命令外行動(後半)
教会から広場に降りて来る追跡者。
「皆さん、私の後ろに退がって下さい」
ゾロゾロと追跡者の後ろに移動する民衆。
移動が終わると追跡者はルガーを抜いて発砲!
赤髪近くの遮蔽物へ隠れて
トレンチガンを構える。
……追跡者の後ろには民衆。
口をへの字にしてモーゼル拳銃に持ち替える。
そこにハスキーが噛み付きに飛び掛かる!
左腕をワザと噛み付かせると
追跡者を狙い澄ます銀髪に発砲!牽制する。
赤髪が接近トレンチガン用に買い足した
短刀並みの長さのM1917銃剣で斬りつけるが
ルガーで受け止め弾く!ルガーを向ける!
咄嗟に避ける。発砲!
赤髪が相手をしている隙に……
銀髪が弱点の目玉を狙い澄まし狙撃!
超反応で手甲に寄る防御!
銀髪が舌打ち。
再度ハスキーの噛み付き攻撃と
赤髪の近接戦闘の連携で追跡者を押して行く
壁際に追い詰めると……
「そりゃー!」と
カカポが壁際に積んで有った木箱を崩す!
だが、
追跡者は素早く位置を変えて避ける!
「……鳥の姿が見えなかった、
何かやると思ってた」
しかし地面が滑る!?追跡者が転倒する!
カカポはガッツポーズを取り。
「よっしゃ!洗剤攻撃成功!」
赤髪が「ナイス」と飛び掛かかろうとする!
が、投石に寄って遮られる!?
「1人相手に卑怯だぞ!」民衆からの投石だ!
銀髪もモーゼル拳銃を構えたが
同じ状況だった。
赤髪は口を尖らせ
銃剣を鞘に納め
モーゼル拳銃を拳銃納に乱暴に突っ込む。
ポキポキと指を鳴らせて
半身を切って左拳をゆったりと突き出し
右拳を鳩尾に構える。
スッと息を吐いて。
「……立てよ」
追跡者はゆっくりと立ち上がり
拳を握らないオープンハンドの
ボクシングスタイルに構える。
赤髪は日本拳法を基本にした縦拳の打撃。
追跡者はボクシングやレスリングを
基本にするものの拳を痛めない
手刀や掌底を中心にした打撃の応酬。
追跡者の顎を狙った掌底を身体の回転で逃し
その回転を使ってバックブロー!
命中の瞬間!
追跡者も回転して逃してバックブロー!!
追跡者の裏拳が赤髪の顔面に命中!!
「がっ!」
追跡者は構えを直し。
「……それはもう見た」
鼻血を荒く革ジャンに袖で拭う
「やるじゃん」
すかさず追跡者が掌底のフェイントから
低空タックルを仕掛ける!
赤髪咄嗟の反応で膝蹴り。
カウンターで追跡者の顔面に直撃!
後退る追跡者……
そして
カカポが流した
石鹸水でバランスを崩す追跡者。
そこにすかさず「うううぅぅ〜〜らぁ!」と
ドロップキックする赤髪。
思い切り直撃して吹っ飛ぶ勢いの後退り
物置の扉を壊して倒れる。
外野の住民達が
「追跡者さん!立って!」
「頑張れ!」
「追跡者さんを助けろ!」
赤髪が、銀髪が
ハスキーとカカポも取り囲まれる。
ハスキーは吠えて、カカポも箒を
振り回して民衆を威嚇する!
ーーーー
追跡者
「全目標……拘束」
ーーーー
住民達に揉みくちゃにされる中
銀髪の背中に悪寒が走る。
住民達の隙間から
追跡者が立ち上がるのが見えた。
追跡者はベークライト製の床尾を脇に挟む。
左手で二脚を纏めて握る。
右手で控桿を引き握把に握り直す。
「……排除開始」
銀髪が叫ぶ!
「全員伏せろぉぉーーーー!!!」
布を割く様な、電動ノコギリの様な音が響くと見えない鉛の豪雨が
地面を噛み砕きながら近付いて来る!
同時に囲んで居た住民達がバタバタと倒れる。
追跡者はゆっくりと歩きながら手に持った
大戦当時連合国に電動ノコギリと恐れられた
汎用軽機関銃【MG42】を構え直す。
茫然とする住民。
「え?
追跡者さん?なんで?」
追跡者は無表情無感情に
「任務優先」
MG42を構える……
「ばか!隠れろ!!」
赤髪が住民の襟首を掴んで遮蔽物に飛び込む!!
繋がった銃撃音に遮蔽物で身を隠していると
遮蔽物に衝撃!
ついで赤髪の直ぐ横の壁に大穴を穿つ!?
