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全ての魔女にはその能力の特徴から二つ名が付けられます。主にその魔女が殺した人間の死体などから能力を予測し、命名されます。
〜王国の中枢〜
巨大な円卓の鎮座する部屋、そこに4人の男女と1人の老人がいた。
「栄光ある『魔女狩り』最強の【四神】の諸君、今日は集まってくれて感謝する。王国の秩序を守る君たちは…」
「おいおっさん、くだらねぇおべっかは良いからさっさと本題に入れや。退屈で寝ちまうぜ。」
「ガネール殿の言う通り。用件のみ、さっさと伝えてくだされ。」
「私は構いません事よ、大体男どもはいつもせっかちでいけませんわね。もっと私のように落ち着きを持ちなさいな。」
「……」
最後の女は何も話さずにずっと下を向いていた。
「では手短にお話ししましょう。最近、特に活発に行動している『天撲の魔女』と『閃絶の魔女』、そして新たに発見された『熱獄の魔女』についてご存知ですな?」
「『天撲の魔女』っていやぁ、王都で大暴れした後、リスパ領の『魔女狩り』をぶっ殺し、田舎町の『ダブ』を焼き払ったとかいうヤツか。」
「『ダブ』の焼け跡は凄まじかったと聞いてますぞ。住民の半分近くが死亡、特にマフィア【メフィスト】関連の人間は1人残らず惨殺されていたそうですな。」
「全く、反吐が出るほどに醜悪な事件でしたわ。早く処理しないと被害はドンドン拡大していきます。」
「……」
「その通りです。『魔女狩り』の皆様には特に危険度の高い『天撲の魔女』、『閃絶の魔女』、『熱獄の魔女』この3名の殲滅を最優先に動いていただきたく思っております。つきましては、ヤツらが次に向かう可能性の高い4つの地域、大都市『ヌル』、小国『アインス』、港町『ツヴァイ』、『ドライ』高原へ戦力の派遣をお願いしたく。」
男はそう言って4本指を立てた。
「なら俺は『ヌル』だ。本拠地からも近い。」
「では私は『アインス』で、あの国とは少し付き合いがありますからな。」
「私は『ツヴァイ』ですわね、『ドライ』高原は田舎過ぎて行く気になりませんわ。お肌にも悪いですし。」
「……」
「では、【青龍】ガネール様が『ヌル』、【朱雀】オムリス様が『アインス』、【白虎】フィンセ様が『ツヴァイ』、【玄武】ララメルク様が『ドライ』高原、という事でよろしいですな。皆様、ご武運を。全ては世界の安寧の為に。」
〜『ダブ』近くの草原〜
「セイナさん、アタシとセッ○スして欲しいさね。」
「は?何言ってんの、頭おかしくなった?」
アンリーザからのいきなりのセクハラにセイナは疑問の顔を見せる。
「仕方ないさね、昨日まで毎日毎日何人もの客を取っていたさね。それをいきなり禁止されたら性欲も溜まるさね。」
「そんなの知らないわ、その辺で1人でやってればいいじゃない。ニューズみたいに。」
「な!セイナさん!何故その事を!!」
「夜な夜な1人でどっか行ってるのを見てたからね。まぁ、毎晩毎晩よくやるわぁ…」
「も、もう…酷いですセイナさん……」
ニューズはそう言って顔を真っ赤にして座り込んでしまった。
「ニューズちゃんはむっつりスケベさね、でも流石にニューズちゃんは若過ぎてアタシの射程圏外さね。セイナさんなら全然イケるんだけどねぇ…」
「私だってまだ10代なんですけど。」
「へぇ!意外さね!てっきり同い年くらいと思ってたからねぇ!」
「よし、殺す。」
そう告げるセイナの笑顔の裏には明確な殺意が籠っていた。
「はっはっは!冗談さね、それにセイナちゃんの場合は大人っぽい女性っていう意味さね。」
「歳下だと分かった瞬間に呼び捨てなのね…もういいわ。」
