表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/10

第一章:現代に蘇る『呪印』

続けてお読みいただきありがとうございます!

ここから第一話が始まります。

20××年、現代ー


 新宿の喧騒けんそうから少し離れた路地裏。古いビルの一角で、私は小さなリラクゼーション・スクール『古都 逢坂おおさか塾』を営んでいる。


筋肉の走行、骨格のバランス、そして神経の伝達回路。これらを物理や科学的に解説し、痛みや不調の根源を分かりやすく説明するのが私の仕事だ。


 解剖学の資料が山積みになっているこの教室で、私は今日も生徒たちに「身体のコリをほぐす」という理論を教えるための資料を準備中である。


私の他にも講師を担当している、堅物の佐伯さいき先生がいる。古武術を応用した? 独特の手技を持つ講師なのだが……その手技というのがとにかく風変わりで。

「それ、本当に大丈夫な手技!?古武術って何!?」と面接の時に思わず聞き返してしまったほどだ(まあ、その話は追々するとしよう!)。


 そして、佐伯先生が持ち込む突拍子もない新たな手技の検証や、私の斜め上を行く発想などなど……。


そんな日々の“無茶ぶり”を、いつも涼しい顔で完璧にこなしてくれるのが、事務員の小夜さよちゃんだ。


彼女は私の大切な癒しキャラだ。


 そんな個性豊かな三人で、この『古都 逢坂塾』を回している。


……まあ、これはあくまで「表」の顔なのだけれど。


おっと! 大切な自己紹介を忘れていた。


 私は雪森詩樹ゆきもりしき。解剖学がすっごく大好きで、この仕事は間違いなく私の天職! 色んな知識や技術を学ぼうと集まる生徒たちに教えるのも、最高に楽しい。


そんなオタク気質な私だから、無論――自慢ではないが、恋愛はからっきしだ。笑


 別に男性に興味がないわけじゃないけれど……うーん、まだハートを射止めるような運命の相手に巡り会っていないだけ……だと、自分では思っている。


さて、そんな「表」の顔には、もちろん「裏」がある。


そう、私のもう一つの裏の仕事(家業)についてだ。

人に視えない「モノ」が視えるようになったのは、私がまだ幼い頃のことだった。


 きっかけは些細なこと――近所の道端に、遠目にたたずむ女の人が立っているのが視えた時だ。


別にこちらを向いているわけでもないのに、本能が「あれは、ヤバい」と警鐘を鳴らした。


 それからというもの、年を重ねるごとに摩訶不思議な現象が日常に侵食し始めた。


夢の中で見た光景が、数日あるいは数ヶ月後に現実として目の前に現れる。


 時には過去の出来事のような、白い衣を纏った巫女姿の女の人、あるいは全く別の世界――パラレルワールドと呼ぶべきか…の光景が、数え切れないほど私の脳内を駆け巡るようになった。


そんな私にとって唯一の安らぎは、父がいなくなった後の祖母の温もりだった。


 祖母はよく、私の手をそっと握りしめてこう言ったものだ。


「詩樹は、おばあちゃんと同じ手をしているね」


祖母が何度も手を重ねてくれるその度に、私は不思議なほど温かいモノを感じていた。


だが、成長するにつれ、それはただの慈愛だけではないと気付かされた。


私の右手に、あるはずのない、刻まれることがない「呪印」が浮かび上がった時、自分が逃れられぬ宿命を背負っていることを大人になった時に気付かされたのだった。


 それ以来、私は「視えても見て視ぬふりをする」ということを身につけた。周囲には気味悪がられ、友達には白い目で見られることもあった。


だからこそ、視えていても「自分は普通なんだ」と言い聞かせ、専門学校で人体の仕組みや解剖学を徹底的に学び、学業に集中することで、ようやく”普通の人としての日常”を送れるようになったのだ。


