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新たな出会い

謎の女騎士に助けられた4人のその後から始まります。






「うぅ……ここは…どこですか…」


 目を覚ましたニューズは辺りを見渡した。そこはとある室内で、自分の腕に繋がれている点滴を見るに、病室である事が分かる。


「あっ!ニューズ!!おはよー!」


 ニューズに手を振りながらパーナが笑顔で走ってくる。


「おはようございます、パーナさん。ここは…それに私は…」


 ニューズは失った右手を見ながらそう呟いた。


「ここは『アインス国』の病院!!ニューズも私もアンリも皆んな生き残ったの!!」


 それを聞いてニューズは戸惑いを見せる。


(『アインス国』!?……何があったかは分かりませんが、とりあえず私たちが『魔女』である事だけは絶対に隠さないと…)


 ニューズは近くで眠り続けるアンリとセイナを見ていた。

 すると部屋の隅で座っていた女が立ち上がってコチラへ近づいてくる。


「ふぅ…やっと2人目が起きたな、パーナ。」


 その女はパーナの後ろからニューズを見つめる。


「はい!()()()()さんのお陰です!!」


 パーナは嬉しそうに感謝を告げる。


「私は何もしてねぇ。ただアンタらを運んで来ただけ、治療したのはあのヤブ医者だ。そんじゃあ、私は仕事があるから帰る、またな。」


 そう言ってネルヴァはポケットからタバコを取り出して病室を出て行った。


 その女が出て行ったのを確認した後、ニューズが口を開く。


「ねぇパーナさん、あの人は一体誰なんですか?


 いきなりの出来事で混乱しているニューズはパーナにそう質問した。


「あの人はネルヴァさん。私たちを助けてくれた人だよ!」


「助けてくれた?それはあの(アルティード)からですか?」


 その問いにパーナは首を横に振る。


「ううん、あの男に生かされた私たちは森に捨てられて死にかけてたんだけど、偶々通りがかったネルヴァさんにセイナが交渉してくれたんだって!」


「なるほど…つまりあの方は私たちの命の恩人という事ですね。」


「うん!それに私たちの怪我が治るまで面倒見てくれるって!セイナとアンリーザは本当に危なかったからよかったよ!」


 それを聞いてニューズは隣で眠る2人に目をやる。2人は眠っており、特にセイナは全身が包帯だらけで顔も赤く、呼吸も荒い。かなりの熱がある様子で、ずっと苦しそうにしている。


「…私も腕を切られて少し落ち込みましたが、セイナさんに比べれば全然軽傷ですね…すみません、大事な時にお役に立てなくて。」


「それは私も同じだよ。結局最後はセイナに頼っちゃった…そのせいでまたセイナが無理してこんな目に…」


 パーナはそう言ってセイナの顔を優しく触った。





「あぁあ!!何やってるの!!勝手に病人に触らないで!!」


 その瞬間、部屋の入口から知らない女の声が響く。パーナはその声でびっくりして飛び跳ねた。


「うわぁあ!ご、ごめんなさい……って………貴女誰?」


「ふんっ!見知らぬアンタたちに答える義理はないわ!」


 その女はそう言ってズカズカと近付いてくる。女は少し小さめで、その雰囲気から15.6才前後だと思われた。その女の格好をよく見ると、看護師がよく着ている様な真っ白な服だった。その格好に見覚えのあったニューズは女へ質問する。


