エピローグ:From a Sinner, With Love
あの日から一年が過ぎた。
俺は二人のおかげで生き延びた。
守りたかった二人に守られてしまった。
俺なんかよりずっと尊い存在の二人の方がずっと生きている価値があるというのに。
俺の目の前には二つのカプセル型のベッドが並んでいる。その中には愛しき二人が眠っている。
二人が目を覚ます頃には俺はいないし、二人の記憶も目覚めたら消えてしまっているだろう。
二人の頭には篁の親っさんと、奥さんの脳がそれぞれ入っている。
親っさんの脳は襲撃される前日に、奥さんの脳は親っさんが保管していたのを預かっていた。この時のために。
これは観察者としてではなく、村雨悠仁としてやったことだ。
真っ二つに割れた般若面を見つめる。
俺はプロトタイプだから、二人のようにオリジナルがない。
最初は兄貴にも薫さんにもなれなかったことが悔しかった。どちらにもなれなかった出来損ないであることに絶望して、二人が羨ましくてこの般若面と笑顔の仮面を被っていた。
けれど二人と過ごすうちに、羨望を抱いていたつもりがいつの間にか守りたいという気持ちに変わっていった。
複製体でありながら一人の人間として魂を燃やす姿に感化されたのだろう。
俺の心を変えた責任を取って二人には生きてもらおう。今度こそ、引き裂かれることなく幸せに生きてもらわなくては。
般若面を二人が落ちた穴に放り投げる。
これで俺も二人も一度死んだ。
もう二度と会うことはないだろう。
二人を管理するサーバーの上に一冊の紙の本を置く。俺が二人の記憶を小説形式でまとめ、製本してもらったものだ。
二人に背を向け歩き出す。
本のタイトルは『From a Sinner, With Love』
どうかこの物語を最後まで読んでほしい。
感じたことを大事にしてほしい。
この物語を伝えることが、
『俺』にできるあなた方への贖罪。