「ねぇねぇ、皆んな何の話してるのー?」
3人のくだらない話にパーナが首を突っ込んで来た。
「パーナは知らなくていいの、貴女はそのままが1番可愛いんだから。」
「わーい!セイナに可愛いって言われたぁ!セイナ大好きー!」
そう言ってパーナはセイナに抱きついた。セイナは満更でもない顔をしながらパーナを膝の上に乗せて頭を優しく撫で始めた。
「2人は仲良しさね…仕方ない、次の町で適当な男でも探そうかねぇ…」
「ねぇねぇセイナ!次はどこに行くの?」
「うーん…この辺は私もあんまり知らないわね。ニューズ、そろそろ帰って来て。」
「は…はい…ただいま戻りました。」
「おかえり。早速だけどニューズ、次はどこへ行く?貴女の意見を聞かせて。」
ニューズはこの中で最も賢い、そして周辺の地理についても熟知している。
ニューズは少し考えた後に話し始める。
「そうですね…ここから近い場所は4つ、大都市『ヌル』、小国『アインス』、港町『ツヴァイ』、そして『ドライ』高原です。
『ヌル』は王都に次ぐ大都市で、人口もかなり多いです。なので仲間を増やすという意味では最適でしょう。しかしその分、警備も厳重ですので危険度は高いです。
『アインス』は『ヌル』の半分ほどの規模の国です。そして王国の属国であり、『白の始祖』のみを絶対神とする『ラバス教』を進行する宗教国家です。『ラバス教徒』は『黒の始祖』の使徒と言われている私たち『魔女』をこの世界の絶対悪と定め、激しく迫害しています。私としてはあまり行きたくない国です。
『ツヴァイ』は王国北部にある港町です。商業が非常に盛んで、他国の商人などが多くいます。世界征服の為の情報収集という面では避けては通れぬ町かと。
『ドライ』高原はその名前の通り山岳地帯に存在する村々の事を指します。ここの村人たちは非常に閉鎖的な生活をしていると聞きました。ここは人口も少ないですし、行くのもかなり大変なのであまり行くメリットはないかと思います。
ざっとこんな感じですかね、私としては『ヌル』か『ツヴァイ』へ行くべきかと。」
「因みにここから近いのはどっち?」
「『ツヴァイ』ですね。『ヌル』と比べて倍ほどの差があります。」
「なら『ヌル』にしましょう。私たちがここまで大胆に動いて、先回りしないほど敵はバカじゃないわ。近いところは敢えて避けましょう。」
「賛成です、では行き先は大都市『ヌル』で!」
「はーい!」
「それより少し休みたいさね…昨日からずっとヘトヘトなのよ…」
「それは貴女がバカみたいに魔法を使うからでしょ?町ごと焼き払うなんて、どう考えてもやり過ぎよ。」
「仕方ないさね…アタシはもう我慢しないって決めたからねぇ…はぁ…倦怠感が凄いさね…」
「文句ばっかり言ってないでさっさと行くわよ。もうすぐ日暮だから、そしたらゆっくり休みましょう。」
そうして4人は次の目的地、『ヌル』へ向かったのだった。
〜『ヌル』の都市庁舎〜
都市庁舎最上階の会議室では2人の男がテーブルに着いていた。1人は腕と足を組んでふんぞりかえっており、もう1人の優男は正しい姿勢で席に座りながら紅茶をすすっていた。
「なるほど、この町に来るかもしれない『魔女』に備えてアナタ方『魔女狩り』がいらっしゃったという事ですね。」
「ああ、この俺が態々来てやったんだから感謝しろよ?『魔女狩り』最強の【四神】であるこのガネール様がな。」
その言葉を聞いても優男は全く動じない。
「そうですか、まぁ国王陛下の命令であれば仕方なく合意しますがね。ですがこれだけは言っておきましょう、この『ヌル』では都市長であるこの僕が法であり全権を持ちます。如何に王家直属のアナタ方とてそれは変わりません。この都市のルールは守っていただくように強く要請申し上げます。」
