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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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リュックを背負う時

「あー、肩凝ったな」


 露木アユカは呟く。ゴールデンウィークはソロキャンプや観劇、フェスと遊びすぎたかもしれない。


 一応湿布を肩にはり、痛みも引いてきたが、SNSを開けば、物価高や石油危機のニュースばかり。一人暮らしのアラサー女のアユカは他人事じゃない。今から備蓄をした方がいいかも。


 痛む肩をさすりつつ、備蓄リストを作る。生理用品やシャンプーは絶対必要だ。あとは水、カイロ、防災用の簡易トイレ……。書き出しているとキリがなく、どっと肩が重い。


 こんなアユカ、元々は依存心が強かった。恋愛して結婚すれば大正解だと信じ、恋愛も失敗を繰り返してきたが、今は色々な趣味をもち、依存先を分散していた。仕事もしているし、大人としてちゃんと自立している自覚はあったが。


「なんか肩が重いね……」


 そんな呟きが漏れるが、備蓄リストは完成した。大きめなリュックを背負い、週末、スーパーに行くことに。


 スーパーは家族連れやカップルで混み合っている。一人で来ているアユカはどこか浮いてはいたが、カゴに必要なものを買い、セルフレジで会計を済ませた。


「ひ、レシートの数字、怖……」


 その金額を見ながら、物価高をしみじみと実感し、リュックに買ったものをつめていく。


「ねえ、お姉さん?」


 その時、声をかけられた。五十代ぐらいの主婦だった。


「なんでしょう?」

「リュックに詰める時は重いものを上に入れた方がいいわよ」

「え? 逆じゃないんです?」

「そっちの方が軽く感じるわ」


 主婦は鼻歌交じりに言うと、去っていく。


「いや、本当にそう?」


 半信半疑だが、ちょっと試してみるか。失敗したとしても、大きな損害はないはず。軽めのインスタ食品を下にいれていき、最後にペットボトルの水を入れ、リュックを背負った。


「あれ?」


 確かに軽く感じた。持っているものの総量は変化がないはずなのに、不思議だ。


 そのまま歩き、スーパーを後にする。自宅まで歩きながら考えてしまう。


「一人でなんでも頑張るのが自立じゃないのかな……」


 実際、あの主婦に教えてくれた知恵で今、助かっているわけで。


 依存が悪いと思い込み、趣味もたくさん持ったし、仕事も頑張っているけれど、極端な考え方だったのかもしれない。


「そんな何でも完璧にできる人なんていないしな……」


 気づくと自宅についていた。背負っていたリュックをおろす。


「備蓄もほどほどにするかな。いざとなったら、ご近所さんや友達だっているし……」


 なんだか肩がとても軽い。

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