↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/44

満面の笑み

 選別が終わり、夜も更け、それぞれ解散した村の女たちだったが、ホランとルナーはフィンセ達から話を聞くために朝に使っていた大きな建物に集まっていた。



「へぇ…アンタたちが巷で噂の『魔女』ねぇ…噂では残虐非道なバケモノだって聞いてたけど、普通に可愛らしい娘たちじゃないか。」


「で、ですが先ほどのフィンセちゃんの尋常ではない魔法…し、信じざるを得ません。」


 9人が『魔女』であると言う事実に、2人は動揺しながらも受け入れた。



「黙っていてすみませんでした。この事が知られればこの村は丸ごと駆除対象になる恐れがありましたので。」


「そうだろうね。ここは『魔女』が隠れるには最適な場所だからねぇ。」


「ね、姐さまどうしましょう…も、もしフィンセちゃん達のことがバレたら…」


 そう言って縮こまるルナーを見て、ホランはルナーの背中を叩く。


「シャキッとしな!ルナー!私が死んだら次はアンタが皆んなの母さまになるんだから、もっと堂々としな!」


「ご、ごめんなさい…ね、姐さま…」


「全く…そんなんじゃ、私も安心してあの世に行けないよ。」



 その時、2人のやりとりを見ていたセイナが口を開く。


「ねぇ、そう言えばもう一つ聞きたいことがあったのを忘れていたわ。」


「ん?何だい?」


「ホランさんがこの村の最年長なのよね?それってやっぱり変じゃない?ホランさんはどう見ても40歳前後、そんな貴女が最年長だなんて絶対におかしいわ。何か事情があるんじゃないの?」


「そ、それは……」

「……」


 セイナの言葉に、事情を知るルナーとフィンセは悔しげな顔をしながら口を噤む。しかしホランは笑顔のまま話す。


「それは簡単な話さ。この村じゃあ、40を超えた女は口減しの為に死(・)な(・)な(・)き(・)ゃ(・)い(・)け(・)な(・)い(・)んだ。それがこの村の掟だからねぇ。」


 その事実を聞いた8人は驚愕し、各々の反応を見せた。


「…なるほど…納得したわ。まぁでも当然と言えば当然よね。選ばれたら死が待ち受ける村で選ばれない事にデメリットが無きゃおかしいもの。」


「ご明察通り。そして私は今39。この村では十の刻(日付)に皆の歳が一斉に変わる掟だ。十の刻までは8(・)日(・)と少し。私ももうすぐその時が来るってことさ。」


 あと数日しか命が無いという衝撃の事実を、ホランは茶を啜りながら飄々と話した。


 それを聞いて、事情を知らなかった者たちは驚愕した。


「あと8日…だからあんな無茶したのね。」


「あっはっは!そうとも言えるね。でも多分だけど8日だろうが8年だろうが私は動いてたよ。私の命一つでナワリ(あの子)が救えるのなら本望さ。でも助けてくれたのは感謝してるよ、最期に村の皆んなと話す時間が出来たからね。」


 そう話すホランはもうすぐ死ぬとは思えないほどに気丈だった。


「掟ねぇ…別にそんなの守らなくたっていいじゃない。皆んな、貴女に生きてほしいって思ってるんじゃないかしら?」


「それは出来ないよ。年季の過ぎた年増女は無駄飯食らいなんだ。貴族様はそれをお許しにならない。だからこの村では先祖代々、全員が40歳で潔く腹を切るのさ。…私はこの村で世話になった恩人たちが腹を切るのを何人も見てきた。だから次は私の番って事さ。」


「…死ぬのが怖くないの?」


「もちろん怖いさ。でもねぇ…この腹切りは一人前の証でもあるんだ。若い子たちを育て、守った、そして村の存続に貢献したっていう最高の栄誉を持って死ねるんだ。私の恩人たちも皆、笑顔で死んでいったよ。これ以上幸せな死に方があるかい?」


 そう告げるホランは清々しい笑みを浮かべていた。その笑みは本気で死ぬ事を幸せだと思っている顔だった。


(やはりここの人たちは皆、感覚がおかしいわ…まぁこんな地獄みたいな環境で過ごしてたら正気でいる方が無理かしらね。でも…少しだけ羨ましいわね。希望を持って死ねるなんて。)




