File11:狩人
「草薙さん、あいつは何だ?」
「世界を牛耳る奴らが作った最強の傭兵、ガルダだ。世界に歯向かう蛇どもを悉く抹消し、一機だけで国一つ滅ぼすとも言われてる。まさしく神様を気取る腐った連中にはうってつけってわけだ!」
ガルダの背中に翼が生え、こちら目掛けて高速で翔んでくる。翼にはミサイルがずらりと並んでいた。ミサイルの一つが発射された。
「おいおい、冗談だろ!」
草薙さんがパネルを開き、片手で高速タップをしていく。
ミサイルにハッキングの輪が表示されて、斜め後ろの車に着弾する。
車が火達磨になり一回転しながら他の車を捲き込んでいく。
「たった三人に撃つ代物じゃねぇだろうが‼」
草薙さんが悪態を付く。
俺は車の揺れで悠仁が怪我をしないよう支える。
ホルスターから銃を取り出す。
「草薙さん俺がやる。窓開けてくれ!」
「おいおい、そんな豆鉄砲でやり合うつもりか?」
「翼のミサイルを撃てば奴もひとたまりもないはずだ!」
「あいつに似て無茶しやがる!それは温存しといてこっち使え!」
車の天井から精密スコープが付いたロケットランチャーが降りてくる。
「スコープが勝手にロックオンしてくれる。その瞬間に撃てば確実にドカンだ。腐った連中の犬にそれで一泡吹かせてやれ!」
窓を開けてもらい、構える。
ミサイルに照準を合わせると赤い輪郭が狭まっていく。
照準と輪郭が綺麗に合わさり、ロックオンしたことを知らせた。
引き金を引く。
白い煙の尾をなびかせながらミサイルに着弾する。
ミサイルが花火のように連鎖して爆発していく。夜空を切り裂くような爆発にガルダが包まれた。
「ハッ、見たか‼」
草薙さんが奴に向かって中指を立てる。
俺は念のためスコープを覗き奴を確認する。
すると炎を切り裂き、傷一つついていないガルダが現れる。その手には巨大なブレードが握られていた。
「草薙さんまだ終わってねぇ‼」
「クソがっ!」
ガルダが高速の斬撃を飛ばしてくる。
間一髪で草薙さんがそれを躱す。
道路が分断され、車や人に建物が奈落の底へと落ちていく。これを受けたら本物の死が訪れるだろう。
高速の斬撃が迫る。
「させない!」
悠仁がハッキングする。
「悠仁よせ!」
車が大破し、道路に投げ出される。
激痛が走る身体で二人を確認する。
草薙さんと悠仁が横たわっている。
バイタルが二人とも生きていることを知らせる。
ガルダが二人の元に降り立つ。
俺はすかさず銃を撃った。
カンッと当たったと同時に赤い二つの光が俺を捉える。
それでいい。
落雷のようなズシンという足音が近づいてくる。日本刀を支えに立ち上がる。
もう大事な人がいなくなるのは懲り懲りだ。
腕に身体増強剤を射つ。
激痛が消えて内側から力が溢れてくる。
刀を構える。
「来いよデカブツ。二人には俺が指1本触れさせやしねぇ!」
ブレードが振り下ろされる。
それを躱し、ブレードの上を駆けて頭部を下から斬り上げる。
浅い!
空中を舞いながら攻撃が装甲までしか届いていないのを確認する。
背後に地面にヒビが入る勢いで着地する。
奴の背中に核であろう球体が一瞬開くのが見えた。あれか!
ブレードが迫り、それを身体を回転させるように跳躍して躱す。
そして球体目掛けて跳び上がり刀を突き刺した。
ガルダの身体が悲鳴を上げてバチバチと火花が散る。ギューンという音と共に動きが止まった。地面に降りると同時に身体に激痛が走る。
「ぐっ…」
刀でなんとか倒れるのを防ぐ。
一息ついた瞬間、背後のガルダが唸りを上げた。奴の周囲に衝撃波が発生し刀ごと吹き飛ばされる。
身体が地面に叩きつけられて赤いオイルが身体から流れていく。
動けない。ジジッという音が身体中からしている。
赤い二つの光が俺を見下ろしている。
あの時と何も変わらない。
俺はやはり何も守れないのだ。
薫、篁のおやっさん、悠仁、草薙さん……。
みんなの顔が浮かび、涙で歪んでいく。
「ごめんな…」
ブレードが無慈悲に振り下ろされた。




