記録は濡れても消えない
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忘れたい記憶ほど、
引き出しの奥からふいに出てくる。
濡れて、読めなくなっているのに。
なぜか、
それが何かは分かる。
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海沿いの道を走るいつもの2台。
すると雨が降りだす。
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銀髪はキャンバストップを叩く
雨音に少し気分良くするが
ハスキーが窓から赤髪に
「大丈夫?止まって貰う?」
「あ〜どうしよう
カッパぐらい着たいかも……
あ、あそこ何かある、あそこで小休憩しよ」
赤髪が海岸沿いにある小規模な施設を指差し
先導する様に前に出る。
施設は近付くと誰も居ない廃墟だった。
放棄されて数年と言った荒れ具合。
簡素な桟橋に
コンクリート製の事務所の様な建物に
木材の居住用の建物が併設されていた。
赤髪はタオルで髪を拭きながら
「なんだろここ?」と周囲を見渡す。
「……水上機の繋留場
施設の残り方でわかる」
ピンポイントな答えに赤髪は
「え……詳しいな?
って、ドア開いてんじゃ〜ん!探検しよーぜ」
「軍の廃墟……これは絶対何かある!
旧軍の秘密兵器、地下に謎の研究所!!」
とウキウキと先に施設に入るカカポ。
同じく続く赤髪。
「おいおいやめろよ〜
……ワクワクするじゃねーか」
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「地下に降りる階段がここに!」
引き出しを開けるカカポ。
勿論何もない。
掲示板に残っていた古い新聞を
下らなさそうに読む赤髪。
「【史上最大の水上特攻作戦】【決死の奮戦】
【戦果拡大】【作戦継続】!!」
「大本営発表!大本営発表!」
カカポがパタパタと走り回る。
銀髪が無意識に掲示板に手を伸ばす。
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強力なフラッシュ
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真っ黒の静寂の中、
巨大な何かが海面を切り裂き
盛大な水飛沫……
飛沫の色が変化し……やがて止まる。
「……成功だ」
音が回復する……
しかし、
その音は砲撃音、銃撃音、爆音、怒声や悲鳴
紛れもない戦場協奏曲だった。
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赤髪
「こういうの大体大袈裟だよな。
国民の戦意向上!みたいな?冗談じゃな……
って……おい?」
ボーっと掲示されている
古い新聞を見る銀髪。
すると古新聞が急に剥ぎ取られる!?
ハッとする銀髪。
ハスキーが剥ぎ取った古新聞を
メチャクチャにする。
銀髪は少し止めようとするがやめる。
カカポもノリで
新聞をビリビリにして宙に撒く。
赤髪は急なハスキーとカカポの行動に
「ははっ何やってるんだお前ら?」
ハスキー
「ここ、なんか嫌」
カカポ
「ノリ」
赤髪はポリっと頬を掻いて
「まあ、辛気臭せぇ〜よな
出ようぜ」
銀髪は無意識なのか
「……もう少し、確認する」
赤髪は少し真面目な顔をして
「……さっきのやつ
お前【知らない】顔じゃないな」
銀髪
「関係な……」
「【ない】って顔じゃなかったぞ」
銀髪の言葉を遮る赤髪。
「……そういうの、やめろ」
「……」
赤髪は少し銀髪を見続けるが肩を竦めて
「外にタバコ吸いに行こうぜ
おい、一本くれよ」
「えー、貸しな」
「いつもZに乗せてやってるだろ」
外に出て行く赤髪とカカポ。
まだ、ボーっとしている銀髪の目の前に
タバコが一本だけ出た
ラッキーストライクのパッケージ。
既に一本咥えたハスキーが差し出していた。
銀髪がクスッと笑い。
「ありがとう」と
一本抜き取りハスキーとその場を後にする。
歩きだした銀髪のトレンチコートにのっていた新聞の切れ端が舞い落ちた。
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【---の護衛成功】
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記録は消せる。
紙も、名前も、痕跡も……
でも、
【起きた事】は消えない。
濡れても、破れても、形を変えて残る。