「ううっ…そんなの可哀想だよ…皆んな、あんなにホランさんの事が大好きなのに…」


 ホランの言葉に悲哀を感じたパーナはポロポロと泣いていた。


「パーナ…」


(パーナは本当にいい子ね。私だって助けられるのならこの人たちを助けてあげたい。だって私が『魔女』に会わずに処刑もされていなかったらここに来ていた可能性もあるでしょうからね…)


 セイナはどうにか助けられないかと思案を巡らせた。すると、一つの案を思いついた。


「…そうだわ!…ねぇホランさん、一つ提案があるのだけど。」


 パーナの姿を見たセイナはホランにこう告げた。


「ん?何だい?」



「貴女も含めて、この村の人達全員、私たちの仲間にならない?」



「貴様、それは…」


 セイナの提案にフィンセは反対しようとしたが、途中で口を噤んだ。フィンセはセイナが何を提案するのか分かっていたのだろう。そしてそれを引き留めるべきであると言うことも。だがしかし、ホランに助かって欲しいと思うフィンセの気持ちが引き留める言葉を口止めしたのだ。


「な、仲間?そ、それって一体…」


「ふむ…一応聞くだけ聞いておこうかね。」



「私たちは『魔女』、その旅の目的はこの腐った世界の破壊と再構築。『魔女』が普通に生きられる世界を創る事。そしてその中にはこの村の人たちのような差別されている女性を救済する事も含まれているわ。」


「そうだよ!こんな場所で怯えながら一生を過ごすなんて可哀想だよ!だから、皆んなで一緒にやろうよ!私はこの村の人たちもホランさんも助けたい!」


「貴女たちだって心の中ではムカついてたんじゃない?仲間が、家族が理不尽に奪われ、蹂躙されるこの現状に。もう奪われるのはお終い、今度は私たちが奪う番よ。さぁ私の手を取って。そうすれば貴女たちに力をあげるわ、世界とも戦える力をね。」


 そう言ってセイナはホランに手を差し出した。それを隣で見ていたルナーは何とも言えない表情で2人を見ている。


「ホ、ホラン姐さま…」





「ふふふ……あっはっは!!あぁ、すまないね。アンタたちの覚悟を笑ったわけじゃないよ。でも……そうかい……世界とねぇ……はぁ…何を言い出すかと思えば…アンタも私を助けようとしてくれてるって事はよく分かったよ。本当にありがとうね。」


 そう言ってホランは優しく微笑んだ。


「でもやっぱり、この手は取れないよ。この村を守り切って死んでいった私の母さまや、買われた先で死んでしまった姐さまたちや私の娘たちは皆んなこの村を守るためにその身を捧げたんだ。彼女たちを見送ってきた私にはそれを受け継ぐ義務がある。だから私も最期までこの村を守るよ。」


「…でもこのままじゃ村の女たちは皆んな不幸になる運命なのよ。大半は貴族に連れて行かれ、生き残っても40歳で死ぬわ。それでもいいの?」


「構わないよ。だからこそ、ここで過ごした期間が最期の楽しい時間になるように私たちは頑張ってきたんだから。」


 そう告げるホランの顔には数多の感情が籠っていた。誰よりも泣き、誰よりも悲しみを知っているホランの覚悟は半端なものではなかったのだ。



「でも…でも…」


「すまないね、頭が硬くて。私は死んでいった仲間たちに顔向けできない事はしたくないんだよ。」


「…そう…分かったわ。」


 決意の固いホランの様子を見てセイナとパーナは諦めようとしたが、隣で聞いていたルナーが口を開く。


「ね、姐さま……で、ですが……わ、私は……姐さまに死んで欲しくありません!!」


 そう言ってルナーはホランに抱きついた。


「ルナー…アンタ…」


 ルナーは涙を流しながら訴える。


「ね、姐さまがどれだけこの村を思ってきたのかは知っています!そ、その目も脚も逃げ出した村の子たちを庇って失ったものであると言うことも!で、ですが…ね、姐さまがいなくなったら私は…ね、姐さまを慕う皆んなはこれからどうやって生きていけばいいんですか!」


