↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/22

理由がわからない暴力


山道を走るパオ

無言で運転する銀髪に

しきりに後ろを気にするハスキー。


「……さっきからいる」


「……うん、気付いてる」


銀髪がチラリとバックミラーを見る。


一定距離を正確に維持する

ダークグリーンの旧式車、無骨なシルエット


「……キューベルワーゲンか」


少し速度を上げてカーブに入る

普通なら遅れる筈の車だが

全く同じラインでついてくる。


「……気のせいじゃない」


ーーーー


単車に縛着(ばくちゃく)された

雑嚢(ざつのう)の中で騒ぐカカポ。


「後ろ!またあれ!!」


同じキューベルワーゲンが追い掛けて来る。


「は?さっき巻いたのと同じ型じゃね?」


ーーーー


速度を上げたパオ。


銀髪はチラリと先にある脇道を見る。


「……舌しまって」


ボソっと言うとハスキーが舌を引っ込める

ギリギリまで引き付けてから……

脇道に急ハンドルで入る!


段差で荷物と自身が一瞬宙を舞う。


キューベルワーゲンも遅れず進入

車体が跳ねるも減速しない。


道が直線になると

キューベルワーゲンの運転手が

目線は一切逸らさないまま

ゴソゴソしてるのが見えた……


黒い物を手に窓から出す追跡者。


ハスキーが叫ぶ!「っ回避!!」


銀髪は声に反応して即座にハンドルを切る!

連発する銃声が先か

パオの挙動が先かわからないタイミングだった。


ーーーー


赤髪が銃声に反応しローリング……

スラロームする様に回避する赤髪。


「は!?いきなり!?」


警告無し。

狙いに迷い無しでの発砲。


異常すぎる!

アクセルを更に開ける。


カカポ叫ぶ様に祈る


「前、合流!車来るなよーー!!」


合流ポイントに入ると同時!

後方に見慣れてきた丸っこいフォルムの車両

……その後ろにはキューベルワーゲン


「銀髪!お前もかよ!?」


「ああ」


「心当たりは?」


「……ない」


「じゃあ最悪じゃん!」


合流ポイントで

キューベルワーゲンも合流する。


ハスキーとカカポ同時に叫ぶ。


「「増えたーーーー!!!」」


峠道に入りカーブの連続


銀髪のパオは

スピードを落とさない様に最短距離を走り。


赤髪のZ2はスピードをねじ伏せる様に

スライド気味にカーブを抜ける。


後方のキューベルワーゲン2台は

車間距離が常に一致している

カーブに至っては進入速度、進入角度

離脱速度、タイミングまで

棒で繋がっているかの様に一致、

いや同期している!?


しかも、


キューベルワーゲンの運転手は

1台は普通に運転しているが

もう1台はカーブの連続の最中なのに

運転しながら撃って来る!