「ええっと…貴女は…ここの看護師さん?ですか?」


「はぁ?当たり前でしょ!!それ以外何に見えるっていうのよ!」


 女はベッドにいるニューズを無視してパーナの元まで行く。


「アナタねぇ!先生から、患者さんには何もしないでって言われてるの!!だから勝手に触ったりしないで!!」


「うぅ…ご、ごめん…」


「ふんっ!これだから素人は困っちゃうわ。これで何かあったら()()私が先生に怒られちゃうんだから…」



()()()()くん、患者さんの前では大声は出さないでって何度言えば分かるんだい?」


 その時、病室の扉から1人の男が現れた。白衣を着たその男は外見は30代くらいで、笑みを浮かべてはいるが内心では怒っているように見えた。

 それを見た看護師の女は焦り顔を見せる。


「せ、先生!!違うんです!この人が先生の言い付けを破って!」


「言い付けとは何かな?」


「患者には何もするなって私に言ったじゃないですか!!なのにこの人は患者さんの顔をペタペタ触ったんです!」


「そ・れ・は!!君に言ったんだよ?君が患者に何かすると、何をやらかすか分かったモノではないからね!!それに彼女たちも患者さんだ、お客様である方々にそんな態度を取って良いと思っているのかね?」


「だ…だって…」



ゴツン!