 ルナーは我慢していた気持ちを爆発させた。ルナーにとってホランは十数年を共にした無二の家族であり、かけがえのない存在なのだ。例え、村の掟に反していようとも、ずっと一緒にいたいとそう思っているのだ。


 そんなルナーを見てホランは優しく微笑む。


「ルナー、ありがとね。私もアンタの事を本物の妹のように思ってるよ。…でもその上で言わせて欲しい。これからはアンタが皆んなの母さまになるんだ。辛くて痛くて苦しい事もあると思うけど、その時は私の事を思い出して頑張りな。大好きな娘たちを任(・)せ(・)た(・)よ(・)。」


 そう言ってホランはルナーの背中を叩いた。


「ね、姐さま…ううっ!!」


 再び泣き出したルナーの背中を摩りながらホランは向き直る。


「そう言う事だ、すまないね。」


 そんな様子を見たセイナもどこか清々しい様子だ。


「いいえ、貴女の覚悟はよく伝わったわ。本当に尊敬するわ。」



「ありがとね。それじゃあ私は今から村の皆んなの所に行ってくるよ。もうあまり時間もない事だしね。」


「…ね、姐さま、私も一緒に。」


 そうしてホランとルナーは部屋から出て行った。





 残された9人だったが、緊張の糸が解けたように力が抜ける。


「はぁー、何だかすごく疲れたわね。」


「そうだね…特に精神的に疲れたね。」


「…振られちゃったわね。」


「そう…だね…」


 少し落ち込む2人だったが、そこにフィンセが口を開く。


「…ありがとう…この村の…母さまの命を救おうとしてくれて。」


「……ふん、そんなんじゃないわよ。村人全員『魔女』にすれば、戦力が増えると思っただけ。勘違いしないで、私はさっき会ったばかりの人たちなんてどうでもいいんだから…」


