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選択と出会い

「うぅ…あれ…ここは…」


「おはようパーナ、腕は大丈夫?」


 目覚めたパーナにセイナは優しく声をかける。2人がいる場所は小さな部屋で、部屋にはほとんど何もないただの宿だった。

 パーナの撃たれた腕には包帯が綺麗に巻かれており、完璧な処置が施されていた。


「うん、まだ少し痛むけど大丈夫!セイナがやってくれたの?」


「ええ、昔からこういうのは慣れてるのよ。お金が必要だったからパーナの服に入ってたお金を少し使わせてもらったわ。ごめんなさいね。」


「全然大丈夫!!お金なんてまた稼げばいいからね!…それより…セイナ、大丈夫?」


 先ほど母親に殺されかけた事でセイナの心に深い傷が残ったのでは無いかと心配していたのだ。


「大丈夫…と言われれば大丈夫じゃないわね…でも、もう吹っ切れたの。後ろばかり向いていられないわ。これからの事を考えなくちゃ。」


「これから?」


「そうよパーナ。…私分かったの、どうして『魔女』が禁忌とされているのか。国が積極的に消そうとしているのか。…それはやっぱりこの()()()()()よ。」


 そう言うとセイナは手元に置いてあった銃を手に取った。そしてパーナに向けて銃を構える。


「せ、セイナ!?なにを」



バァアアン!!



 セイナはパーナに向けていきなり発砲した。そしてパーナはその場に倒れる。



「うわぁあ!!!……ん?あれ?痛くない…」


 倒れたパーナは全身を触ってみるが、痛みは全くない。服が破れている様子も無ければ、出血すら無い。しかしセイナの銃からは煙が出ており、弾が発射された事は明白だった。


「せ、セイナ…何を…」


「うふふ…ビックリしたでしょ。」


 セイナはそう言って笑顔を見せた。


「…もうぅ!!セイナぁあ!!すっごいビックリしたぁ!!」


 そう言ってパーナはセイナに飛びかかった。セイナはそんなパーナを軽くあしらいながら笑う。


「ごめん、ごめんって。」


「むぅう!!セイナが私の事嫌いになったと思ったじゃん!!もしかしたら私が何か」



「キャアア!!」


 その瞬間、窓の外から叫び声が聞こえた。パーナはそれに気付いて動きを止める。


「悲鳴?…何かあったのかなぁ…」


 パーナが驚いて窓に駆け寄ると、少し遠くの道路で1人の兵士が頭から血を流して倒れていた。


「うわぁ…こんなところで…」


 パーナが興味深そうに見ているとセイナが後ろから話しかける。


「ちゃんと当たったわね。初めてだったけど上手く行ったわ。」


「え…セイナ、まさかあれは…」


「瞬間移動の応用ね。弾丸の運動エネルギーを残したまま、あの兵士の後頭部に移動させたわ。防御不可能、まさに必殺の一撃ね。」



ドォオオン!ドォオオオン!!



 セイナは再び2発の弾丸を虚空に撃ち放った。すると、倒れた兵士を助け出そうとしていた2人の兵士が頭から血を流して倒れた。


「へぇ…やっぱりセイナはすごいや……」


 パーナはセイナの能力の凄さに関心していた。しかしセイナはつまらなそうに銃を投げ捨てて椅子に腰掛ける。


「ね、こんなバケモノが結託したら国なんて終わりでしょ?要するに国のお偉いさん達はビビってるのよ。『魔女』に国を滅ぼされる事をね。」


「うん、そうだね。でもセイナ…」


 人を殺しても何も感じていない様子のセイナを見てパーナは心配そうな顔になるが、セイナはそのまま続ける。


「だからさぁ…私は決めたんだ。アイツらがさぁ、私を殺しにくるなら、()()()()()()()()。いつどこで誰が何人来ようとも、私たちを殺そうとするヤツは全員殺す。それを命令したヤツも殺す。その法を決めたヤツも殺す。見ているだけのヤツも殺す。パーナを傷つけた奴は殺す。パーナの悪口を言ったヤツも殺す。パーナと私を引き裂こうとするヤツも殺す。…私の計画を邪魔するヤツは全員殺す!!」