峠道ももう終わるカーブを抜けると……


「うっ!」


赤髪テールスライドで急停車

銀髪も急ブレーキ


カーブを抜けた先

倒木にぐしゃぐしゃのガードレール……


赤髪は「詰みじゃね?」


銀髪はフッと息を吐き


「1回止める」とエンジン停止。


静寂の中キューベルワーゲンの音が近付く


赤髪は小さく溜め息を吐いた。


Z2のエンジンを切り、

跨ったまま足を地面に着ける。

そのまま降りた。


一度、大きく背伸び。

続けて屈伸、伸脚。関節を鳴らす。


「……めんどくせぇな」


呟きながら、懐に手を入れる。


引き抜いたのはモーゼル拳銃。


弾倉を差し込み、スライドを引く。

乾いた金属音が、山に響いた。


ーーーー


銀髪もパオから降りる。


無駄な動きは一切ない。


モーゼル拳銃を抜き、装填。

さらにストックを取り付ける。


“戦闘用の形”になる。


ーーーー


背後。


キューベルワーゲンが二台、

ほぼ同時に停止した。


エンジン音が途切れる。


静寂。


ドアが、ゆっくりと開く。


軋む音。


中から“それ”が降りてくる。


遠目に見れば、ただの人間。


ミリタリーファッション。

無造作にポケットへ突っ込まれた弾倉。


右手には、だらりと下げたMP40。


だが——


何かが、ズレている。


手入れされていないショートヘア。

根元と毛先で色が分離した逆プリン。


表情はない。


焦点の合っていない目。


その奥が、赤く光っているように見える。


同じものが、二人。


空気が冷える。


赤髪が、わずかに引きながら漏らす。


「うわ、マジで人かよ……」


次の瞬間。


二体の身体が、

糸の切れた人形のように“フラリ”と揺れる。


そのまま左右に分かれ——


MP40を構え、


引き金を引いた。


銃声が弾ける。


連続。


弾丸が地面を抉り、岩を砕き、空気を裂く。


銀髪が動く。


一歩、最短距離。


弾道を読むのではなく、

最初から“当たらない位置”にいる。


ーーーー


赤髪は逆。


笑う。


「ははっ、いいね!!」


真正面から突っ込む。

弾を掠めながら、強引に距離を詰める。


ーーーー


追跡者一体目。


銀髪が滑り込む。


銃口を弾き上げる同時に膝裏を撃つ。


関節が逆に折れる。


それでも……倒れない。


顔を向けず腕だけ向けて

至近距離で、撃ってくる。


銀髪、体を僅かに捻る。

最小限の回避と同時に腕を取ると

曲がらない方向に全体重をかける。


生木を折る様な音を響かせ関節を壊す。


それでも、

追跡者は可動範囲一杯を使って撃つ。


だがその範囲には銀髪は居ない……


追跡者を見下す様に


「……壊れてる」と呟く。


ーーーー


もう一体の追跡者。


赤髪が距離を詰める。


拳を振り抜くガンっという金属音


「硬った!」


MP40の銃口が向く。


回避行動をとると同時に連発する銃声。


弾が頬を掠める。

「ちっ!」


体勢を整えるが距離が、わずかに遠い。


赤髪、一瞬止まる。

無意識に右手が腰へ。


モーゼルを抜く。


構えない。狙わない。


撃つ。


“ドン”


外れる。


「当たれよオラッ!!」


もう一発。


肩口に命中!


だが、追跡者は止まらない。


「マジかよ」


悲壮的言葉だが口元は笑っている。


追跡者の銃撃が続く。


掃射する一定のリズム。


ダダダダダダダダ---


突然。


ーーーー


“カチッ”


ーーーー


無音。

世界が、一瞬止まる。


ーーーー


銀髪の視線が動く。

赤髪の口角が上がる。


「……今だろ」


赤髪が踏み込む。


一直線に迷いはなし。


追跡者が弾倉を替えようとする、

その前に……


体当たり!!


MP40を弾き飛ばす。


至近距離。

モーゼルを叩き込む。


“ドン”


顔面に直撃し仰反る頭… …

それでも、倒れない。


「しぶてぇな!!」


思い切り腹を蹴り付けると倒れる追跡者

そこに馬乗りになり……


殴る。殴る。

モーゼル拳銃の握把(グリップ)も叩きつける。


追跡者は殴られつつも腕を伸ばして……

MP40を掴み……赤髪に向ける!!


その瞬間。


横から影!


ハスキーが飛び込み

牙を剥き、追跡者の腕に噛みつく。


銃口が逸れる。


赤髪

「犬、ナイス!」


さらに重なるカカポの声。


「……次、右」


銀髪が即座に動く。

一歩、位置を変える。


赤髪も反射で合わせる。


「おっけ!」


全員の行動が噛み合う。


赤髪が追跡者の体勢を崩す。

その一瞬。


銀髪が撃つ。


一発。


正確に頭部の中枢へ。


追跡者一体、そのままの姿勢で停止。


もう一体の追跡者

まだ動く。


身体が関節がへし折れ、撃ち抜かれて

歪んだまま……


それでも手を伸ばし、武器を拾おうとする。


赤髪がその手を踏み潰す。


銀髪がゆっくりと近づく。


モーゼル拳銃を追跡者の額に向け

ためらいなく撃つ。


……二発目。


完全に、止まる。


静寂。


風の音だけが戻る。


赤髪が大きく息を吐く。


「終わり!!」


銀髪は答えない。


ただ、

倒れたそれを見ている。


指が、わずかに動いた。


ーーーー


赤髪は追跡者の頭を足で軽く蹴りながら


「で、なんだったんだ?これ?」


銀髪は暫く無言


「……知らない」


赤髪はZ2に向かいながら


「……また来ると思う?」

「来る」


今度は即答だった……


赤髪はZ2に跨がりハンドルの上で指を組み


「じゃあさ……」


一呼吸おいて


「暫く一緒でもいい?」


銀髪は予想していなかった言葉を聞き

少し考える……


今までで一番長い間。


「勝手にすれば」


「じゃあ!とりあえずさ

お互いの歓迎会って事で買い出し行こうぜ!

銀髪は何飲むんだ!?」


カカポ「オレはカルアーミルク!!」

ハスキー「肉食べたい」


機能停止した追跡者達を気にして見ながらその場を後にする銀髪。


「騒がしいのは……」


銀髪達が去ってから倒れている追跡者の内

1体だけ……


目の奥が点滅しながら

ジワーと弱く、赤く光る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。