「ふん…お前は相変わらずだな…それでもありがとう。」


「……」

「フィンセ…」


「コホン!それよりも…カレスティア様、夜更かしは健康に良くありません。そろそろ就寝しましょう。」


「…うん。そうだね、今日はもう寝よっか。」


「賛成さね。どこかの変な侍との戦いもあったしね。」


「侍…そうか…うんうん…」


 嫌味を言われたにも関わらず、侍と呼ばれた嬉しさでフィンセは満足そうに頷いていた。



 しかしその時、ニューズが口を開く。


「皆さん、寝る前に私たちのこれからの作戦と方針を決めませんか?」


「そうね、私のコ(・)レ(・)の事もあるしね。」


 そう言ってセイナは胸に刻まれた焼印を指差した。


「凄く痛かったよね…大丈夫だった?」


「まぁ、ヌル(あの時)の拷問に比べれば全然マシね。…そうだわ、アンタ、傷が治せるなら焼印のついでに他の傷も治してよ。」


 セイナは欠損した指を見せながらフィンセにそう告げる。


「ふん…それは無理だ。」


「何でよ?」


「貴様の傷、具合から見て既に数ヶ月は経っているな?」


「だいたい3ヶ月前かしらね。」


「今の私の力で安全に時間を巻き戻すのは1ヶ月が限界だ。それ以上は肉体の無事を保証出来ん。肉体が時間の負荷に耐えきれずに爆散する恐れがある。」


「何よ、使えないわね…ならコッチだけでいいから早くやって。」


 そう言ってセイナは胸を開いて傷をフィンセに突き出した。

 しかしフィンセはその横柄な態度に少し苛立ちを覚えていた。


「……いいだろう。ふんっ!」


 フィンセは少しだけ悪い笑みを浮かべながら魔法を起動させた。


「ふぅ…これでこのクソみたいな印も……っ!…いぎゃぁあああ!!!」


 その瞬間、セイナが突然悶え苦しみ出した。


「セイナ!?」


 パーナを始めとした周りは心配そうに見るが、フィンセだけは満足げに笑っていた。


「おっとすまない。戻す時間を間違えてしまったようだ。貴様の胸に焼印を押された直後にな。」


 フィンセの言葉通り、セイナの胸の焼印は真っ赤に染まっており、今さっき押されたばかりのような痛々しさだった。


「ぁぁああ!!」


 セイナは激痛で絶叫しながらしばらく地面を転がった。


「はぁはぁ…アンタ…よくもやってくれたわね…絶対許さないわ…」


 セイナは大量の汗の滲んだ顔で、フィンセを睨み付ける。しかしフィンセは薄ら笑いを返す。


「おや、そんな事を言ってもいいのかな?その焼印を治せるのは私だけなのだぞ?もっと丁重に頼んだ方がいいのではないか?」


 そう言ってフィンセはセイナの焼印の近くを指でなぞる。


「くっ!…」


 セイナは悔しそうな表情を浮かべながらも何も言い返せない。


「ふっふっふ……はっはっは!いい気味だ!はっはっは!!」


 そんなセイナを見てフィンセは心の底から嬉しそうに笑っていた。


「フィンセ、流石にセイナが可哀想だよ…私からもお願い、ちゃんとセイナを治してあげて。」


 高笑いしていたフィンセはパーナの言葉を聞いて、豹変したかのように真剣な表情に戻る。


「はっ。かしこまりました、カレスティア様。」


 そうしてセイナの元に近づき、即座に胸の傷を治した。


「…最初からやりなさいよ。」


「カレスティア様の優しさに感謝するんだな。…それと先ほどは滑稽だったぞ。痛みで無様に転げ回る貴様の姿は。」


「…やっぱりアンタの事は嫌いよ。」


「安心しろ、私もだ。」




「ではセイナさんの問題は解決したとして、次の話をしましょうか。私たちの今後についてです。」


 ニューズのその言葉に皆が固唾を飲む。


「状況を整理しましょうか。現在、私たちは9人。そのうち、非戦闘員のパーナさんを除けば戦えるのは8人。このメンバーで私たちの目的である世(・)界(・)征(・)服(・)が可能だと思いますか?」


 ニューズの問いかけにフィンセが真っ先に答える。


「無理だ。」


「何故、そう思いますか?」


「単純に数が少な過ぎる。我々の宿願である『魔女』を中心とした社会を作るためには改めて『魔女(我々)』の恐ろしさを世界に広めなければならない。その為の人員が明らかに足りていない。」


「そうさね、いくらアタシたちが強いと言っても肉体的に限界はある。8人じゃ、良くて国一つってところかね。」

「く、国一つ!?そんな事が出来るんですの!?」

「メルク様、ご命令とあらば必ずや。」

「エナ、凄くスケールが大きな話になってきたね…」

「そうでございますね、エマ…」


「…『魔女狩り』として他国にも詳しいフィンセさんが言うのなら間違いないでしょう。」


「最低でもあと30人は欲しいところだ。それでようやく五分、いや4割ってところか…」


「30人?それならその辺の村を適当に襲って[ガチャ]すればいいんじゃない?」


「貴様、そんな横暴を私が許すと思っているのか?それに我々が殺しては、蘇った『魔女』は我々を恨み、敵となる恐れがある。」


「そんなのコイツらみたいに力で屈服させればいいじゃない。ねぇ?」


 そう言ってセイナはエマとエナの背後から肩に手を置いた。


「ひぃいい!!」

「はい!ご主人様の言う通りかと存じます!」


 2人の怯え切った様子を見てフィンセはため息を吐く。


「はぁ…ダメだ。恐怖で従えるには数人が限界だ。力を持った『魔女』たちはいつか必ずお前の寝首を掻くぞ。」


「へぇ…でも2人はそんな事しないよね?…ねぇ?」


 セイナは妖しげな笑みでエマとエナを見つめた。


「はぅっ!!……」

「あっ!エナ!大丈夫!?」


 トラウマを呼び起こされたエナはまた気絶してしまい、エマがそれを支える。


「あら、またやりすぎちゃったわね。反省反省っと。」



「とにかく、本心から我々に協力してくれる『魔女』30人、これがなくば世界征服は不可能だ。」


「そうですね。ではそのプランで行きましょう。その為にどうするのかですが…」


「帝国に協力を仰ぐと言うのはどうですの?あの国は『魔女』への過度な迫害を禁止していますし、皇帝陛下はかなり話の分かる方ですわよ。私も話した事がありますが、とても理知的で素敵な方でしたわ。」


