臨戦態勢
ガッツリ戦闘パートです。文字だけだと戦闘描写は分かりにくいので本作ではかなり避けてきましたが、ここでは避けて通れませんでした。
「アナタたち、知り合いなの?」
パーナと目の前の敵が名前で呼び合う様子を見たセイナは驚きの表情を見せる。
「うん…彼女は前に私と…」
ズンッ!!
パーナが話し終わる前にフィンセは既に走り出していた。その方向は真っ直ぐパーナに向かっていた。
「チッ!まだ話の途中でしょうが!」
セイナは再びフィンセを瞬間移動させようとするが、また魔力で防がれる。
「ぁあもう!めんどくさい!アンリ!ニューズ!」
「誰だか知らないけど、やらせないさね!」
「はぁ!」
パーナの元に向かってくるフィンセに対して、アンリーザとニューズが迎撃すべく魔法を放つ。
キィイン…
しかしアンリーザの熱波とニューズの斬撃はフィンセの身体に触れる直前にどう言うわけか跳ね返された。
「な、何さね!?」
「くっ!そう言う事ですか!」
2人は跳ね返された自身の攻撃を同じ攻撃で相殺した。しかし相殺に気を取られた事で隣を簡単に抜かれる。
「やらせないよ!」
「やらせません!」
今度はエマとエナがパーナを庇うように前に出る。そしてエマは右手、エナは左手を前に出して魔法を発動させようと……
「えっ!」
「ま、魔法が出ません!」
しかし何故か2人は魔法を使う事が出来ない。
2人が狼狽している間にフィンセは華麗なステップでパーナの横につける。
「う、うわぁ!」
「カレスティア殿、お覚悟を!」
フィンセはそう言って踏み込みながら腰の刀を抜刀した。
「そうはいきません。」
フィンセの刀がパーナを捉える直前、シピーレがフィンセの刀を自身の小刀で受け止めていた。
「邪魔だぁ!」
「くっ!」
しかし小刀でフィンセの一太刀を受け止める事は出来ず、シピーレは小刀を弾き飛ばされ、そのまま胸を逆袈裟に深く斬られた。
「ぴ、ピーレ!」
ララメルクが驚いている隙にフィンセはもうパーナの目の前まで来ていた。
「フィ、フィンセ!私は!」
「貴女さえいなければ、誰も悲しまずに済むのだ!だからここで死んでくれ!」
そう言ってフィンセは刀を上段に振り上げた。
「やらせるわけないでしょ、はぁっ!」
ドガッ!!
「ぐっ!」
刀を振り下ろすその直前、フィンセは左頬を殴られ、体勢を崩した。
殴ったのはセイナだ。
「調子に乗るんじゃないわよ、反射女。」
セイナは殴られて膝をつくフィンセを見下ろしながらそう告げた。
「……」
フィンセは口から血を流しながらセイナを睨みつける。
「隙ありでございます!」
そしてフィンセの隙を見逃さなかったシピーレは既にフィンセの背後で小刀を振り上げていた。回避不可能な完璧なタイミングで振り下ろされたシピーレの一刀で勝負が決まるかと思ったその瞬間、フィンセの身体から魔力が放出される。
ブゥゥウウン!!
「!?」
刀を振り下ろしたシピーレは困惑する。目の前にいたはずのフィンセがいつの間にかいなくなっていたのだ。
「今のは何さね!?」
「ど、どこへ!?」
近くで見ていた他の者たちもフィンセがどこに行ったのか気付いていなかった、ただ1人を除いては。
「へぇ…何となく分かったわ、アンタの能力。…【巻き戻し】ってとこかしらね。」
セイナがゆっくりと振り返るとそこには無傷のフィンセが下の場所に立っていた。
「やはりこれだけの『魔女』を同時に相手するのは少し骨が折れる…」
フィンセは少し困ったような表情で刀を鞘に収めた。
「私も『魔女』と戦うのは初めてだわ、敵にするとこんなにも面倒くさいのね。ふんっ!」
シュンッ!
その瞬間、セイナはフィンセの眼前に瞬間移動した。しかしフィンセは微塵も動じない、2人はその場で目を合わせて睨み合う。
「何のつもりだ。」
刀に手をかけながらフィンセは語気を強めてそう言い放つ。それに対してセイナは薄ら笑いを浮かべる。
「ねぇ、私とタイマン張らない?報酬は私たち全員の命って事で。」
セイナはいきなりとんでもない事を言い出した。
「はぁ!?セイナ、何言ってるさね!?」
「セイナさん、どうしてわざわざそんな事を!」
「そ、そうですわ!勝手に私の命を賭けないでくださいまし!」
「ご安心ください、メルク様の代わりに私が2回死ねばよいのです。何なら10回でも100回でも代わりに…」
「エナ、どうしよう…」
「エマ、セイナの言葉は絶対…でございます。」
「……」
それを聞いていた6人は驚愕の反応を示すが、パーナだけは何も言わない。
「ああー、そこうるさい!ちょっとは私を信用しなさいよ。」
「無理さね、だってこの前、アルティードにボコボコに負けただろう。」
「そうですね、セイナさんは魔法が使えなかったら、ただの貧弱女ですから。」
「出会ったばかりの方に命を賭けられるはずありませんわ!さっさと撤回してくださいまし!」
「ご安心ください、メルク様。セイナ様が負けても私がいます、メルク様だけは必ずお守りいたします。」
「エナ、ご主人様負けちゃう?」
「エマ、どうでしょうか。ですがもう死にたくはありません。」
「って、アンタらねぇ…私ってそんなに信用ないのかぁ…ちょっとショック。」
1人で落ち込むセイナを無視してフィンセが口を開く。
「私は構わん、それにそこにいる6人の命を差し出す必要はない。貴様を殺した後に私が自由に殺させてもらう。だから条件を変更だ、貴様が負けた際に差し出すモノは【カレスティア殿ただ1人】だ。」
それを聞いたセイナの目の色が変わる。
「はぁ?さっきもだけど、何でそこまでパーナに固執するのよ。何か恨みでもあるわけ?」
その時、フィンセはため息を吐き、少し悲しそうに下を向いた。
「恨みなどない、むしろ彼女は私の命を救ってくれた恩人だ。だが…私はこの世界のため、君たちを含めた全ての『魔女』を救済するために、その元凶であるカレスティア殿を殺さねばならない。だから邪魔をするな!」
その瞬間、フィンセは腰を低くし臨戦態勢に入る。そして魔力を解放し、殺気も爆発させた。その魔力は澱みなく全身を突き刺す針の様な鋭利さだ。
「ふん!アンタの過去に何があったのかは知らないわ。でも私の大切な人を殺そうって言うのなら放ってはおけないわね。いいわ!やってやろうじゃないの!!タイマン成立ね!!」
セイナも両手を広げて臨戦態勢に入る。そして魔力を解放し、殺気も爆発させた。その魔力は荒れ狂う海のようで全てを飲み込む様な膨大さだ。
こうして2人の本格的な戦闘が幕を開けるのだった。
次回はフィンセの過去編です。