 その時、男が看護師の女の頭に拳骨を落とした。


「だって、じゃない!!君は何度言えば分かるんだ!!」


「うぅぅ…すみません、先生……」


「はぁ…君に悪気がないのは分かっているのだけどね…だからこそタチが悪いよ。また、君の()()()()に報告しておかなくちゃ。」


 【姉】という言葉を聞いた瞬間、女の顔が真っ青になる。


「せ、先生!!それだけは勘弁して下さい!!もうお姉ちゃんに怒られるのは嫌なんですぅ!!」


 女は男にみっともなく縋りつき、許しを懇願する。


「ダメだ。しっかりと反省しなさい。」


「うぅ…うわぁああん!!」


 そう言われて泣き出した女は走って病室から出て行ってしまった。


「ああ!コラ!!まだ話は!……はぁ…少し言い過ぎたかな…」


 医者と思われるその男はバツが悪そうな顔になった。


「…コホン。さて、見苦しいところを見せてしまいましたね、申し訳ない。それより気分はどうですか?君たちはそっちの2人に比べて軽傷だと思いますが…」


 そう言って医者はくたびれた笑みを浮かべる。


「切られたところは少し変な感じですが、それ以外は問題ありません。本当にありがとうございました。」


「私も大丈夫!それよりあの子、ほっといていいの?」


「…そうですねぇ…まだ仕事も残っていますし、連れ戻したいところではあるのですが…何せあの子は頑固なので、一度ああなったらもう無理です。はぁ…本当に困った子だ…」


「もしかしてあの子は貴方の娘さんですか?」


「いいえ、違いますよ。新人の看護師です、どうしてもと頼まれたのでウチで雇っているのですが…何というか…どうにもポンコツで…」


「へぇ…そうなんだ。」


「はい…根はいい子なんですが、何せ命に関わる仕事なので厳しく接してしまって…あの子が嫌になってしまわなければ良いのですが…」


「よーし!それなら私たちが話を聞いてくるよ!!ここにいても暇だしね!!」


「わ、わたしもですか!?」


「そう!ニューズも!!いいから行くよぉ〜!!」


 そう言ってパーナはニューズの左手を取って引っ張っていく。


「わ、わかりました!行きますよ!」


「2人ともありがとう、是非よろしく頼むよ。」


「はーい!」


 そうして2人は病室を出て行った。




「ああは言ったものの…どこに居るのかなぁ…」


「あっ!!あれではないですか!?」


 病院の中を少し探したところ、ニューズが先ほどの女を見つけた。女はとある部屋の隅でうずくまって座っていた。


「おーい!!看護師さーん!!」


 それを見つけたパーナは女の元へ走っていく。


「うぅ………な!アナタはさっきの!!」


「ねぇねぇ!こんなところで何やってるの!?先生が心配してたよ?」


「う、うるさい!私が何をしてても私の勝手でしょう!」


「そりゃあそうだけど…」


「大体!アンタが変な事するから私が先生に怒られちゃったじゃない!!」


「う!それは…ごめん…」


「ふんっ!そうよ!全部アンタの……」


 その時、女は何かを思い出したかのように口を閉じて下を向いた。


「ん?」


「いいえ、人のせいにしちゃダメよね…ごめんなさい。私、またやってしまったわ…うぅっ…」


 そう言って女はまた泣き出してしまった。


「わわわ…大丈夫?私のせいだよね…ごめんね…」


 パーナは女の頭を撫でる。


「うぅ…私はもう子供じゃないもん…立派な大人だもん…」


 女は嫌そうにしながらも満更でもない様子だった。後ろで見ていたニューズもパーナの手に左手を重ねる。


「そうですよ…だから、もう戻りましょう。立派な大人は簡単に仕事から逃げ出しちゃいけません。」


「…分かった……ありがと…」


 女は涙を拭って、顔を赤くしながら2人にそう告げた。


「うん!!どういたしまして!!それより、貴女の名前を教えて!私はパーナ!コッチはニューズ!」


 女は立ち上がりながら、胸を張って答える。


「…私は()()()()()()()()()()。ノイファでいいわ。」


「うん!よろしくね、ノイファ!!」


「私もよろしくお願いします。」


 パーナとニューズは手を差し出した。しかしノイファは腕を組んでそっぽ向く。


「…ふんっ!別に私はよろしくしなくてもいいんだから!あくまでも仕事なんだから!」


「でも、よろしくね!!」


 パーナはそう言ってノイファに抱き付いた。


「ちょ!アナタ!いきなり何するのよ!!」


 ノイファは顔を赤ながら慌てふためく。


「だってぇ…ノイファが手を出してくれないからぁ…」


 パーナは悪い笑みでノイファを見上げる。それを見てノイファは更に顔を赤くする。


「…し、仕方ないわね…そんなに私と仲良くしたいのなら…しょうがないわ!」


 そう告げるノイファの顔は少しニヤけていた。


「…チョロい……」


 傍観していたニューズは小さな声でそう呟いた。





「先生ー!!戻ったわ!!」


 ノイファは勢いよく病室の扉を開ける。その後ろからパーナとニューズも病室に入る。


「ノイファくん、病院では静かに。」


「あっ…すみません…」


「それよりも仕事が溜まっていますよ。先ずは待合室の掃除からです。」


「はい!分かりました!先生!!」


 そう言ってノイファは元気に部屋を出ていった。


「頑張ってねぇ!!」


「ノイファさん、あまり走ると危ない」


 ベチッ!!……


「……いでっ!」


 部屋を走って出たノイファは盛大にコケた。しかし何事も無かったかのように走って行ってしまった。


「…だから言ったのに…」


「はぁ…あの子は張り切るといつもこう空回りしてしまいますね。…ですが、元気になってくれて良かったです。ありがとうございます、2人とも。」


 そう言って医者は2人に感謝を告げた。


「いえいえ、私たちは何も。」


「そうそう!ノイファだってやる時はやるんだから!」


「…あんなに元気なあの子は久しぶりに見ました。貴女たちのおかげですね…本当にありがとう。それと、もし良ければここに居る間は少しでもいいからあの子と仲良くしてあげて欲しいんだ。」


「もちろん!!先生に言われなくてもそのつもりだよ!」


「ええ、私も同年代の女の子は初めてなので是非仲良くしたいです。」


「そうか…よろしく頼むよ。」




〜同刻、『アインス国』の大聖堂〜


「久方ぶりであるな、()()殿()。」


「うむ…そうじゃのう…オムリスよ。」


 オムリス(『魔女狩り』最高幹部【四神】の1人)は数十人の配下を引き連れ、教皇の前に立った。


「部隊の調整に少し手間取りましてな、少し遅くなった。」


 オムリスは教皇の腰掛ける席の前に用意されたソファに座る。


「よいよい…未だに我が国に被害は出ておらん。それよりも其方たち『魔女狩り』の派遣、非常に心強く思う。」


「王都周辺に出現した『天撲』『閃絶』『熱獄』の3匹は非常に活発で危険な『魔女』だ。早急に駆除する必要がある。」


「そうじゃな…じゃが、オムリスよ。ちょうど先ほど、隣の大都市『ヌル』から面白い知らせが届いたのじゃ。お主にも教えておこう。『ヌルの英雄』都市長の若造(アルティードゼクス)が4人の『魔女』を()()()()()と報告があった。」


