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赤字領地に飛ばされた会計官、公開照合で汚職網を断ったら契約の婚約が再定義されました  作者: 夜摩 高嶺
第二章「逆照合の反撃」

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第19話「偽証の席」

 公開二週目の初日、評議会の証言席に新しい顔が座った。

 王都商会監査補佐を名乗る男、ラシェル。

 整った外套、乾いた口調、迷いのない署名。


「北門便の停止は会計顧問ルチアの独断でした」


 場がざわつく。

 証言は具体的だった。

 第七刻三十分、慈恵支援便停止。

 その場にルチア顧問が居合わせ、帳票を破棄した。


 私は証言記録を受け取り、目だけで追う。

 時刻も便名も、実際の事件に寄せてある。

 寄せ方が巧い。

 全部嘘なら崩しやすい。

 半分真実の嘘は、崩しに時間が要る。



 午前、評議会議長が問う。


「会計顧問、反論は」


 私は即答しない。

 即答は印象戦に引き込まれる。


「本日中に反証資料を提出します。証言は時刻照合から検証が必要です」


 グレゴルが柔らかく口を挟む。


「検証は重要です。ですが冬は待ってくれない。独断運用の是非は先に判断すべきでは?」


 正論だ。

 そして狙いは、検証前判断。


 私は頷き、議長へ向く。


「ならば仮判断の前提として、証言原本の封緘保全をお願いします」


 議長が渋い顔をする。

 封緘保全は面倒で、逃げ道を減らす。

 カイが短く言う。


「実施しろ」


 議長はようやく槌を打った。



 昼、会計庫で反証準備。

 ミレナが証言写しを机へ並べる。


「時刻は合わせてあります。崩せますか」


「時刻だけなら崩せません。距離を足します」


 私は北門から評議会館までの移動記録を引く。

 その時刻、私は評議会館の入門簿に署名している。

 北門停止現場に同時刻で居ることは物理的に不可能。


 さらに便札写しを照合。

 ラシェル証言の便札記号は旧式。

 当日は新様式運用日。

 記号が一文字違う。


 崩せる。

 ただし、崩し切らない。

 今日は投入回だ。

 全てを開けば、相手は次の嘘を学習する。



 午後、公開板前で住民説明。

 偽証の噂はすでに広がっている。

 男たちが口々に言う。


「独断で止めてたんじゃないのか」


「公開って言ってるのに都合よく隠してるだろ」


 私は板へ「検証中」の札を貼る。

 結論は出さず、手順だけ示す。

 時刻照合、距離照合、票記号照合。


 女将が私を見て問う。


「今日は“違う”と言い切らないのかい」


「言い切るには早いので」


 喉の奥が乾く。

 言い切れば楽だ。

 だが王都で私は、早い断言に乗って失った。

 今回は遅くても確実に進む。



 夕刻、カイと短い協議。


「崩せるか」


「崩せます。ただし一手残します」


「理由は」


「相手の供給線を見たい。偽証は一人では作れません」


 カイは一拍だけ黙り、近衛隊長へ命じる。


「証言席へ入った者の出入りを全て記録しろ。靴泥まで見ろ」


 私は眉を上げる。

 靴泥。

 距離照合の補助線になる。


「助かります」


「助ける気はない。勝つ気だ」


 短い返答が、胸の真ん中へ刺さる。

 私も同じ気持ちだった。



 夜、会計庫で証言原本を再確認。

 ラシェルの署名末尾に、微かな癖。

 契約局古式の払い線。

 幕1末の脅し文と同系統。


 私は封緘袋へ戻し、赤印を打つ。

 崩しは明日。

 今日は偽証を席へ座らせたまま終える。


 席に座る嘘は、立たせる時に一番音を立てる。

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