 そう言い放つセイナの表情は憤怒に満ちていた。


「いくらセイナが強くても流石にそこまでの人を殺すのは無理だよ!!その前に私たちが殺されちゃう!!」


「そうね、私1人じゃせいぜい国の重鎮を数人殺すのが限界でしょうね。でも私は1人じゃないわ、そうでしょパーナ。」


「え…わたし?」


「貴女の力で死者を『魔女』にして仲間に加える。そうすればコチラも簡易的な軍隊が作れるわ。そうね…私と同等の能力者が100人もいれば、この王国を…いや、大陸全ての国を滅ぼす事が出来るでしょうね。」


「全ての国を…でも、そこまでしなくても…」


「何言ってるのパーナ。『魔女』を迫害しているのは大陸のほぼ全ての人間よ。私と私のママの処刑で石を投げたヤツら、パーナを傷つけた兵士…絶対に許さない…傍観してる奴らも同罪よ。コイツら全員に私が味わった地獄を見せる。その為にアイツらが怖くて怖くて仕方ない私たち『魔女』が世界を支配するの。そんな世界、最高だと思わない?」


「そっか…セイナはそう決めたんだね…私が踏み出せなかった一歩を踏み出そうとしてる…」


「それで?パーナはどう思ってるの?私に協力してくれるの?それともこんな事は辞めてって言ってくれるの?」


 セイナは真っ直ぐにパーナの目を見つめた。

 それを受けてパーナは少しだけ考えた。何故なら自分の次の一言でセイナと自分のこれからの人生が大きく変わってしまうのだと確信していたから。


(今のセイナは混乱してる…そうじゃなきゃこんな事言う訳ない…言わなきゃ、セイナ、そんな事はやめて私と2人で一緒に暮らそうって。2人で田舎の村で農家の真似事でもしながらお婆ちゃんになるまでのんびり暮らそうって…女2人で大変だろうけど、2人なら楽しいだろうから…もし『魔女狩り』に捕まっても2人で一緒なら地獄でも楽しく行けるからって…言わなきゃ…私がここで言わなきゃ…)


 しかしパーナの口から出た言葉は全く違う言葉だった。


「……昔、私のパートナーだった子がセイナと同じ事を言ったんだ。その時の私はそれを拒絶した、そんなの無理だって、残酷過ぎるって、後には何も残らないって…そしたらその子は1人で出て行っちゃって…数日後にね……捕まって処刑されちゃった…国の重鎮を何人か殺した後に『魔女狩り』に捕まったって……私はずっと後悔してるの…あの子を殺したのは私だって…身勝手に生き返らせて、その子の望みを否定して、また死なせてしまったって………だから……だから私は!!セイナについて行くよ!天国だろうが地獄だろうがどこまでも!!それがセイナを生き返らせた私の義務だから!」


 パーナは片腕でセイナに抱き付いた。それを受けてセイナも両腕でパーナを強く抱きしめた。


「ありがとうパーナ…大好きよ。」


「…セイナ、その代わりに一つだけ約束して。2()()()()()()()()()()って。」


「ええ、約束するわ。いつでも、どこまででも…死んで地獄でもずっと一緒よ。」


「えへへ…地獄に行くのはやだなぁ。」


「うふふ…」


 そうして2人は固い約束を交わしたのだった。


 2人のこの選択はのちに世界を揺るがす大事件を引き起こす。でもそれはまだ先の話…




ーー数日後ーー


 2人は王都から脱出していた。セイナの能力を使って外に出た後、何度か野宿しながら近くの街を目指していた。


「セイナ!見て見て!!あれ!」


「…あっ!あれが()()()()ね!」


 2人の目の前に広がるのは広大な草原の中にある大きな街だった。


「セイナ!!早く行こ行こ!!」


「ちょ、パーナ!走らないの!!」


 パーナに手を引かれ、2人は街に向かったのだった。



 2人が街の中に入ると、そこには民家が立ち並び、市民たちが様々な仕事に従事していた。


「セイナぁー、お腹すいたぁ!!」


「はいはい、その辺で何か買うからちょっと我慢しなさい。」


「セイナ!!私あそこ行きたい!!馬に乗れるやつ!!」


「ご飯の後にね。」


「セイナセイナ!!あの大きな家にも行ってみたい!!」


「馬の後にね。」


 初めての街で子供のようにはしゃぐパーナをセイナは母親のように嗜めていた。最近は非常食ばかりで腹も空いていたセイナは近くの出店を探す。すると、焼いた肉を売っている店を見つけた。

