SecretFile01:兄弟の休日①
SecretFileは番外編となります。作者が唐突にギャグを書きたい衝動に駆られた産物です。細かいことは気にせずにお読み下さい。
「おっはようございまぁす!兄貴ぃ~‼
今日はどうします?飯も良いし、買い物も良いし、だらだらするのも良いですよね~!」
悠仁の声で目が覚める。少し不機嫌になりながら扉を開ける。
「おはよう…なんでわざわざ俺を呼びに来るんだ…」
「ほら、兄貴ってほとんど息抜きしてないじゃないですか。せっかくの休みですし俺と一緒にパーッと息抜きしましょう!ね!」
「騒がしい奴だな…俺は寝るから一人で行ってくれ」
「寝るって、もう朝の10時ですよ??ただでさえほぼ12時間寝てるのに??」
「……」
悠仁が飼い主に散歩に行こうと尻尾を振りながら促す仔犬に見える。
「……だめだ」
「えぇ~…」
尻尾と耳を下げた仔犬になった。
やめてくれ、クリティカルヒットなその上目遣いを。
これに弱いってわかってやってるなお前…?
「はぁ~…ったく、用意するから待ってろ」
「やったーー!」
尻尾をこれでもかと振っているのが一度閉めた扉越しでもわかる。俺は朝がめちゃくちゃ弱いから、悠仁はある意味目覚まし時計だ。昔は鶏がやっていたらしいが。……鶏と悠仁が重なって吹き出しそうになるのを全力でこらえる。
いつものスーツではなく少しラフなシャツを着て寝起きで跳ねに跳ねまくった髪を整える。
「終わったぞ。どこに行くんだ?」
「待ってました~!共有しますね」
視界に『兄貴と行きたい所とやりたいことリスト』
と表示される。
タップした途端、高速で情報がスクロールされていく。処理せずとも分かる。どう見ても1日の量ではない。寝ているのを鷄の如く叩き起こした挙げ句、尋常じゃない情報量のスクロール。
鬼である。寝起きの奴にして良い所業ではない。
「…なぁ、これ一生かかる気がするんだが。全然止まってくれないぞ?どんだけあるんだよ…」
「んふふ…。寝起きを覚ますためのドッキリですよ。寝起きの兄貴は隙だらけですから」
「……」
……どついて良いだろうか。
じとぉ、と悠仁を見る。
「怖い顔しないでください。本当のリストはこっちです」
「映画に、飯に、買い物か」
「はい!どれから行きます?」
「飯いくか」
「はーい、検索しときますね!」
車を呼び出して、自動運転モードにする。
「あ、そういえば親っさんが俺達に羽を伸ばしてほしいからって送金してくれたみたいですよ」
残高を確認する。
元々の自分の残高より数十倍の金が振り込まれている。親っさん、いくら何でも人に送っていい額じゃありません。親バカにも程があります。
朝からツッコミの連続でボケ二人を捌くのは大変だ。自動運転にして正解だった。事故りそうになるのが目に見えている。
「「お帰りなさいませ~!ご主人様~!」」
メイド衣装の女性店員達のお出迎えに、すぐ踵を返すとガシッと悠仁に肩を捕まれる。
「俺はいい」
その手から逃れようと踏ん張る。
それに負けじと悠仁も踏ん張ってくる。
「兄貴~お願いしますっ!俺ずっとここに来たくて!」
「なんで普通のとこにしないんだよ!おかしいだろうが!」
「いやもう店内に入っちゃったんで!
ほら店員さんもこの通りですから!」
「「ご主人様~、行っちゃうんですか~?」」
肩に一つ二つと手が増えていく。
怪我をさせる訳にも行かないので、覚悟を決めるしかない。無だ、無になるんだ俺…。
俺と悠仁がキラキラと点滅するカチューシャを付けられる。もうツッコミは諦める。とにかく一刻も早くここから出たい。他の客には悠仁ならまだしも30代の強面な男が無になって、メイド達に囲まれている絵面はもう異空間に見えているのではないか。
読者の諸君、助けてくれ。今すぐページを閉じて今日のことを無くしてくれ頼む。
ーアクセス承認 ページはそのまま!ー
そうか、駄目か。わかったよ…。
いいんだな!本編でのキャラが崩壊してもいいと言うんだな!雨宮愁染が壊れてもいいんだな⁉
ーアクセス承認 兄貴のメンタルを調整中!ー
気がつくと俺はいつの間にか、車に乗っていた。
「…俺は何を?」
「兄貴、あの、んふふ…っ」
堪えきれなかった悠仁が爆笑している。
何も覚えていない。腹が満たされているから飯は済んでいる。ということは店内で…。
読者の諸君、何か知っているか?
…応答がない。悠仁には後で「話をする」としよう。




