ハミング
家の近くまで来たけど家に帰りたくはない。家族にも泣いてる所見られたくない。
どうしようと思っていたら、寂れたボロボロの公園があった。
懐かしい、昔はここで遊んでた。最近じゃ騒音問題とかで誰も公園で遊ばなくなって、ボロボロになって寂しい場所になっている。
今の私にピッタリだ。私は水道で蛇口を捻って顔を洗って、ブランコに座って足元を見る。
学校サボっちゃった。上履きでここまできちゃった。でも泣いてる所を誰にも見られたくなくて、ボロボロ溢れる涙を乱暴に拭う。
悪気があっての言葉じゃない事は知ってるのに、何でこんなに泣きたくなるんだろう。
剛さんから頭の花について何も聞かれた事はなかった。多分櫻井先生か栗原先生に何か聞いてるから黙っているんだろうけど…私、甘えてたのかな。
良く考えたら剛さんも私がお見合い相手として選ばれたから、仕方なく付き合ってるだけかもしれない。私が菊の花を咲して前に現れたら、嫌になるかもしれない。
そこまで考えて胸がギュッと痛んで、更に涙が溢れる。
…そっか、私。思った以上に剛さんが好きなんだ。
そこまで考えて、小さく歌をハミングして歌い出す。心を落ち着かせる為と、花を咲かせる為と…覚悟を決める為。
花人の口から出す歌には周囲の草花を咲かす効果があるけど、声にしない脳内に響かせるハミングは、頭の花を咲かせる効果があるって授業で習った。
…剛さんに、私の菊の花を贈ろう。
そして返事を聞いて、剛さんの事を諦めよう。