 2人が近くに寄って行くと店主の男が話しかけてくる。


「いらっしゃい!!別嬪な嬢ちゃん2人!!何にしやすか!?」


「ありがとう、ではこの真ん中のヤツを2つ」


「4つ!!」


 隣のパーナが指を4本立てて注文を変えた。


「えぇっと…3つで。」


 セイナは悩んだ末に3つ注文した。


「ほらよ、熱いうちに食ってくれよ。」


 店主は3つの肉串をセイナに渡した。


「ありがとう。パーナ、熱いからゆっくり」


「あむっ!!……オホッ!!アッチチ!!」


 パーナはセイナの持った串をそのまま食べた。そして熱さからのたうち回る。


「だから言ったじゃない。ゆっくりって…」


「うぅ…口の中が痛いよぉ〜。」


「あの…私も買いたいのですが、少しどいてもらえませんか?」


 その時、いきなり背後から声をかけられた。


「ん?」


 セイナとパーナが振り返ると、後ろに1人の女が立っていた。その女は眼鏡をかけ、本を片手に小さな巾着袋を持っていた。


「貴女は…」


「客です。良い匂いがしたのでどうしても我慢出来なくて来ました。どいてもらえますか?」


 女は少し高圧的な態度で2人に詰め寄る。


「すみません、どうぞ。」


「へい、らっしゃい。眼鏡の嬢ちゃんは何にしやすか?」


「そうですね…この2人の持っているモノを3つ……いいえ、1つください。」


「へい、どうぞ。」


「こ…これが……じゅるり……」


 肉串を受け取った女は先ほどまでの仏頂面を一変させ、玩具を与えられた子供のようになった。


「あ!それ、熱いから気を付けて…」


「アツっ!!…」


 パーナの忠告は間に合わず、女は口に入れた肉の熱さに驚いた。


「うぅっ………」


「そんなに急いで食べなくても良いのに…ねぇ貴女、大丈夫?水とかいる?」


 涙目になった女を見てセイナが持っていた水を手渡す。


「あ、はひ!!あひがほうござひまふ!!」


 女はそれに飛び付くようにして水を一気に飲み干してしまった。


「ぷはぁ!!…生き返りましたー!!……でも舌がジンジンします……」


「貴女、何かあったの?随分とお腹も空いていたようだし、水も久しぶりって感じね。」


 セイナは気付いていた。女の格好は裕福そうな格好なのに、所々汚れが目立ち、顔もかなりやつれている。肉を見せられた時も我慢出来ずにすぐに食べてしまったり、水を一気飲みした事から目の前の女は少し特殊な境遇の女なのだと。


「ギクッ!…な…何でもありませんよー。あむっ……うぅうーんん!!!…コホン、貴女達には関係のない事です。」


 肉を食いながらそう答える女を見て店主が何か思い出したように話す。


「…嬢ちゃん、どこかで見たと思ったらアンタ、ヴァイズ様んとこの娘さんか。」


「ヴァイズ様?」


「ギギクッ!……だ、だれですかそれ…しらないひとだなあ…」


 あまりにも分かりやすい女の嘘に店主の言葉が真実なのだと気付いた。


「はっ!嬢ちゃん、そりゃ嘘が下手すぎんぜ。()()()()()()様の名前を知らない奴がいるかよ!」


「こ、この街の領主!?」


 セイナとパーナもそれには驚きを隠せない。

 この国では貴族制が取られており、周辺の地域を貴族が治めるのだ。この規模の街の領主という事は、甘く見積もっても子爵、さらに広い範囲を統治しているのなら公爵までありうる。


「ちょ!声が大きいです!!周りにバレてしまいます!!」


「あ、ごめん。でもどうして領主様の娘さんがこんな所で1人で出店なんかに来てんのよ?誰かに誘拐とかされたらどうすんのよ?護衛はいるの?」


「………」


 女は黙って下を向いたまま何も話そうとしない。


「ん。いる?」


 見かねたパーナは肉を差し出した。それを見て女は再び嬉しそうな顔に戻る。


「い、いいの!?」


「うん!私はもう一本あるから!それにお腹空いてるんでしょ?ならあげる!」


「うぅ…ありがとうございます!!本当に…昨日から何も食べてなくて……うぅ…」


 パーナに肉を貰った女は泣き出してしまった。それを見たパーナは女の背中をさすった。


「よーしよし。もう大丈夫だよー、今度はフーフーして食べてねー。」


「はい!…ふーふー……あむ!…うーん!!美味しいですぅ!!」


 女は満面の笑みを浮かべて飛び跳ねた。その様子から、女が本当に飢えていたのだと理解した。

 女はしばらく食べるのに夢中になっていた。そして全てを食べ終わると一つため息をつく。


「ふぅ…本当にありがとうございました。なけなしのお金も節約出来ましたし、元気も出ました。お礼と言っては何ですが、何か困っている事があればお手伝いしましょう。恩に報いるのは私のポリシーですから。」


