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俺の異世界、中古!! 〜転移した異世界が誰かがクリア済みのゲームソフトみたいだった件〜  作者: ツインテール大好き


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2話 伝説の聖剣と魔王

 俺はトイレに逃げ込んだと思いきや、いつの間にか緑豊かな森のただ中にいた。

 しかも目の前には金髪の美人さん。

 だが彼女が呼びかけているのは俺の知らない誰か。


「……マサタカって誰っすか? あとここはどこ?」


 オレからの問いかけの答えは返ってこず美人さんは呆けている。


「あのー」

「あっはい!」


 そこでようやく彼女はハッと放心状態から復帰した。

 オレに駆け寄り、珍しいものを見るような目を向ける。


「あなたも異世界からやってきたのですか?」

「い、異世界!?」


 異世界ってなにそれ⋯⋯。どういう⋯⋯ことなん?

 思わずパニックになりそうな状態だが、踏みとどまる。

 オレは空気を読むのが得意だ。考えろ。

 ——開かずのトイレに入り、唐突に変化した景色。

 ——オレが転がってきた方向にある神殿チックな建物。ブラックホールみたいな渦巻き。何かの門のようにも思える。

 ——駆け寄ってきた美人さんの言葉、『マサタカ』『あなたも』『異世界』

 現況をつぶさに観察して、答えを導く。

 ——QED《証明終了》。


「えっと、困りましたね。はい、とても困ってます。なにから説明したらいいのでしょうか⋯⋯。うーん」


 口元に指を当てて、うなる美人さん。

 でも心配はいらない。ほとんど状況は理解した。


「ようするに、オレはあのゲートを通って異世界に来たんすね?」

「え⋯⋯はい」


 まさか異世界が存在していて、よりにもよってオレがそこに足を踏み入れることになるとは。

 本当はこういう異世界ものが好きなやつが行くべきだっただろうに。

 かなりの驚きだが、そういうものだと受け入れるしかない。状況に適応するのも重要な現代スキルだ。

 彼女は少し戸惑っているがまだ聞きたいことがある。


「それと異世界に来た人間はオレが最初じゃないと。マサタカさんという人が先に来ていた。あなたはそのマサタカさんがこのゲートから出てきたと思ったわけっすね」

「へ? え、ええ……」


 その反応を見ると当たりか。


「マサタカさまをご存知なのですか?」

「いいや。その人のことはわからないっす。⋯⋯だから、お話をしませんか? お互い色々と聞きたいことがあるでしょうし」


 何をするにも、まずは情報収集。探索の鉄則だろう。



    ◇    ◇



「すみません……わたしとしたことが取り乱してしまって……」


 オレはゲートの近くにある木の小屋に案内された。彼女の住処らしい。

 小さい小屋の中央で、案内されたとおりテーブルに座る。

 テーブルの上に箱に載ったケトルが置かれ、彼女が箱に両腕をかざすと箱の中の石が燃えて火がついた。

 ははーん、マジックストーンのようなものだろうか。

 不思議そうに眺めていると彼女が話を切り出した。


「わたしはエルと申します。この森に住むハーフエルフです」

「ハーフエルフ!? 本当に西洋のファンタジーみたいだなー」


 国民的RPGによく出てくる種族まで出てくるとは異世界なんでもありすぎる。

 凄い、ぜひ異世界好きな人に来て欲しかった。


「オレは水島海斗。その辺にいる普通の高校生っす」

「コーコーセー! マサタカさまと同じですね!」


 どんなポイントに驚いているのやら。お互い異文化すぎるからなぁ。


「でも髪の色が違いますね。マサタカさまは黒でミズシマさまは白です。同じコーコーセーでも種族の違いがあるのでしょうか?」


 むむむ、と顔を寄せるエルさん。鼻が細くて口元が艶やかで……ちょっと照れてしまう。へへ、可愛い人だな。


「髪は染めてるだけなんす」

「……そめる? 髪を?」

「そんなに難しくないっすよ。ブリーチを繰り返して……」


 俺は異世界に来て何の話をしているんだろう。

 でも俺の話で真面目に頷くハーフエルフは新鮮で、ついつい話し込んでしまった。


 エルさんにこちらの事情をある程度説明した後、


「なるほど、ニホンという場所のコーコーのトイレからこの世界にやってきたわけですね」

「そうそう、マサタカってやつも同じ手段で来たんじゃないですかね」

「そういえば、マサタカさまもそのようなことをおっしゃっていたような……」


 いよいよ本題に移ろう。


「で、オレはどうやったら元の世界に戻れますかね?」


 オレが一番心配してることはこれだ。

 一度迷い込んだら最後、きっとそう簡単には帰れないだろう。大抵の異世界物は帰る手段を探すのが定石だ。

 このままオレが帰らなければあっちに残してきた家族も心配するはずだし、なんとしても帰らなければならない。

 しかし、その途中で見知らぬ世界を回る大冒険——仲間との絆、恋——そういうのが待ち受けているんだろう。

 唐突な転移に不安を感じつつも、ちょっとワクワクしている自分もいる。

 なんせオレの冒険はここから始まるんだ!


「それでしたら、マサタカさまの願いで創造主さまに直してもらったあのゲートを通ればきっと帰れますよ」

「へ? ゲート⋯⋯? ってなに?」

「つまりですね。伝説の聖剣——エクスカリバーを携えた異世界の”勇者”マサタカさまが長い冒険の末、この世界エルゼスガルドを”魔王”アブルグヴァルドの魔の手から救い、真の平和をもたらしました。そのとき魔王の封印から開放された創造主様がお礼に修復した先ほどの転移ゲートから元の世界に戻ることが出来ますよ!」

「え……。じゃああのゲートくぐれば帰れるの?」

「はい! 良かったですね!」


 マジかよ。オレの冒険始まる前に全部終わってたわ。

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