SecretFile02:兄弟の休日②
細々と残っている映画館でもかなり大きい所に向かった。映画館には思ったよりも人がごった返している。
「…多いな」
「心配は無用です!チケットは取ってありますよ」
電子チケットにはホラー映画の内容が書かれていた。舞台はいわく付きの廃病院で複数の男女が肝試しに訪れたところ、幽霊の怒りを買い閉じ込められるというストーリーのようだ。
「悠仁、わざとだろ」
「なんのことですか?」
絶対にわざとやっている。
ポップコーンと飲み物を買って、席に着く。
暫くして上映が始まった。
近づかなければいい話なのになぜわざわざ危険なところにいくのかわからない。
男女が廃病院を探索していく。
奥に進むうちに気が付くと一人また一人といつの間にかいなくなっている。
すると叫び声が大音量で流れた。
驚いてポップコーンが空中に舞う。
直ぐに暗視モードに切り替え、高速で落ちる前に全て回収して何事もなかったように振る舞った。
ポップコーンは傍らに置いておく。また舞ったら面倒だ。悠仁の視線が痛いほどこちらを見ている。俺じゃなくてスクリーンを見ろ。スクリーンを。
中盤で残った男女が幽霊の怒りを鎮めるため、儀式に必要なものを探していると、長い廊下の暗闇の奥から女性の幽霊が奇声を上げて髪を振り乱しながら追ってくる。
その恐ろしさに手で顔を覆い、チラチラと指の隙間から覗く。
これが俺にできる最善の防衛策だった。
悠仁を盗み見ると驚いてはいるもののスクリーンを直視している。
すごいな…。
終盤で無事に儀式を終えて廃病院から出られた一組の男女。二人が乗ってきた車に戻り、一息をつく。
『終わったね。ようやく帰れる』
女性の台詞と穏やかなBGMに安堵しようやく解放されると思っていた。
運転席の男性がエンジンをかけ車のライトをつけたとき、スクリーンいっぱいに先ほどの幽霊の顔が効果音と共に現れた。
『ぎゃあああ‼』
「うわぁぁ⁉」
男女の叫び声と共に俺も悲鳴をあげた。
スタッフロールが終わり灯りがつく。
俺は前屈みになり顔を手で覆って固まっていた。
ホラー映画に手のひらの上で踊らされたことと、情けない叫び声をあげてしまったことの羞恥心に顔を上げられない。
「兄貴、大丈夫ですか?」
首を横に振る。
これで悠仁と「話をする」項目がまた一つ増えた。
読者の諸君、俺の情けない姿を忘れてくれると助かる。