優男はガネールに対して悠然と言い放った。そしてそれを聞いたガネールは強い苛立ちを見せる。
「ああん?何だとテメェ…舐めてんのか!?」
「舐めてなどいませんよ、僕は僕を慕ってくれる民のために、勤めを全うするだけです。」
「このクソガキがぁ!!」
ガネールが立ち上がり、優男を攻撃しようとした。
「……な!?」
しかしその瞬間、拳を振り上げたガネールの首筋に剣が突き立てられていた。
「ふぅ…これだから野蛮な『魔女狩り』は好かない。結局どいつもこいつも己の力をひけらかしたいだけじゃないか…」
「コイツ!!」
更にブチギレたガネールは剣を掴んで反撃しようとした。しかし、ガネールが剣を掴んだ瞬間に
「【動かないで】。」
「ぬぉっ!」
その優男の一言でガネールの全身が硬直した。
「はぁ…分かったか?ガネールとやら、この都市には僕がいる。王家の犬である君たち『魔女狩り』なんて必要無いんだよ。僕の力を持ってすれば『魔女』など恐るるに足りない。悪しき『魔女』は全員僕が捕まえる。今の君のようにね、では僕は失礼する。【自由にしていいよ】。」
それによってガネールは硬直が解けて自由に動けるようになった。
「クソッ!!おいコラ!!待てや!!…って、もう消えちまったか…クソが…」
「ガネール様!!大丈夫でございますか!?中で大きな音がしたので…」
都市長が出て行った扉からガネールの部下と思われる女が入ってきた。
「マネリアか…ああ、何ともねぇよ…」
「それは安心しました、ガネール様の強さは知っておりますが、それでもアナタはいつも無茶をなさる。」
「ふん、まぁ良いじゃねえか。それよりもあのクソガキ…いや、都市長とやらは何者だ?悔しいが、この俺があそこまでコケにされたのは久しぶりだ。ヤツは只者じゃねぇな?」
「…はい、仰る通りです。彼は【ヌルの英雄】とも呼ばれている男で、元々独立国家だったここを王国が侵攻した際に軍の指揮を取り、自身も最前線で戦い、王国軍を返り討ちにしたと。最終的に先代の国王陛下と約定を交わし、王国の下に着いたそうですが、その圧倒的な武力から、今でも王国はこの都市を完全には御しきれていないとか。」
「なるほどな、正真正銘この都市の英雄という訳だな。だが俺たちも陛下の命を受けて来てる、『魔女』は俺たちで狩るぞ。この都市の法に触れない範囲で構成員を都市全体に配備し、監視させろ。怪しいヤツがいたら即尋問、『魔女』を見つけたら即射殺、勝てないと判断したら即座に俺に連絡しろ。いいな?」
「御意!」
そうして2つの勢力が動き始めた。この時、ここへ向かう途中のセイナたち4人にはこの事を知る由はなかったのだが。
〜数日後〜
「ようやく着いたね!『ヌル』!」
4人は平原から遠くに見える都市を眺めていた。
「はぁ…長かったさね…早くお風呂…ご飯…男…ああ…誘惑は多いわぁ…」
「私は本ですかね…最近はゆっくりと読書する時間がありませんでしたから。」
「何でも良いから早く行きましょ。」
「はーい!」
そうして4人は大都市『ヌル』へと入ったのだ。
「うわぁ!!これが『ヌル』かぁ!!」
「流石に大きいわね…それに人の賑わいは王都以上ね。」
「規模が大きいとは聞いていましたが、ここまでとは…やっぱり世界は広いですね。」
「うへぇ…あっちこっちに良い男さね…さて誰から声を掛けようかねぇ…」
4人は都市の賑わいに圧倒されていた。大通りには絶え間なく人が現れ、店も人で溢れていた。老若男女関係なく、皆が幸福を感受している表情で、少し暗い雰囲気の他の都市とは明らかに一線を画していた。
「さて…アンリは男探しでニューズは本だっけ?ここからは一旦別行動にしましょうか。」
