節約とは命がけでするものではない
テーブルの上に鎮座する大きな背負籠。
中を覗けば、色とりどりの山の恵みが詰め込まれている。
「取り立て新鮮な手土産なので是非お使いください」
「絶対食ったらヤバいやつが混ざってるな?」
キノコや葉、山菜1つでも素人には危険がかなりある。鼻からムフーっと息を吐き、自信満々の顔で勧められても手は出せない。
良く見ればあちこち擦り切れた服に年期の入った靴下。良家の子息とは思えない出で立ちに、本当にここの生徒かと疑えば、大人しかった椎菜が立ち上がり籠を引っくり返す。
「コレとコレは食べたら死んじゃうかも?」
「マジか。色はキレイじゃね?」
「…何事も挑戦?」
「その心意気やヨシ!」
全然良くない。
再び正座で突き合わせされる膝。
「知らない物を食べてはいけません」
「挑戦するのは大人に相談してから」
本日4つ目のお約束である。
見たことのないオレンジ色の山菜に混じって出てきた生徒証に、確かに担当する生徒で間違いないと確認すれば、眉間のシワが更に深くなってしまう。
芸術に秀でてると何処かがズレてたりするのか?
先ずは常識から教えないとダメなのか?
伸し掛かる暗黒のプレッシャー。
その間に正座しながら向かい合う2人。
「朝霧椎菜です。絵描きます」
「樹咲千春。書家になったらしい?」
「「で。お兄さんどちら様?」」
そう言えば名乗ってなかった。
けどまだ後1人生徒がいるはず。
椎菜程ではないけど、それでも小柄な千春。
ちんまりとした2人に見上げられ、揃ってからの方が良いだろうかと考えていれば10時を告げる鐘が鳴る。
「とりあえず、おやつ食べて良いですか」
「ならこの中のコレでどうだ」
「待て待て!見るからにヤバそうなのに手を出すな!」
何故に蛍光色のキノコをチョイスする。
てか知らない物は食うなと言ったばかりだろう?!
「生なの?」
「火で炙ってみる?」
「よーし。もう1回説教だ」
今日だけで終わる気がしない常識講座。
うんざりするほど騒がしい日々の始まりです。