いつの間にか
ゾロターン対戦車ライフルも持ち出している。
赤髪は中空を見ながら
「……こりゃあ、隠れてもいられねぇな」
繋がる射撃音!悲鳴!何かを砕く音。
住民たちの悲鳴が教会広場に響く。
「こっちだ! 急げ!」
ハスキーは吠えながら路地へ駆け込み、
転んだ子供の服を咥えて立たせる。
「みんな走れー! こっちはダメだ!」
カカポも羽をばたつかせながら
屋根の上を飛び回り、
人々を安全な路地へ誘導する。
その背後。
追跡者は一歩ずつ歩いていた。
無表情。
無感情。
MG42を静かに構える。
「……排除開始。」
次の瞬間。
GEBOBOBOBOBO!!
布を裂くような、電動ノコギリのような轟音。
一直線に石畳が砕ける。
壁が爆ぜる。
噴水の縁が粉々に吹き飛び、
石片が雨のように降り注ぐ!
「伏せろ!」銀髪が叫ぶ。
赤髪は住民を突き飛ばし、
自分も瓦礫の陰へ飛び込んだ。
弾丸が頭上を薙ぎ払い、壁に無数の穴を穿つ。
「クソッ……近寄れねぇ!」
赤髪はモーゼルを構え、
遮蔽物から素早く二発撃つ。
パンッ!
パンッ!
追跡者は半歩身体をずらしただけだった。
銀髪も続けて撃つ。
狙うのは目。
しかし。
カンッ!!
左腕の手甲が火花を散らし、弾丸を弾く。
「読まれてる……!」
その時だった。
カカポが屋根の上から顔を出す。
「今なら上から──」
「待て!」
銀髪の声より早く。
追跡者はMG42を肩へ掛ける。
背中から、長大な対物ライフルを降ろした。
銀髪の表情が変わる。
「カカポ!!」
轟音。
屋根が爆散した。
木材が宙を舞い、瓦が弾け飛ぶ。
「ぎゃあああっ!!」
カカポは悲鳴を上げながら
屋根から転げ落ち、藁束へ突っ込む。
「い、生きてる! オレ生きてる!」
赤髪が叫ぶ。
「馬鹿野郎! 勝手に動くな!」
追跡者は何事もなかったかのように
対物ライフルを背へ戻し、
再びMG42を構えた。
GEBOBOBOBOBOBOBOBO!
今度は逃げ遅れた住民の前方を薙ぐように
弾丸が走る。
住民達の存在が
銀髪達の動きと火力を制限しているのを
理解しているのだ。
「走れぇ!」
ハスキーが体当たりで老人を押し、
路地へ転がす!
弾丸は老人がいた場所の石畳を粉砕した。
追跡者は歩みを止めない。
一定の速度。
一定の姿勢。
一定の呼吸。
ただ任務だけを遂行する兵器のように。
やがて。
MG42の射撃が止まった。
町が静まり返る。
赤髪が瓦礫越しに顔を出す。
「止まっ──」
「まだだ。」銀髪が低く言う。
追跡者はMG42を胸元へ引き寄せた。
銃身交換口を開く。
中から現れた銃身は、
赤熱し、陽炎を揺らしていた。
追跡者は何の躊躇もなく、
その真っ赤な銃身を素手で掴む。
ズルッ……
ゆっくりと引き抜く。
焦げる音もしない。
苦痛に顔をしかめることもない。
新しい銃身を差し込む。
ガチャン。
交換口を掌で叩き閉じる。
その一連の動作は、あまりにも滑らかだった。
赤髪が息を呑む。
「……熱くねぇのかよ。」
銀髪は目を離さない。
「違う。
熱いという判断が、ない。」
追跡者はMG42を腰溜めに構え。
再び。
「……排除開始。」
GEBOBOBOBOBOBOBOBO!!
町に、再び
電動ノコギリのような轟音が響き渡った。
その頃。
最後の住民が路地の奥へ駆け込む。
ハスキーが力強く吠えた。
「避難完了!」
カカポも屋根の陰から親指ならぬ羽を立てる。
「もう誰もいねぇ!」
銀髪は静かに息を吐いた。
「……レッド。」
赤髪はニヤリと笑う。
背中のトレンチガンを引き抜き、
ガシャンと装填。
銃口にカチリとM1917銃剣を装着する。
「もういいだろ?」
「……存分に。」
その一言で空気が変わった。
赤髪が飛び出す!
「おらぁぁぁぁ!!」
ドォン!!
至近距離からの散弾。
さすがの追跡者も半歩後退する。
だが倒れない。
MG42を構える。
GEBOBOBOBOBO!!
赤髪は滑り込むように石柱の陰へ。
石柱が一瞬で削り取られる。
「シルバ!」
銀髪がモーゼル拳銃を構えながら飛び出す。
パンッ!
パンッ!
パンッ!
狙うのは視界を奪う頭部。
追跡者は
手甲で弾きながら照準を銀髪へ切り替える。
その瞬間。
「ワウッ!!」
ハスキーが真横から飛び掛かる。
追跡者は腕を差し出す。
ガブッ!!と牙が喰い込む!
