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小雨の制限時間


雨がしとしとと降る中郊外に止まるパオ

キャンバストップを叩く雨粒。


完全にランダムなリズムに身を委ねる銀髪


助手席のハスキーはチラッと銀髪を見て


「機嫌いいな」


「……普通」


そっけない言い方だが何処か柔らかい。


すると急に窓から男が声をかける。


「10秒で用件を言え」


急な来訪者にハスキーは


「は?なんだ急に?」

「開始」


(ピッ)

ストップウォッチを押す男。


「いやだからそのルールなに?

こっちはただ---」


(ピッ)


「終了」


男が去って行く。


「はぁ!?」


「……」


ハスキー何かに気付き銀髪を見る……

銀髪は去って行く男一点を見詰めている。


「あ、ダメだ。興味持っちゃった」


尻尾が股の間に下がる。


銀髪は(パオ)から降りて男を追跡する。


「いい趣味じゃないぞー

いつもの関係ないで終わらそー」


聞こえない様に

小声で言いながら着いて行くハスキー。


店に入る男


店主「いらっしゃ---」

男「水、1つ」


(ピッ)


「はいよ、他には---」

(ピッ)


「終了」


会計を置いて水を持って店を出る男。

店主は両肩をすくめる。


店でも10秒

誰に対しても同じ例外はなし。


「徹底している」


ーーーー


町の入り口付近

雨装備の防水性の黒のロングコート

裾がバタつかない様に

両腿に巻き留めている姿で

単車(Z2)を走らせる赤髪。


「雨いいなー」


「滑るぞバカ

てか降り始めは文句言ってたじゃん」


「ある程度濡れたら

それを楽しむしか無いじゃーん」


「……ん?」


見た覚えのある丸っこい尻の車両。


近くにはハスキーと

こちらをチラリと見る銀髪。


「……」


通り過ぎる。


ーーーー


単車を止めるとカカポが雑嚢から飛び降り

灰皿まで走って行く。


「一服、一服〜っと」


カカポがタバコ(わかば)に火を付けると

男が急に


「10秒で用件を言え」


「へっ?

……てか、なんで10秒なんだよ」


「5秒経過」


「は?まだ半分――」


(ピッ)

「終了」


離れる男。


「会話する気ねぇだろ!」


赤髪は笑いながら


「おもしれぇなそれ」と男に話かける。


「じゃあさ、

名前からいくぞ?あたしは――」


(ピッ)

「終了」


「早っ!」


「……」


赤髪がニヤッとして。


「よし、次はもっと長く――」


(ピッ)

「終了」


「いや聞けよ!」


笑うカカポと赤髪だが

スッと真顔になって振り返る。


「また会ったな」


路地から銀髪とハスキーが出て来る。


「……そうね」


「なんだよその反応」


「普通」


距離は近いが妙な温度差が有る。


ーーーー


「10秒」


(ピッ)


「いやだからさ

そろそろ意味分かんねーって、

ルール押し付け――」


(ピッ)

「終了」


「だから早いって〜!」


赤髪は笑いながら額を押さえる。


すると、銀髪が一歩前に出て


「……質問、一つ」


(ピッ)


「それ、守る理由は何」


(ピッ)


男はストップウォッチ見たまま止まる


「……9.8秒」


「成立している」


銀髪が懐中時計を見る。

「で?」


男「無駄を削る。それだけだ」

(ピッ)


銀髪「自分を守る為?」

懐中時計を見る。


男「……結果的には、な」


銀髪はくすりと笑い


「……それで十分」


雨が弱まり

遠くの雲間から光りが差している。


男は無言でストップウォッチを止める。


ーーーー


赤髪は

満足そうに帰って行く男の背中を見送り


「お前さ」


ニヤリではない笑顔を銀髪に向けて


「ちょっと面白いな」


「……別に」


と答える銀髪だが

いつもの吐き捨てる様な感じではない。


「いや全然わからない!」


蚊帳の外だったハスキーが吠える。


同じくわからないカカポが


「10秒でまとめろ!」


「無理だろ!!」


ーーーー

後日、

店主「いらっしゃいませ」


男「水、1つ」


「はいよ、他に何か如何?」


「……水だけでいい」


会計をして水を持って店を出る男。


「ありがとうございました〜」


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