溢れ出るもの
「なぁ、国分寺先生のお見合い相手ってお前だろ」
「うえ?」
クラスで次の授業の準備をしていたら、突然の男子の質問に私は変な声を上げてしまう。何故バレた。突然の事にフリーズしていると、相手の男子がスマホを取り出して、画面を見せてくる。
そこには『オーガ選手のお見合いに遭遇』と呟きと、いつかのデートで剛さんと私が並んで立っている姿が映っていた。
「ちょ、著作権侵害!!」
「肖像権侵害だよ。んでお前なのか?」
「それは…その…はい」
返答に迷ったけどここで違うと言うのは、お見合いをセッティングしてくれた校長先生や櫻井先生に悪いし、何より剛さんと隣に居たいという気持ちに嘘吐きたくなかったから、絞り出すような声で返事をした。
「マジかよ…」
「あーあ俺達のヒロインが…」
「アイドルは恋しちゃいけないんじゃなかったのかよ」
「ヒロイン?アイドル?」
話を聞いていた周りの男子達が上げる声に、訳が分からず頭に疑問符が飛び散らかる。そんな事をしていると、隣の席の千里ちゃんが抱きついてきた。
「あーもー照れてる流李ちゃん可愛い〜!漸くクラスメイトにお見合いって言えたわね!」
「あわわ千里ちゃん」
「でも良く頭に花咲してない百川をお見合い相手に選んだよな」
千里ちゃんに頭をグリグリ撫でられてる最中、男子の何気ない一言が胸に刺さった。
「ちょっと!どういう意味よ!」
「いやだって総合格闘技のチャンピオンの国分寺さんなら、どんな花人も選り取り見取りだろ?そんな中で花咲かせてない百川を選ぶなんて、ちょっと意外というか…」
「花なんか関係なく流李ちゃんは可愛いでしょう!喧嘩売ってんのあんた!」
「ちょっと千里ちゃん」
千里ちゃんが私から離れて男子の襟首を掴む。百合ちゃんと一緒に止めなきゃいけないのに、喉元まで迫り上がってくる熱いものに声が出なくて、目元まで押し上げてくるモノを零さない様にするのに精一杯だった。
「流李ちゃん、大丈夫?」
「っ…その、ごめんっ体調悪くなったっ」
絞り出す様にそう百合ちゃんに伝えて、私は廊下に飛び出した。
自分で選んでる事なのに、自分で愛する母だけに花を捧げてるのに、何でだろう。誰かに花の事を言われて泣きたくなっちゃうのは、久しぶりだった。
いつもなら女子トイレの洗面台で顔を洗ってリセットするのが私なのに、私は誰にも会いたくなくて、鞄を置いたまま、上履きのまま学校を飛び出して走った。
泣きたくないのに何で涙が溢れるんだろう。