「何だと!?4人!?それはまさか…」


「うむ、おそらくじゃが先ほどお主が挙げた3匹が含まれているじゃろう。其奴の話では『ヌル』に送り込まれた『魔女狩り』と協力して4人を討伐したと。しかしその戦闘で『ヌル』に送り込まれた『魔女狩り』は全員殉職したそうじゃ。その中にはガネールも含まれると。」


「ガネール殿が!?敵はそれほどに…」


「うむ、死体は【全て原型を留めない程に焼け焦げた状態】だったそうじゃ。おそらく『熱獄』の仕業じゃろうが、死因を確認する事すら困難であった。」


「そうであるか………」


 オムリスはそう言って少し悲しそうに下を向いた。


「……『熱獄』は『天撲』『閃絶』と仲間のはず、であればターゲットであるその3人は既に討伐されたと考える。もう一匹は誰か知らぬが、まぁいいだろう。ならば、私がここに居る理由はないな。王都へ帰還する。」


 オムリスはそう言って立ち上がり、部屋から出て行こうとした。しかしその時、教皇が口を開く。


「まぁ待てオムリス……ここからが本題なのじゃ…その『ヌル』じゃがな…先日、『王国』から独立しよった。」


 それはオムリスからしても青天の霹靂だった。


「何だと!?初耳だ!」


「都市長のアルティードゼクス・サクラを皇帝とした、『ソメイ帝国』とやらの建国を宣言したのじゃ。」


「ふむ…『ヌル』が独立…まぁ、突拍子もない話ではない。あの都市は元々王国と敵対しており、あくまでも同盟関係を結んでいたに過ぎない。あの都市長の力を持ってすれば、独立とて容易いだろう。」


「そうじゃ…じゃが何を思ったか、あの若造は我々『ラバス教』を全面的に敵視し、帝国内では布教活動の一切を禁じるとの声明を発表したのじゃ。それと同時に『魔女』に対する過激な暴力を非難するとな。」


「な!!何故そんなふざけた事を!?」


「さあな…ワシらにはその真意は分からん。じゃが、『帝国』が『ラバス教(我々)』と敵対するのは確定した。いずれ戦争になるやもしれぬ…」


「そうであったか…いざとなれば王都にある我々の本隊を力を貸そう。おそらく陛下は帝国の事など興味もないだろうからな。」


「その時はよろしく頼むぞ…」


「…そういえば先程の4人の『魔女』について、教皇殿は死体を確認したのか?」


「…そうなのじゃ…実はワシも死体を直接確認したわけではない。『魔女』に関する情報は全て『ヌル』からの一方的な報告のみ、その『ヌル』が我らに敵対した以上、今やその情報の信憑性は皆無じゃ。故にワシはその真偽を確認するため、『ヌル』に部下を潜入させ、真偽を探らせたがダメじゃった。送り込んだ者達は誰も帰って来なかった。おそらく都市長(ヤツ)に消されたな。」


「では、送られて来たという『魔女狩り』の死体も!!」


「うむ…死因を悟らせないような不自然な焼死体。本当に『熱獄』の仕業かも分からんのじゃ。」


「クソッ!!あの男め!!ふざけるなよ!!」


 オムリスはそう言って机を蹴り飛ばした。しかし教皇の表情は一切変わらない。


「落ち着け、オムリスよ。まだヤツが黒と決まったわけではない、それに薄汚い『魔女』どもがまだ生きているとするなら、逆にチャンスでもある。我々で奴らを討伐し、『ラバス教』の意を示すそうではないか。」


「無論だ、『魔女』もそれを庇う皇帝(都市長)も、私が全員滅ぼしてくれるわ!」


 オムリスはそう言って部屋を出て行った。

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