お弁当を作る時
朝、五時半に起きる。成宮星来の習慣だった。
「あぁー。今日はなんか面倒だな」
身支度を整えるとキッチンに立ち、弁当を作るのも習慣だった。朝は静かだ。車の音もあまりしないぐらいだが、星来はあくびをかみ殺しながら、ベーコンとほうれん草を切って炒め、卵を巻いていた。ご飯は昨日炊いたものを温め、弁当箱に詰めていく。
「やっぱり面倒だなぁ」
といっても去年結婚してからの習慣だ。夫も喜ぶし、辞めるタイミングも見失い、毎日朝早く起きていた。子供もいないし、仕事は派遣の事務だ。体力的には比較的余裕があるが、毎日弁当を作りながら、これで良いのかと首を傾げたりもする。
それでも手だけは動き、弁当は完成した。熱をとった後に蓋をする。
「お、星来。今日の弁当はた卵焼き?」
「うん。朝ごはんも弁当の残り物の卵焼きも会えるけど、いい?」
「いいよ、別に」
起きてきた夫もあくびを噛み殺していた。目もとろんとしている。弁当も朝ごはんもどうでも良い感じだ。文句も言わない代わりに。
そうして朝食を食べ終えると、弁当の最後の準備だ。ランチクロスで包むと、保冷剤をつける。保冷剤はアルミホイルに包むと長持ちする。弁当の上に入れるとより効果的だ。
「はい、お弁当」
「うん、ありがとうー」
夫に手渡したが、相変わらず目はとろんとし、やる気のない声だった。
なんとなくモヤモヤが残りつつも、出勤し、仕事をこなす。仕事に集中していたら、弁当のことなど忘れてしまったが、夕方、夫から連絡があった。急な主張が入り、今日の夕方から明後日まで出張らしい。弁当箱は洗って会社の流しにおいてあるから、オッケーとのこと。
「何がオッケーなん?」
夫のメッセージを見ながら、モヤモヤは加速していく。別に褒めてもらいたいとか、感謝の言葉が欲しいわけでもないけれど。
翌朝、昨日と同じ時間に目覚めてしまった。今日は夫はいないし、コンビニで適当にやっても良いのに、朝早く起きてしまう。
「わたしの体内時計、規則正しすぎ……」
朝早く起きすぎても、やることなどなく、結局弁当を作ってしまった。昨日と違い、一人分の弁当を作る。まあ、一人だから作り置きの煮ものやハンバーグを適当に詰めただけだったが、肩の力が抜ける。もうちょっと楽しても良いのかなぁなどと考えながら、それも悪くない気がする。
「どうせわたしの弁当だし、きゅうりの漬物もいれとくか」
夫からは不評で、いつもは弁当には入れないが、実は好きなもの。うん、今日ぐらいは好きなものを入れてもいいか。ちょっとお昼になるのが楽しみになってきた。
持っていく時は、保冷剤もつける。アルミホイルにつつみ、弁当の上におくと効果が続く。
「行ってきます」
弁当を持って、さあ出勤だ。今日もいつものルーティンの仕事だろうが、お弁当の時間が楽しみだ。今日だけは自分のためだけにお弁当を作ったからだろうか。保冷剤の効果も頼もしいし。