「はいはーい!!それじゃあ私たちの仲間に」


「先ずは名前を教えてくれるかしら?私はセイナ、こっちはパーナよ。」


 パーナの口を無理矢理塞ぎながらセイナが割り込んだ。


「私は()()()()()()()()()()()()()()()でした……今はただのニューズ・シチリアです。」


 ヨードルム家はこの街を治める領主の事だ。周辺では有名な貴族で、かなり大規模な土地を管理しているらしい。


「ヨードルム…確か侯爵家よね?…やっぱり正真正銘の令嬢だったのね。それで?そんなお姫様がどうしてそんな汚い格好で出店なんかに来てるの?」


「……家を追い出されました…それでこの辺りを…」


 ニューズは暗い顔で下を向きながらそう答えた。


「そう…貴女も大変だったのね。同情するわ、でも親なんか所詮そんなモンよ。期待するだけ損だわ。」


「…そうです。あの人たちは結局、私のことなんかよりも周りの評価や家の存続の方が大事なんです……私だって一生懸命頑張ったのに…」


「よしよし…ニューズはどうして追い出されちゃったの?何か悪い事したの?」


「…いいえ、単純に無能な私が要らなくなったんだと思います。15歳の時、私が()()()であると分かった途端、両親の態度が一変しました。今まで優しかった2人は私にとても厳しくなり、それ以降は遊ぶ事や大好きな本を読むことすら許されずに毎日毎日勉強させられました。出来が悪かったら私が泣くまで折檻され、私が逃げ出した時には何日も独房に閉じ込められて反省させられました。そして先日、2人に呼び出されて今までの勉強の抜き打ちテストをやらされる事になったんです。そこで満点を取らなければ家を出て行けと言われました。…私も満点の自信はあったんですが、どうやらどこか間違えていたようで、そのまま家から叩き出されたというワケです。」


「うわ、ひど…」


「『無能力者』の追放ね。貴族ではよくある事らしいわね。」


 貴族は平民よりも遥かに能力が重要視される。能力は子供に遺伝する事ため、無能力者は他の貴族と結婚する事が出来ない。故に無能力者となった令息、令嬢は勘当という形で家を追われる事が多々ある。


「あの優しそうな侯爵様がねぇ…人は見かけによらないって事か。」


 店の店主が言うようにヨードルム侯爵の評判は良かった。税も安く、警備などにも力を入れている事から治安も良い、侯爵自身も非常に優しい人格者であると周辺では有名な話だったのだ。


「ええ、私もムカついたので出て行く際に金庫にあった金を全部持って来たんです!今頃あの2人もこの金を必死に探してるはずです、このお金が無ければ国への税も払えませんから!!」


 ニューズはそう言って得意げに大金貨の束を見せた。それはぱっと見でも100枚ほどあり、日本円に直すと約1000万円相当だった。

 それを見て2人は驚愕する。何故ならこの国では貴族への犯罪行為は特に厳罰が重いからである。このレベルの金額を盗んだとバレれば、最悪の場合は死刑まであり得る。

 

「うわー、凄い量!!これは両親も相当に困ってるだろうね!」


「はい、最後に娘からのささやかな反抗です。それにこれだけの金があればしばらくは1人でも生きていけますから。」


「やるわね貴女、気に入ったわ。」


 その豪胆さを見てセイナは感心していた。



「いたぞ!!あそこだ!!」


 その瞬間、少し遠くから男の声が聞こえた。全員がその方向を振り返る。するとそこには甲冑を着た数人の兵士と、良い格好をした執事風の男がいた。彼らはコチラに向かって来ており、少しして3人の前に立った。