だが、ある事がきっかけでその日常が崩れ、私自身にも……。


思考が深淵しんえんに沈みかけた、その時だった。


廊下から、慌ただしい足音が近づいてくる。次の瞬間――。


 ガラガラ、バタン! と激しい音を立てて教室のドアが開いた。


「詩樹先生! 依頼が来てます!」


事務員の小夜ちゃんが、少し息を切らしながら入り口に立っていた。

彼女の声で、私はハッと我に返る。右手に刻まれた熱い呪印の痺れが、ようやく引いていくのを感じた。


「……あぁ、ごめん。少し考え事をしていたわ」


私は、いつもの「お茶目っけな顔」に作り直した。


「今回の依頼はオイルトリートメントの出張依頼か何かな?」


そう言って、彼女が差し出したタブレットの画面を覗き込む。

そこに記された不穏な相談内容を目にした瞬間、「……何? これ。『あやかし』……?」


「おっと、久々の依頼だね!」


添付されていた一枚の写真を目にした私の背筋に冷たいものが走った。


写真に写る相談者の肩に、ありえないはずの「ソレ」が――黒くうごめく影のような、異形のものがしがみついていたからだ。  


それはただの肉体的な不調ではない。……妖による、人への受肉だ。


私はタブレットを小夜ちゃんに返し、ぐっと息を飲み込んだ。


「……小夜ちゃん。佐伯先生の授業は、もうすぐ終わる?」


「あと30分くらいですね。どうされました?」


私は、いつもの明るい顔をした。


「OK! 今回の依頼はどうやら佐伯君と一緒じゃないとダメみたいだから、少し生徒たちのスケジュール調整をしてから向かうことにするわ。悪いんだけど、調整よろしく~!」


そう言って小夜ちゃんにすべてを丸投げすると、彼女は「またですか……」という、いつもの諦めと呆れが混ざった表情を浮かべた。


「わかりました。調整はしておきますが……今回の依頼、どこなんですか?」


その問いに、私のテンションは一気に跳ね上がった。


「京の都! 京都だよ~!」


小夜ちゃんは「はぁ……」と深いため息をつき、苦笑いを浮かべる。


「詩樹さん、本当に京都好きなんですね」


「うん! なんでかな。帰ってきた? 懐かしい? そんな感覚が不思議と湧いてくるの。特に清水寺から眺める風景は、どこか懐かしくて……ずっとその場所に居たくなっちゃうんだよね」


私は少し遠い目をして、心の中に広がる古都の景色を思い浮かべた。


それは、私の理屈や知識では説明のつかない、魂が知っている光景。

何かが、私をかの地へ手招きしているのかもしれない。


……なーんて、ちょっと格好つけてる場合じゃなかった。


「詩樹さん、先ほどお話ししていた件ですけど依頼の返事をしておきますね。」


「あ、うん! お願い、小夜ちゃん。いつもありがとう」


「はーい。じゃあ私、事務作業があるので戻りますね。今日の授業も頑張ってください」


パタパタと軽い足取りで小夜ちゃんが教室を出ていく。


その背中を見送りながら「さぁて、佐伯先生との合同授業、準備しなくちゃ!」


私は解剖学の資料を抱え込み、柔らかな風が吹き込む窓から外の風景を眺めた。


「今日も好きな授業をして、生徒たちの真剣に勉強する姿を見ると頑張ってきた甲斐があるんだよね〜……あれ〜?…そういえば、足つぼの実習最近ないんだけど……気のせいか?」


そんな独り言を呟きながら、私は予鈴のチャイムとともに、隣の教室へと向かった。



第一話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

実は今回が人生で初めての小説投稿になります。

まだまだ至らない点や、読みづらい部分もあるかもしれませんが、大好きなキャラクターたちと一緒に、一歩ずつ一生懸命に物語を紡いでいきたいと思っています。

次回も逢坂屋のメンバーが?と言うよりは詩樹が元気いっぱいで佐伯君からのツッコミが…鋭い!?

どうぞ次回もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