 それを聞いて4人(セイナ、パーナ、ニューズ、アンリーザ)は顔を顰める。


「ええっと…それは…」

「アタシはまぁ…いいんだけど…」

「そうですね…私もやれと言われれば目を瞑りますが…」


 3人は不安そうにセイナの方を見る。


「もちろん却下。アルティード(あの変態クソ野郎)と手を組むなんて死んでもごめんよ。」


 セイナは笑みを浮かべながらそう答えたが、その目は全く笑っていなかった。


「だよね…ごめんねメルク。詳しい事は話せないけどそれは却下で。」


「…わ、分かりましたわ…」


「大体、アイツのどこが理知的なのよ。初対面の私にいきなりキスしてくるただのレイプ犯よ?逃げる私とパーナを宿屋までストーカーして来たし、拷問を受けて心身ともにボロボロの私の大切な指を2本も切った挙げ句、凄い勢いで背中を斬られたわ。あの時の痛みは今でも」


「はい、と言うわけで帝国と協力するのは却下でお願いします。」


 アルティードへの恨み節が止まらないセイナをニューズは無理矢理制止した。そしてそのまま話す。




「では私から一つ提案させてもらいます。【貴(・)族(・)】を(・)襲(・)う(・)と言うのはどうでしょうか?」


 ニューズの提案に皆が静まる。


「貴族を襲う?」

「貴族なんか襲ってどうするさね?」

「ま、まさか私のエンゲージ侯爵家を!?」


「違いますよ、善良な貴族ではありません。狙いは先ほどのような悪徳貴族です。」


 その言葉を聞いてフィンセの目の色が変わる。


「なるほど…奴隷を買い込んでいる貴族を襲い、その奴隷を解放する。そこで助けた奴隷の少女たちに我々への協力を仰ぐと言うことか。」


「はい、その通りです。さらに言えば、その貴族の財産や土地までも私たちが強奪出来ます。まさに一石二鳥と言えるでしょう。」


「なるほど、流石ニューズ。頭良いさね。」

「ほっ…エンゲージ侯爵家(ウチ)が悪い事をしてなくてよかったですわ…」

「貴族の領土や管理に関してはお任せください。言った教育を受けておりますゆえ。」

「エナ、暗殺だよ。」

「私たちの領分ですね、エマ。」


「ねぇ、貴族じゃなくて王族を襲うってのはどうかしら?例えば最近出来た帝国とかいう変態国家の皇帝とかさ」


「ターゲットは先ほどのデールズ侯爵ではどうだろうか?個人的な恨みだが、ホラン母さまを瀕死に追い込んだあの男を許してはおけんのだ。」


「そうですね、私たちもあの人とこの村には世話になってますから。」


「帝国の皇帝にしましょう。アイツは変態だから、どうせ妾という名の性奴隷がいっぱいいるわ。その子たちを助けるためにも…」


「よし、それじゃあターゲットはそのデーラズ?何とかに決定さね。」


「ねぇ、皆んな…皇帝とかは……………」


 アルティードへの恨みを晴らしたいセイナの個人的な意見は皆から無視され、セイナは少し残念そうにいじけてしまった。



「デールズ侯爵を襲うのなら今は最も好機なのではなくて?先ほどまでこの村にいたのでしょう?」


 そう言ってララメルクは侯爵が先ほど帰った方向を指差した。


「確かに…今すぐに襲ってしまうかい?」


「いや、それはダメだ。侯爵(ヤツら)が道中で死んだとなれば、この村が疑われてしまう。狙うは侯爵が自領に帰ってからだ。」


「なるほど、では後を尾けましょう。セイナさんがいれば我々は安全に尾行する事が出来ます。ですよね、セイナさん?」


「…ぶぅ……」


 皆から無視され続けたセイナはいじけて下を向いていた。


「はぁ…セイナさん、アルティード(あの男)への復讐は別の機会にしましょう。それよりも、尾行については」


「尾行なら10km先でも行けるわ。3日ぐらいなら魔力の痕跡を辿ることも出来るわ。」


 そう言ってセイナは片目を閉じてとある方向を指差した。他のメンバーは詳しくは知らないがそれが侯爵の今いる位置だと分かった。


