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SecretFile05:迷子と愁染

愁染が迷子にあたふたしている姿を見たいと思った作者の産物です。

やぁ、読者の諸君。愁染だ。

俺は今緊急事態だ。悠仁の助けがあれば良かったんだが。非常にまずい。

目の前で5歳の女の子に大号泣されている。

周囲の視線が痛い。誘拐じゃない。断じて無い。ただ転んだのを起こしただけだ。信じてくれ。

子供と目線を合わせた方がいいのは知っている。だがこの見た目だ。転んで痛い上にこんな裏社会の男に出くわしたらそれは泣く。

たまたま後ろにいて目の前で一人の子供が転んだら、放っておけないだろう。

そうだよな、俺のやったことは間違ってないよな?

黙っているわけにもいかない。とにかく落ち着いてもらわなくては。

「あ、えっと、転んで痛かったよな?大丈夫か?」

ハッキングは使えない。何せこのぐらいの子供は完全な肉体で、鋼鉄の身体になるのはもっと先だ。以前の子供のとき悠仁はその子が身に付けていた腕時計型の情報端末から情報を割り出している。今回はそれがない。それがあれば親を呼び出してこの場を去ることができたのだが。

相変わらず泣いたままだ。

「痛いし、怖いよな…あ」

泣き止ませるのに必死で、子供が片膝を擦りむいているのに気付くのが遅れた。

ハンカチを取り出す。

「だ、大丈夫だ。膝を怪我をしているからハンカチで覆うだけだ。じっとしてくれればいいから、な?」

なるべく怖さを減らせるように優しい声で話しかける。

何度かそうしていると、次第に落ち着いてきた。

「よしよし、落ち着いたか?ハンカチで覆うだけ。少しぎゅっとするだけだ。いいか?」

頷いてくれたので素早く、患部を覆う。

取り敢えず第一関門は突破だ。

「これで痛みは少し和らいだはずだ、どうだ?」

頷いてくれた。この子の心は開きつつある。

「親…あぁ、ママとパパとはぐれた?」

肯定の頷き。

「君の名前は言えるかな?」

「……はるな」

「はるな、か。かわいい名前だな」

「ありがとう…」

よし。話すようになった。

第二関門突破だ。

さて、怪我をしているし歩かせるわけにもいかない。

かといって抱っこして歩いたら誘拐扱いされるに決まっている。

周囲を見回すと近くに空いているベンチが見えた。下手に動くよりそこで待っている方が、親も見つけやすいだろう。

「あそこのベンチに座ろう。痛いだろうから、そこまで抱っこしても良いか?」

「…いいよ」

怖がらないようにゆっくりとした動作で抱えてベンチにそっと降ろした。

俺は座らずに屈んだ。

「ここにいればママとパパが来てくれる。

一人で待てるか?」

「……」

「一人だと怖い?」

「…うん」

親がこの子の隣に座る俺を見たら悲鳴をあげないか心配になる。店員に知らせに行こうにも、目を離した隙に一人の子供を狙った連中が来る可能性もゼロではない。

悩みに悩んで、隣に座った。

誤解されるのはいつものことだから割り切るしかない。

こんな俺を褒めてくれ、読者よ。


ここまで来たは良いものの問題はこの第三関門だ。

そう、親が来るまでの時間の過ごし方である。

悠仁のように口が回る質ではないし、

子供が喜びそうなものは持っていない。

…会話しかない。だが何を話せばいい?

名前は聞き出せたから…。

悩んでいると小さい手で袖を引っ張られる。

「トイレ行きたい…」

「お、おう。抱っこするぞ?」

そっと抱えてトイレに向かう。

小さい手がぎゅっと肩を掴む。

俺は背が高いから、この子からすれば相当な高さだ。

「しっかり支えてるから、落ちないぞ。心配ない」

優しい声を心掛ける。

無事にトイレを済ませて先ほどのベンチに戻る。

ベンチに戻ってしばらく経ったものの親がなかなか来ない。血相を変えて探しているはずだが。

はるなの様子見ると、こっくりこっくりと

首が船をこぎ始めた。

「眠いのか?」

「…ねむくない」

首を横に振るものの睡魔に負けそうになっている。

転んだら目の前に強面の極道がいるし、親とはぐれて迷子という修羅場をくぐったのだ。

疲れてしまうのも無理はない。

「寝てていい。親が来るまでここにいるから」

「一人にしない?」

「しない。さ、疲れただろ?」

膝を枕にするよう促して横にさせると直ぐにすやすやと寝始めた。

寒くないようにそっと自分の上着をかける。

これで親が来るまで待てばいい。

第三関門突破だ。


ようやく親が来た。悲鳴をあげられるかと思ったが、泣きながら感謝された。

知り合いと話すのに夢中になり、はぐれたことに気付かなかったらしい。

名前を教えてほしいと言われたが、俺は裏社会の人間。関わらないのが身のためだ。

彼らの視界に名前が表示されないようにこっそりハッキングしておいた。

名前は伏せて通りすがりの者であると貫いた。

別れ際にはるなが俺に駆け寄ってきた。

「えっとね、ありがとう。やさしいおじさん」

小さい身体でハグをしてくれた。

そっと頭を撫でてあげる。

「元気でな、はるな。次ははぐれないようにな」

「うん!バイバイ!」

互いに手を振る。

姿が見えなくなり、一息つく。


……顔だけ若く見える整形をしようかと本気で悩んだのは悠仁達には内密に頼む。

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