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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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スーパーで肉を買う時

 五木桃華はスキマバイト中だった。今日はスーパーで品出し。社員からの声も耳にキンとする。


「スキマバイトさん、もっと早く品出しして!」


 しかも冷凍食品の品出しだ。やってもやっても終わらない。初夏の今の時期はアイスの需要も高いらしい。品出しした側から売れる。中にはダンボールから直接とっていくお客様もいて、もうてんてこ舞い。


「スキマバイトさん、ブロッコリーの袋はこう押し込むように入れて。とにかくテキパキ、さっさとやってね!」


 社員からも指摘さて、本当にキャパオーバー。スキマバイトだと舐めていたら、ガッツリ即戦力を求められた。大学生の桃華にとっては、社会勉強だと割り切り、ひたすら品出しをしていく。


 終わったら汗だくだった。滝汗とはまさにこのことだ。サウナに入った以上に汗が流れた気もする。終わった後の謎の解放感に包まれながら、スキマバイトアプリで退勤する。これで即給料も振り込まれるし、この求人を応募しなかったら二度と行くこともない。そう思うと余計にスッキリしてきたが。


 その時、ちょうど社員の会話が聞こえきた。スーパーの肉売り場の照明についての話題だった。肉売り場の照明、赤みがかっているらしい。


「嘘……。それでお肉が美味しそうに見えたりしてたとか……?」


 思わず小声で呟いてしまうが、そんなカラクリがあったとは。うん、まだまだ社会勉強が足りないと思った桃華。


 その足でスーパーの肉売り場に行く。今度はお客さんとして行くから、余計に気が抜けるが、確かに照明は赤みがある。


「なるほど。これは一歩離れてお肉を見るといいかも」


 確か牛肉はワインレッドの色味がおいしい。豚肉は赤い汁が出てなく、白い部分がくっきりしているものがおいしい。鶏肉はぷりっと弾力があるもの。確か母もそうやって選んでいたが、まさか照明にトリックがあったとは知らなかった。


 そして一方離れて肉売り場を眺め、美しいワインレッドの牛肉を見つけた。値段はけっこうお高い。スキマバイトに来ている意味ないぐらいの金額だったが、これで牛丼作ったら美味しそう。


 お腹も減ってきた。今日はいっぱい動いたし、お肉を食べてもいいはずだ。


 気づいたらカゴに牛肉を入れていた。あと品出し中に気になっていたアイスの新製品も入れてしまう。お客様にも人気だったし、ハズレはないはずだ。


「あぁ、スキマバイト分の給料これでほぼ消えた……」


 レジを済まし、レシートを眺めるとため息が出てきたが、まあ、いいか。お肉の照明のカラクリも分かったし、社会勉強だと思えば悪くない。


 家に帰ったら、さっそく牛丼を作ろう。いいお肉を選んだのだから、絶対おいしいはずだ。

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