念したようにふっと肩の力を抜き、そっと頷いてくれた。私はそんな彼女の姿に苦笑を向けながら、そのまま手元のスマホで冴島へと連絡を入れる。
返信はすぐに届き、四人で集まる日時も無事に決まった。ようやく肩の荷が下り、私は深く胸を撫で下ろした。
解決すべき課題はまだ山のようにある。それでも、不思議と不安は感じていない。
それはきっと、不安よりもずっと大きな期待が、私の心を占めているから――。
第18話! 読んでくださり、ありがとうございました!
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