止まったら消える
かつて、この町では事故が絶えなかったらしい。
だから誰かが決めた。
――止まらなければ、ぶつからない。ーー
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【これより停止不許可】
【一定速度維持】
そんな表示が、町の入口に並んでいた。
信号はない。交差点もない。
すべてが円形に繋がったロータリー。
車は途切れず流れ続けている。
ハスキーは不思議な光景を見ている。
食事はキッチンカーが並走している。
燃料補給もタンクローリーが
並走して給油している。
「……これ止まれないやつだ」
「……そう」
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赤髪は町の中の光景を見て
「うお、ずっと流れてる」
「降りれねーじゃん!!」
信号が無い、渋滞も無いその町の状態に
「おもしれぇ〜!」と
赤髪のテンションが上がる。
道が合流すると見覚えのある丸っこい車両。
近付くと窓越しに銀髪は目を丸くしていた。
「お前達もこの町来てたんだ!」
「偶然」と相変わらずな銀髪。
道路脇の表示が流れていく。
【停止禁止】
【減速注意】
【滞留=排除】
【制限速度不足=排除】
「排除ってなんだよ?」
「……見てればわかる」
銀髪は前だけを見ていた。
相変わらず町は流れ続けている。
生活の全てが流れ続けて
誰も止まらない。
誰も止まれない。
ハスキーが窓から顔を出し、
流れる景色を眺めている。
隣の車線の子供が手を振った。
ハスキーは、
少しだけ楽しそうに尻尾を振った。
ーーーー
その時だった。
前の車が、ほんのわずかに減速した。
一瞬の制限速度不足。
それだけだった。
次の瞬間――
後ろから来た車両が、音もなく並ぶ。
何も言わず、ただ、触れた。
その車は――
消えた。
重さごと、跡形もなく。
まるで最初から存在しなかったみたいに。
「……うわ」
赤髪の声が、低くなる。
「今の、やばくない?」
「……やばい」
カカポの即答
引き攣る笑顔の赤髪。
「笑えねぇやつじゃん、これ
今回あたしはパスするわ」
銀髪は暫く黙るが……
「同感」と肯定しながら流れを見ている。
道が分岐する。
一瞬の判断で、すべてが変わる。
「右」
「なんで?」
「流れが違う」
「……わかんのかよ」
「……なんとなく」
赤髪は一瞬だけ迷って、
「……じゃあ、乗る」
ハンドルを右に切る車に続き
単車(Z2)を右に傾ける。
並走が安定し流れに乗る。
ようやく息が整う。
「お前さ、あの10秒のやつ」
「……覚えてるの」
「なんとなくな……
もしかしてお前のその態度も……」
その時。
話しに興味深く耳を傾けてた
カカポが足を滑らせた。
「おいっ――!」
赤髪がカカポを押さえた拍子に
バランスを崩す。
スピードメーター針がほんの少し落ちる。
赤髪の顔が強張る。
その瞬間、
銀髪の車が、すっと寄った。
わずかに押し上げるように、流れへ戻す。
何も言わずに。
「……助かった」
「……別に」
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トンネルに入ると流れが、加速する。
制限速度が上がった区間に入った様だ
全体の速度が一段上がる。
タイミングがズレたのか
前方で大型トラックが排除されたのが見えた
しかし、
排除車のキャパシティを超えたのか
積荷の一部が道路に散らばる!
動揺する周囲の車両達。
その時、ハスキーの目が変わった。
耳が立ち、視線が鋭くなる。
風の流れ、車の癖、隙間、落下物の位置。
すべてを読んでいる様に
銀髪に的確な指示を出す。
落下物を避けながら車の隙間を縫う。
間髪入れず赤髪も追従する….
あの一瞬で周囲の状況を把握し
的確な指示を出すハスキーに
「こいつ……ヤバいな」
と赤髪が小さく笑う。
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やがて、トンネルの出口が見えた。
光が差す。
抜ける。
速度制限解除の看板。
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次の瞬間、
すべてが止まった。
止まれる。
静かだった。
銀髪達は路肩に
車と単車(Z2)を止める。
誰も言葉を出さない。
ただ、エンジン音だけが残る。
やがて、赤髪が呟いた。
「……止まれるって、変な感じだな」
「……うん」
少しだけ、間があった。
「この先どうする?一緒に行く?」
赤髪が聞く。
銀髪は少し考えて、
「……別」
それだけ言った。
赤髪はニヤッと笑い。
「だよな」
納得している顔だった。
二組みは、それぞれ別の道へ進む。
ハスキーが、ふと振り返る。
カカポが手、羽を振りながら叫ぶ。
「またな!!」
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二組の進む先には
強制される流れは、もうなかった。
それでも、
止まったものはもう戻らない。
まだ、
あの町はまだ回り続けている。