「アタシは賛成さね。」
「私も構いません、これだけの人がいれば私たちの正体がバレる事もまず無いでしょうから。」
「えぇ…私は皆んなで色々と回りたかったのにぃ…」
「皆んなそれぞれ趣味があるのよ、明日には皆んなで回りましょう。それじゃあ、明日の昼にここに集合って事で。」
「了解さね。」
「分かりました。では。」
そうしてニューズとアンリーザはどこかへ歩いて行ってしまった。
「さて…邪魔はいなくなったし……コホンっ!パーナ、私たちは2人で行きましょうか。」
「わぁあい!!セイナと一緒だぁ!!えいっ!」
パーナはそう言ってセイナの腕に抱きついた。
「うふふ…それじゃあ行きましょうか、パーナはどこに行きたい?」
「うーんとね…先ずはご飯!!美味しいお肉が食べたい!!」
「最近は非常食ばかりだったものね、それじゃああの店にでも行きましょうか。」
「はーい!」
そうして2人は近くの店に入った。
しかしセイナは後にこの選択を後悔する事になる…
〜数時間後〜
「はぁ…ちょっと食べ過ぎちゃったわ…太らないか心配ね…」
店で肉をたらふく食べたセイナは店の外にいた。しかしそこにパーナの姿は無い。
「にしてもパーナ、大丈夫かしら…店を出ようとしたら急にトイレに行っちゃったんだから…あんなに沢山食べるからよ。」
久しぶりのまともな食事で、食べ過ぎたパーナは腹を下してトイレに駆け込んでいた。セイナは既に料金を払い終え、店の前でパーナを待っていたのだ。
「まだかしら…って、何か騒がしいわね…」
店の前の大通りが少し騒がしくなっていた。セイナは少しだけ警戒しながらその様子を見ていると、大通りの奥からその原因が少しずつ近づいて来るのが分かった。
「うぉおお!!都市長様だぁ!!」
「キャアア!!アルティード様!!」
「『ヌルの英雄』だぁ!!」
「何と神々しいんでしょうか!!」
「アル様!!こっち見てぇ!!」
民衆たちは勢いよくその男の元へ集まっており、凄まじい歓声が周囲に響いていた。その声を聞いて更に周りの民衆も集まり、大通りはカオスな状態となっていた。
「一体何のお祭りよ…」
そんな中でポカンとしているのはセイナだけで、店の中からも人が出てくる始末だった。
「はぁ…【都市長】とか言ってたわね、一度見に行ってみましょうか。」
流石に立っているだけも怪しまれるので、セイナは興味本位でその人物を見に行った。
「うぅ…前に進めない…」
民衆にもみくちゃにされるセイナはその熱気に気圧されていた。何度も諦めようと思ったが、後ろから押される力で抜け出す事も出来ず、どんどんと前に押し出される。
「……うぅ………はぁ!!やっと出れたわ!!」
セイナはようやく民衆の群れから抜け出した。しかしその場所は民衆たちの中心地であり、件の男がいる場所でもあったのだ。セイナが顔を上げると、目の前には1人の優男が手を振って歩いていた。
「皆んなありがとう!!皆んなの事はこの僕が守るから!!だから安心してこの都市に……えっ…」
「……はぁはぁ……ん?」
その瞬間、偶々2人は目が合った。それを受けてセイナは咄嗟に目を逸らした。
「……あっ、失礼しました…あはは…」
何かをやらかしてしまったと思ったセイナは苦笑いしながらその場を離れようとした。しかし、優男は逃げ出すセイナの腕を掴んだ。
「えっ、何ですか!?」
(不味い!!私が『魔女』である事がバレたか!?)
混乱の極みに達したセイナは能力を発動させて逃げようと準備する。しかし次に優男から発せられた一言にセイナは驚愕する。
「美しいお方。僕と結婚して欲しい。」
セイナが別行動を提案したのは、
ニューズとアンリーザを想う気持ちが1、下心が99です。