「お嬢様、お久しぶりでございますね。」


 執事風の男は恭しく頭を下げた。


「ベイズ、久しぶりですね。今更何の用ですか?私はもう貴方達の主人では無いのだけれど。」


 ニューズは警戒しながら少し後退りする。


「そうでしたね、ですがご主人様に貴女を連れ戻すように言われましたので、こうして私がここまで迎えに来ているのです。」


「連れ戻す…そういう事ね…私が盗んだお金を取り返しに来たって事ね。」


 ニューズは冷汗を流しながら更に後退りする。ここで彼らに連れ戻されれば、良くて厳しい折檻、悪ければ国に突き出されて死刑まであり得る。


「金…一体何の…」


 しかし金と言われその男は全くピンと来ていない様子だった。


「アンタらさぁ…たかが大金貨100枚ごときで大げさなのよ。娘を追い出すんだったらそれぐらい餞別としてあげればいいのに。」


「そうだそうだ!!ニューズは頑張ったんだ!!それぐらい見逃せ!!」


 セイナとパーナはそう言ってニューズの前に出た。


「何を言っているのか分かりませんが、とにかくお嬢様は連れて行きます。アナタ方の事は存じませんが、邪魔をするのであれば…」


 その男が右手を挙げると、背後の兵士たちが前に出てきた。そして3人を囲うように武器を構える。


「ひぃ…」


 パーナとニューズは怯えてセイナの背中に隠れた。しかしセイナは全く動じていない。それどころか家族に捨てられたニューズを哀れに思い、苛立っていた。


「はぁ…やっぱりね。家族なんて皆んなそう、どれだけ愛していようが、大切にしてようが娘が無能と知れれば捨てるし、金の為に殺す。本当に反吐が出るわ……それで?こんな雑魚どもで私をどうにか出来るとでも?」


 その瞬間、セイナは殺気を爆発させた。周囲にセイナのオーラが放出される。兵士たちはその禍々しいオーラに怯え始める。


「こ、これは…」


「まさか…『魔女』か!?」


「大正解!!ご褒美に紐なしバンジージャンプをプレゼントよ!!」


 イかれた笑みを浮かべるセイナが両手を広げると、そこにいた兵士たちは一瞬で空に瞬間移動させられる。


《ぐぅあああ!!》



 グチャッッ!!!!



 兵士たちは全員、物言わぬ骸となった。


「ひぃい!!」


 執事風の男はそれを見て腰を抜かす。セイナはその男にゆっくりと近づいていく。


「お!お助けください!!」


 男は必死に土下座しながら懇願するが、それを見てセイナの口角が上がる。


「…うふふ………()()()。」


 その瞬間、男の姿が掻き消えた。そしてすぐに少し遠くで大きな音がした。


「…おっと、この生ゴミも片さなきゃね。ほい。」


 セイナは地面に倒れる兵士たちの死体をどこかに瞬間移動させた。地面に残った血も綺麗さっぱり消え去っており、その場には何も残っていなかった。


「はい、ゴミ掃除完了っと。2人とももう良いよ。」


「はーい。」


「今のは一体…貴女は何者なんですか!?」


 能天気なパーナと正反対にニューズは困惑していた。


「うーん…ここは人が集まって来そうだから、別の場所で話そうか。あ、おじさんありがとね、美味しかったよ。」


「お、おう…」


「行こ、ニューズ。」


「…わ、分かりました…」


 そう言って怯えるニューズの手を取ってセイナはパーナも連れてその場を後にしたのだ。






「ヨードルム侯!!大変です!!侯が仰っていた通り、この町に『魔女』が現れました!!」


「くっ…国から通達があった通りだな…それで被害は?」


「はい、今のところはお嬢様を()()()()()()ベイズ様とその私兵7人です。皆、高所から落とされた落下死では無いかと報告が上がっております。」


「ニューズは!!あの子は大丈夫なのか!?」


「はい、今のところ発見されておりません。」


「アナタ…ニューズは…あの子は大丈夫なのかしら…」


「…まさかこんな町に『魔女』が出るとはな。だが『魔女』は危険だ!!今すぐにニューズを保護しなければ『魔女』の被害はあの子にも及びかねない!!早く安全な場所に避難させなければ!!この町に控える全兵士を動員せよ!!目的は邪悪な『魔女』の討伐と、()()()ニューズの保護だ!!娘の保護だけは何としても完遂するのだ!!急げ!!」


「はっ!!」



「ニューズ…まさかこんな事になるとは…お前を1人にしてしまったこの愚かな父を許してくれ…必ず助けてやるからな…だから…」


「アナタのせいだけじゃ無いわ。私も同罪よ。今はとにかく祈りましょう、あの子の無事を。」


 2人はそう言って手を繋いで娘の無事を天に祈った。

能力者同士の間の子供は低確率(5%ほど)で無能力になります。

無能力者同士では逆に約95%で無能力、片方が無能力であれば50%で無能力になります。

因みに『魔女』は母親が『魔女』でない限りは100%産まれてきません。

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