同じ方向、同じじゃない
薄い朝霧に木漏れ日に照らされた
パオの開けられたリアゲートの上で
ハスキーが起きてはいるが丸まっている。
Z2の横に張られたテント。
前室に置かれた雑嚢が
ゴソゴソと動く。
カカポが顔を出すとハスキーと目が合う。
カカポ「……お、オッス」
ハスキーは目を逸らす様にあくびをする。
ムスッとするカカポ。
テントの入り口のチャックが
音を立てながら開かれ
赤髪が伸びをしながら出て来る。
「おあよー(おはよう)
……どした、お前ら?
みんなダチになったんだろ?」
既に起きて
モーニングティーをしている銀髪が
「なってない」と即答する。
「だよな!」と
ハスキーをチラリと見ながら同調するカカポ。
赤髪は口をへの字にして肩をすくめる。
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ともあれ朝食は同じテーブルを囲む。
パンと缶詰の簡易的な物だ。
銀髪は静かに開けて
ゆっくりと必要な分だけ食べる。
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赤髪は元気よく
「いただきまーす!!」と早食いし
更にポケットからサラミを追加する。
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ハスキーは赤髪のサラミの匂いを嗅ぎに行く
「あ、こら!これはあたしのだろ!」
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赤髪は銀髪の食事量を見て
「お前それで足りるの?
それ絶対栄養足りてねぇーって」
銀髪は「問題ない」といつも通り。
カカポは豆をつつきながら
銀髪と赤髪の胸を見比べる……
「……うん、問題ない!」
「お前何処を見て言った?」と詰め寄る赤髪。
逃げるカカポ。
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赤髪が出発準備で荷物を単車に載せていると
銀髪が「……載せる?」と言う。
赤髪はパアーっと
「え、マジで?いいの!?」
「2台で分かれる必要はない」
「……ちょっと待て。
ソレってZ置いていけって事?」
「車なら1台で済む」
「それならお前がZのケツに乗れよ
犬は〜背負って行けば1台だぞ!」
「意味がわからない」
その間にハスキーはパオに乗りこみ。
カカポはZ2に抱きついている。
銀髪は無言で車に乗り込みエンジンをかける。
「おい、勝手に決めんな!!
……って、今まで通りか」
結局、今まで通りに走り出す。
道中パオとZ2並走しながら
赤髪は大声で
「なあ、お前名前は!?」
銀髪は視線を前に向けたまま
「ない」
「ウケるなそれ
……じゃあ、呼びにくいな」
「……呼ばなくていい」
頑なな銀髪に追求はやめた。
普通のガソリンスタンドで給油……
「レギュラー満タン」
「レギュラー満タン入りました!」
普通に給油して
普通に会計。
「ありがとうございました!」
普通に出発。
今までの異常の反動で赤髪は
「……逆に怖いな」と小さく漏らす。
銀髪
「……そうね」
移動を再開する。
赤髪
「お前さ、なんでそんな淡白なの?」
銀髪
「必要ないから」
赤髪
「面白くねーだろ」
銀髪はチラリと赤髪を見る。
「……そんな事はない」
「お、ちょっとデレた?ねぇデレた?」
少しパオの速度が上がる。
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ハスキーがナビゲートするが
カカポが
「いや、絶対こっちの方が近道」
と別の道を指す。
急ぐ道程でもないカカポの指す方へ進む。
赤髪
「遠回りじゃねーか!」
カカポ
「でも抜けたからヨシ!」
ーーーー
先行していたパオが急停車。
続いてZ2も停車……
数匹の野犬が道を塞いでいた。
銀髪がクラクション鳴らしても退かない。
「犬、出番だぞ」
「……あれ、言葉通じないタイプ」
「そんなのあるの!?」
「ある」
野犬が敵意の篭った唸りを上げる。
赤髪が単車から降りる
「あーやれやれ」
ハスキーも降りてウーっと低く唸り。
銀髪はゆっくりと野犬達の後ろに向かう。
カカポ「無理無理無理〜!!」と
雑嚢に潜り込み蓋を閉める。
赤髪が両手を大きく広げながら
「バウバウバウーー!!!」と威嚇する。
呼応する様にハスキーも吠える。
カカポは蓋の隙間からスマートフォンで撮影。
少し動揺する野犬達だがクラクションで
退かないぐらいだ。
寧ろ宣戦布告と取られたか?
野犬達がジリっと近付き、
飛び掛かろうとした瞬間!
パンッ!
銀髪の放った銃弾が
野犬達の中心辺りの地面に着弾。
赤髪達に飛び掛かろうとしていた
意識の外からの銃声と飛び散る破片で
野犬達は一斉に散り散りに逃げていった。
「ふん、雑魚共が!」とカカポ。
「お前隠れてただけじゃねーか」
カカポはスマートフォンを見せて再生。
両手を広げて「バウバウバウー!」と言う
赤髪の後ろ姿が再生される。
顔が赤くなる赤髪。
「おまえ、それ消せ!」
リピート再生しながら逃げるカカポを
追いかける赤髪。
ふんっと鼻を鳴らすハスキーに
無表情だが微かに笑みを浮かべ車に乗る銀髪。
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夕焼けの展望台
並んで夕日を眺める2人と2匹。
沈黙を破る様に赤髪が
「で、いつまで一緒?」
ザーっという風が木々を撫でる音。
銀髪
「……わからない」
カカポ
「じゃ、次は何処?」
赤髪は腕を頭の後ろで組み。
「適当」
銀髪は空を見上げて
「それでいい」
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パオとZ2のエンジンをかける音。
2台が並んで走る。
お互い距離がある……
だが、
進む方向は同じだ。