「流石です。では今すぐに出る必要はありませんね。今日はもう休みましょう。」



「賛成よ、今日は色々と疲れたわ。…主に誰かのせいでね。」

「カレスティア様、今夜は私と添い寝していただけませんか?数年ぶりにお願いしたく…」

「えっ、別にいいけど…」

「いいわけないでしょ!パーナは私と一緒じゃ無いと寝れないの!だからアンタは1人で寝てなさい。」

「ふざけるな!今夜は私がカレスティア様と…」


「メルク、今夜襲ってもいいさね?そろそろ性欲が限界で…」

「何言ってますの!?いいわけないですわ!」

「大丈夫さね、優しくするから…」

「そう言う問題じゃ!」

「ご安心ください、メルク様の処女は必ずや私がお守りいたします。」

「へぇ…やっぱり処女だったんだねぇ…」

「ちょ!ピーレ!変な事言わないでくださいまし!」

「はいはい、3人とも早く行きますよ。」


「私たちは2人で寝ようね、エナ。」

「そうですね、エマ。」


 そうして9人は元の部屋に戻り、眠りについたのだった。










 次の日の朝、9人はホランに別れを告げに来ていた。


「母さま…今まで本当にありがとうございました…」


 フィンセは泣きながらホランの手を握る。この村をを出たらしばらくは帰ってこられない。即ち、あと数日の命であるホランとは二度と会えないのだ。

 フィンセにとってホランは両親の次に温もりをくれた恩人であり、本当の親のように慕っていた。そんなホランとの最期の別れで、フィンセの感情が爆発したのだ。


「はっはっは!泣くんじゃないよ。この世での私の最期のお役目なんだ。笑って見送って欲しいな。」


「…すみません…」


「…そうだ。コレを渡しとくよ。」


 そう言ってホランは懐からとある紙切れを取り出してフィンセに手渡した。


「コレは…」


「死ぬ前に皆んなに手紙を書いててね。村の皆んなの分はもう書き終わってるんだけど、フィンセの分は無かったから昨日書いたのさ。」


「母さま…」


「餞別だってのに、こんなモノしか渡せなくてすまないね。」


 この村には物資が非常に少ない。ホランももっと良い物を渡したいと思っているのだが、どうしても用意出来なかったのだ。その事情もある程度知っているフィンセは、申し訳なさそうにするホランの底知れない優しさに尊敬の念が絶えない。


「…いいえ…本当にありがとうございます。とても嬉しいです…ううっ…」


 そう言ってフィンセは再び涙を流した。それを見てホランはフィンセの背中を叩く。


「だから、泣くなって言ってんだろう!せっかくの美人が台無しだ。」


「すみません…」


「ふふ…それじゃあ最期に。」


 そう言ってホランはフィンセを優しく抱きしめる。


「最期にまた会えて嬉しかったよ、フィンセ。…ずっとずっと愛してるからね。」


「ううっ!!私もです!!ホラン母さま!!」


 フィンセは更に涙を流しながらホランを抱きしめ返した。




 2人はしばらくそのまま抱き合っていた。8人もそれを黙って見守っていた。そしてホランがようやく口を開く。


「フィンセ(この子)の事…どうかよろしく頼むよ。」



「…うん!もちろん!」


 パーナの笑みを見て、ホランも頷きながら笑みを浮かべる。そしてホランは最期にフィンセの背中を押した。


「いってらっしゃい!」


 そのホランの満面の笑みを見て、フィンセは涙を拭った。


「はい!行ってきます!」


 フィンセも最期にホランへ満面の笑みを返した。そうして9人は村を後にしたのだ。

[ガチャ]とは、魔法の有無を確認せずに無能力である事を祈って無差別に女を殺し、その全員にパーナの力で蘇生を試す事。女が無能力であれば【当たり】で『魔女』として仲間に出来る事からそう呼んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。