魔女になった私
処刑された女ともう1人の女の出会いから始まります。
ゴンッ!!
《痛っ!!》
2人の頭がぶつかり、痛みから声がハモる。
「もう…痛いじゃ無いの…って…貴女誰?」
女は額を抑えながら目の前の女に問いかけた。
「いたた…はっ!おはよう!!気分はどう!?」
女は問いを無視しながら、顔を近づける。
「近い近い……ん?ていうか私なんで生きてるんだ?さっき首をチョンパされて……」
首を抑えながら辺りを見渡すと、そこは森の中だった。
「そんな事は後でいいから!!とにかく私を助けて!!早く早く!!」
そう言って後ろを指差しながら女の肩を揺さぶる。
「あまりにも混乱甚だしいのですが…その様子だと、誰かに追われている感じですか?」
「うん!そうそう!!だから早く、遠くまで逃げましょう!!私を連れてって!!」
「どうやってですか…私に魔法は使えませんよ?」
魔法とはこの世界に存在する力だ。生まれつき一人ひとつの魔法を行使できる。しかし中には一つも魔法を使えない人間も存在しており女はそれに該当する。
「大丈夫!!私が使えるようにしたから!!だから、早く集中して!!目を閉じて遠くを思い浮かべるの!!早くぅ!!」
「はぁ?何言ってるんですか…魔法が譲渡出来るはずが……チッ、まぁ分かりましたって。はぁ…めんどくせぇ…」
あまりにもしつこいので、女は言われた通りに目を閉じて両手を前に出した。すると女は初めての感覚に襲われる。両手を伸ばした方向の地形が感覚で分かるのだ。
「えっ!!何これ!!」
「はーやーくぅ!!」
「あぁ!!もう、うるさいうるさい!!今やってるから!!」
そうして女が再び集中すると、さらに遠くまで見えるようになった。
「適当な場所に飛ぶの!!急いで!!」
「飛ぶ!?……よく分からないけど、こんな感じかな!?」
その瞬間、2人の姿が掻き消えた。
ドカッ!!
「痛っ!!」
「グヘッ!!」
2人は2メートルほど上から地面に落ちた。
「イタタ…酷い目に……って、私今何を!?」
「ふっふっふ……凄いでしょ…これが私の力よ!!恐れ慄きなさい!!」
そう言って得意げな女を無視して、周りを見渡す。
「すごいわ!!私にも魔法が使えるのね!!昔から少し憧れてたの!!すごいすごい!!」
女は辺りの情報を手に入れるついでに能力を確認し、子供のようにはしゃぎ回った。
「うんうん。これからは私の事を主人として崇めるといいのよ!!」
「あ、それは遠慮しとくわ。それよりも、私は何で生きてるの?ここはどこ?貴女は誰?この能力は」
「ちょちょちょ、いっぺんに答えるのは無理だって!!一つずつにして!」
「そうね…いきなりで少し混乱していたわ、ごめんね。…それじゃあ先ずは名前から。私はセイナ・サンクルス。」
「私の名前はリパーナル・カレスティア、よろしくねセイナ!!」
「ええ、リパーナル。」
そうして2人は握手を交わした。
「それで、リパーナル。ここは一体どこなの?」
「知らなーい。王国の辺境の森って事しか分かんなーい。」
王国とは、大陸の6割を占める超巨大国家の事である。数年前に新国王が即位し、その王の謎の力で周辺国家を次々と屈服させ、ここ数年で急激に勢力を拡大している国だ。
「ふーん…それで?私は何で生きてるの?私はギロチンで処刑されたはずよ。首どころか身体の怪我まで完治してるわ。貴女が何かしたのね?」
「ええそうよ!確かに貴女は先ほどまで生首だけの死体だった。だから私が蘇らせたのです!」
リパーナルの言葉を聞いてもセイナはピンと来ない。
「は?蘇らせる?そんな事が出来るはずが……いや、昔聞いた事がある。古の『魔女』は死者を復活させる事が出来ると!!まさか、貴女は!!」
『魔女』とはこの世界における禁忌の存在である。魔法の中でも特段に強力な【空間操作】と【時間操作】を操る人間の事をそう呼ぶ。『魔女』は1人で国家を相手に出来るほどの、そのあまりの能力の高さに、存在を許されておらず、見つかれば即打首となるのだ。
「ざーんねん、違うよーん。私は『魔女』じゃないよ。」
リパーナルはふざけた身振りでそう告げた。
「でも、こんなことが出来るのは『魔女』しか…」
「ふっふっふ…ここで一つ貴女に嬉しいお知らせがあります。はい!注目!!」
リパーナルはそう言って右手を挙げた。
「な…何よ…」
「実はねー、さっきので気付いたかもしれないけど、『魔女』は私じゃなくて〜、貴女なの!私の魔法は【死者を『魔女』として蘇らせる能力】なのです!!」
その衝撃の告白を聞いたセイナだったが、信じようとしない。
「何言ってんのよ、私は無能力なのよ?後天的に魔法が使えるようになるなんて聞いた事が……あ」
セイナは思い出した。ついさっき自身の意思で魔法を使った事。そして今なお身体に溢れる力の大きさを。先ほどまでは生き返った混乱で気付いていなかった、だが冷静になって漸くそのことを実感する。
「……へ……わ…わたしが……ま、魔女……あ…あはは………ほ、ホントに?」
「ホントホント!!だってさっき【空間転移】使ったよね!ね!」
事の重大さに気付いたセイナは更に固まる。
「わ…わたし…わたし…わたわた………あははははは…」
「そう言うワケで、これからよろしくねセイナ!!」
そう言ってリパーナルは混乱するセイナに抱きついた。
本作における魔法についてですが、生まれつき肉体に刻まれたモノで、後天的に獲得する事は基本的にありません、リパーナルが超特殊事例(世界に1人)です。【術式】や【個性】の様なモノだと思っていただいて結構です。蘇生に関してはおとぎ話レベルですが、存在する事は知られています。
次回はセイナの過去について少し触れます。




