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File08:再来

氷室組の事務所に到着し悠仁に偵察をさせる。

その間に事務所に目を向けると部屋の灯りが一つも灯っていないことに気付く。

夜も遅いし寝ていても不思議はないが、てっきり来栖組のように宴会をしていると思っていた。

「…なんだこれ」

悠仁がパネルを見つめたまま固まっている。

「どうした?」

「今共有します。見てください」

3Dスキャンされた事務所を確認する。

来栖組と同様に四階建てだが、組員達を示す赤い点滅がひとつもない。

眠っているなら表示されるはずで、組長すら表示されないというのはおかしい。

「カメラで見れるか?」

「確認します。……ん?ドローンが動いてない」

カメラには偵察用ドローンが無惨に破壊されているのが映る。

「破壊されてるな…。誰がやった?」

「暗視カメラで事務所の中を見てみます」

カメラが緑色に切り替わる。

そこには組員達の死体とオイルが映っていた。

「…どういうことだ」

「俺達以外の誰かが氷室組を?」

まだ般若面の男がやったという確証はない。

組長のPCを調べれば何か手がかりが残っているだろうか。

「悠仁、さっきと同じように支援してくれ。

中を調べてくる」

「わかりました。気をつけてくださいね兄貴」


正面玄関前に破壊されたドローンが転がっている。録画されたデータを取りたかったが、部品が見事に風穴を開けられている。ここまで特定の部品を綺麗に撃ち抜けるとなるとかなりの腕だ。

中に足を踏み入れると廊下に幾つもの死体が残っていた。脳以外の急所にも銃弾を受けている。俺のように刃物を使ってはいない。

オイルが乾いていないのを見て、撃たれてからそんなに時間は経っていないようだ。

二階・三階も同様だったが、不気味なぐらい争った形跡がない。ということは暗殺に長けた奴が潜入した可能性は高い。

すると視界に文字が表示される。

敵が残っていることも考慮し、チャットで悠仁が送信してくれたようだ。

『四階の組長室からジャミングの反応があります。何者かこっちでは確認できません。どうか慎重に』

この上の組長室に何者かがいる。

銃弾も確認し、気配を消して階段をあがる。

重厚な扉を慎重に開けて中を覗く。

氷室組の組長が脳を撃ち抜かれ椅子の上で事切れている。

その隣でPCが光を灯し、黒いフードを深く被った人物を照らしていた。

その瞬間、薫を失った土砂降りの雨の日がフラッシュバックする。

首を切られ倒れる薫。赤く染まったナイフ。

雷光で見えた般若の面。

「お前か‼」

これ以上ないほどの速度で斬りかかる。

怒りに任せた重い一撃。

机が割れ床にひびが入る。

躱された!

奴を追うように斬りかかろうとしたがワイヤーが刀に巻き付き、刀が吹き飛ばされる。

すかさずホルスターに手を伸ばす。

その時足元に転がるものが見えた。

「しまっ…!」

白い光が部屋を覆う。

キーンという耳鳴りと共に徐々に視界が戻ってくる。

窓が割れている。

外を急いで確認するが姿が見えない。

「悠仁‼般若面の野郎は!」

ザザーッ…。

「悠仁、返事しろ!……クソッ‼」


急いで車に戻ると、悠仁が椅子にぐったりと凭れていた。

車のドアを開けて悠仁を抱き起こす。

「悠仁、大丈夫か!返事をしてくれ…!」

嫌だ、嫌だ嫌だ。お前まで逝っちまうのは…。

頼む…。

何度も、何度も呼び掛ける。

「悠仁…ゆうじ…」

「ん...」

わずかな悠仁の声がした。

「…悠仁、聞こえるか?」

悠仁が目を開ける。

「あ、にき…?」

「あぁ、ここにいる」

「…すみません、奴を追おうとしたらハッキングされちゃいました」

「いいんだ、お前が無事なら…。親っさんの知り合いに医者がいる。そこに行くぞ」

悠仁を後部座席に寝かせ、医者のところに向かう。

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