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その迫力は見かけだけ

なんとか乗り切った午前中。

即席で作ったハリセンを片手に、ぐったりと転がる2人の屍を見おろす。

痺れた足をプルプルさせながら、うつ伏せで這い進もうとする様は、何も知らない人が見たらちょっとした事件である。

「とりあえず、残りの1人が来るまで部屋の片付けでもしてろ」

「荷物はオヤツのリュックだけですが」

「さっきぶちまけられた籠の中のみですが」

「お前達は野生動物なのか?どうやって暮らして来たんだオイ」

もちろん実家から送られて来る物もあるだろうが、まだ届いてない。

着替えや日用品など、最低限の必需品はどうしても自分で運ぶしかないはずなのだが?と首を傾げれば、痛みの治まった足を撫でながら2人が立ち上がる。

「着替えなしで、寝る時はどうすんだ?」

「ぱんつは大事」

「歯磨きやら洗顔やらは?」

「塩と泥でいけるから任せとけ」

「…さすがにスマホは持ってるよな?」

「画面真っ黒なの。どうする?」

「いざとなったら鳩を訓練。非常食にもなる」

「荷物が届くまで寮から出ることを禁じる」

ダメだ、コイツ等を野放しには出来ない!

なんでだ?!と喚く千春の顔を鷲掴み、

きょとんとしている椎菜の頭を鷲掴み。

もう共有スペースのリビングで生活させるしかないと、2人を小脇に抱えソファに落とす。

反対側にドサリと座れば、タイミング良く鳴る呼び出しのチャイム。

「久々に普通の音が聞こえたな…」

「チャイムなんかあったっけ?」

「窓から入ったから分からないです」

「おとなしくしてなさい」

最後の1人は大丈夫そうだなと、少しだけ力が抜けた。

少なくとも飛んで入ろうとしないだけでも助かるとか考えてる木内は、常識のハードルがダダ下がってる事にまだ気が付いていない。

鍵を外し、背の高い両開きの扉を押せば

ど真ん中に立つ大きな影。

両手にパンパンのゴミ袋を持ち、

背中にはどんな難しい山にアタックするんですかと聞くしかない位デカくゴツいリュックを背負っている。

逆光の影の中、鋭い三白眼をギラリとさせる迫力は、子供が泣き出すこと間違いナシの恐ろしさ。

まさか最後の1人はコレなのか?

鳥の鳴き声が通り過ぎ、春の風が頬を撫で、

和やかな日差しに満たされた森の中。

熊に出会った気分て、こんな感じなんだろうなと空を見上げたその先には、まだまだ未知なる体験が待っているのです。











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