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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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ポテトチップスがしなしなになった時

 友達に言ったら驚かれたことがある。ポテトチップスを一袋全部食べず、途中で止めることができるって言ったら、目を丸くされた。


「我慢、我慢。今日はここまで」


 金曜日の夜、映画を見ながらポテトチップスを食べていた青木詩園。しかし一袋食べたら確実にカロリーオーバーだ。自制して半分までで辞めた。ポテトチップスの袋をクリップで止めておく。


「なんか私って我慢強いんだよな……」


 こんな風にポテトチップスも途中で我慢できる。節約もダイエットも筋トレも資格勉強も大好き。朝活もやっていたし、自制したり我慢するのが趣味化しつつあった。過去はこんな詩園に「つまらない女」と評され、彼氏に振られたことがある。六年前のことだ。気づくとアラサー女になっていたが、恋愛も我慢、我慢……?


 まあ、婚活だったら我慢しながらやっても良いか。ふと、そう思った詩園は勧誘がしつこい結婚相談所に登録し、活動を始めることに。条件でマッチングした男とホテルのカフェで会った。


「へぇ、詩園さんって節約、ダイエット、筋トレ、資格勉強が趣味なんですか」


 相手の男、若干引いていた。公務員で年収が安定している男だ。詩園の年齢、職業、出身地、学歴などの条件、婚活アドバイザーによると、かなりマッチしているらしい。お似合いだと太鼓判を押されていたが、趣味が合わない。


 相手は食べ歩き、旅行、推しのライブ観戦が趣味らしい。ペットも飼いたくて犬や猫が好き。詩園は猫アレルギーだったし、ペットロスを想像すると何も飼いたくないのが本音。


 正直にそう言うと、相手の男、微妙な表情だ。あ、この人も「つまらない女」だと思った?


 そんな被害妄想で頭の中がぐるぐる。それにこの人、好きになれる?


 自制して我慢したら、好きになれるかもしれない?


 思わず作り笑いをしてみたが、どうも頬のあたりが引き攣り、うまくできなかった。


「つ、疲れた……」


 そして家に帰ると、肩が重い。別に運動したわけじゃんしのに、ふくらはぎが痛む。こんな時こそ筋トレか。それともがっつり資格の勉強でもしようか。


「あ、ポテトチップス、しなしなになってる……」


 そんなことを考えつつ、ふと、テーブルの上を見たら、食べかけのポテトチップス。昨日、我慢して途中でやめておいたものだ。


「あぁ、しけてる……」


 こうなったらおいしくない。捨てるべきかと思ったが、確かオーブントースターで一分温めると復活するとか。元カレから教えてもらった情報で、すっかり忘れていたが、ためしてみる。


「あれ? 普通にサクサクに戻ったな」


 ポテトチップス、元に戻った。いや、元より少しサクサク食感になった気がするが、急にこんなに我慢している自分にバカバカしくなってきた。


「なんで私、こーんな我慢しているんだっけ?」


 ポテトチップスは塩味がきいて美味しい。こんな美味しいものを我慢していた理由、 よくわからなくなってきた。


「もう、そんな我慢しなくてもいいか?」


 独り言が溢れる。婚活も無理して相手を好きになるとか、できそうもないし。


「とりあえず今日は寝るか?」


 もう全部ポテトチップスを食べ終えた時、眠気が襲ってきた。今日ぐらいは自制も我慢も一旦、中止で。

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