左腕へ噛み付かせたまま、そのまま回転。
ハスキーごと振り回して叩き付けようとする。
「させっか!」
赤髪が突進。
着剣したトレンチガンを槍のように突き出す。
追跡者はMG42で受け止める。
金属同士が火花を散らした。
ギリギリと押し合うが赤髪が押されている。
「ッ……力までバケモンか!」
その時。
「今だ!」
カカポがロープを引く。
建物の軒先に吊るされていた
巨大な看板が落下。
追跡者は半歩横へ。
看板は空振る。
カカポが声をあげる
「避けるなぁ!」
「避けるだろ!」
と赤髪がツッコむ。
追跡者は赤髪を蹴り飛ばし距離を取る。
再びMG42。
GEBOBOBOBOBO!!
銀髪達は散開。
赤髪は右。
銀髪は左。
ハスキーは建物の影。
カカポは屋根。
追跡者の銃口が忙しく左右へ振られる。
「よし!」
カカポが屋根を走る。
「上なら──」
轟音。
ゾロターンの射撃で屋根の一部が弾けるする。
「ぎゃあああ!!」
木片と一緒にカカポが転がり落ちる。
「またかよぉぉ!!」
赤髪は思わず笑う。
「学習しろ!」
「してる途中だ!」カカポ怒りの返答!
銀髪が低く言う。
「……アイツは私達を動かしている
MGで追い込み、ゾロターンで仕留める気だ」
赤髪の笑みが消える。
「なるほど……そういう戦い方か。」
追跡者は再びMG42を構え直す。
無駄がない。
焦りもない。
まるで
戦闘教範を読み上げるような正確さだった。
その姿を見たカカポが雑嚢を漁る。
「……だったら
オレは教範にねぇ事、やってやる。」
銀髪は遮蔽物を背にモーゼルを咥え
カンプピストーレに榴弾を装填。
隙を見て引き金を引く!
追跡者の近くに着弾し炸裂する。
流石によろめく追跡者。
そこに「くらえぇーっ!」
と赤髪のラピットファイヤ!
両手の手甲で顔面を防御する。
動きが完全に止まった!
カカポが振りかぶりながら
追跡者に全力ダッシュ!
「くらいぃぃーー!」
「……やがれっ!!」
カカポが何かを放り投げた。
投げられたのは瓶だった追跡者に命中する
寸前に空中で手甲で割られると瓶の中身が
追跡者の全体を濡らす!?
カカポが声を張る!
「シルバ! 照明弾!」
銀髪は一瞬だけ迷うが
「……了解。」
素早く装填すると追跡者へ撃ち込む!
次の瞬間、
炎が一気に噴き上がる。
赤髪は目を丸くした。
「お前、どこでそんなもん調達した!?」
カカポは無言で羽を伸ばし、Zを指差す。
数秒の沈黙。
「……ふざけんなぁ!!」
武器を落とし炎が轟々と燃え上がる追跡者。
後退りながら腕を振り回して踠くが……
やがて倒れる。
赤髪はゆっくりと追跡者が落とした
ゾロターン対戦車ライフルに近付き
ゲシゲシと蹴りながら。
「ふぅ〜!っにしても
こんな怪物みてーな対物ライフル、
アイツどこから調達したんだ……?」
その時だった。
炎の向こうで。
ゆらり、と黒い影が立ち上がる。
誰も動けない。
「……ま、マジかよ。」
炎をまとったまま。
追跡者は、一歩。
また一歩。
こちらへ歩いてくる。
「……任務……継続。」
銀髪が叫んだ。
「レッド! そいつを寄越せー!!」
「お、おう! 重てぇーーー!!」
赤髪は歯を食いしばり、巨大な対物ライフルを抱え上げ追跡者に向けて置く。
銀髪が素早く取り付く!
素早く照準。
……そして、引き金。
轟音。
追跡者の身体が後ろへ大きく後退る。
それでも前に進もうとする。
もう一発。
轟音。
炎と破片が舞う。
更に押し込むが
……なおも進もうとする。
赤髪に冷や汗
「化け物かよ……!」
最後の一発。
引き金。
轟音。
命中した追跡者は勢いよく後退り
崖際の柵に叩きつけられる!
すると
メキメキと音を立てて柵の足場が崩れた。
追跡者は炎と煙をまとったまま、
崖下へ姿を消す。
町には静寂だけが残った。
ーーーー
数日後――
この地方新聞は、一つの記事を大きく報じた。
『教会銃撃戦事件 警察発表を訂正』
現場検証の結果、
町で発生した爆発や銃撃の多くは、
通報されていた銀髪たちによるもの
ではなかったことが判明。
また、事件以前から
「銀髪一行は無差別に人を襲う凶悪犯」という
デマ情報が町へ意図的に流布され、
住民がそれを事実として
信じ込まされていたことも明らかとなった。
警察は第三者による
大規模な情報操作の可能性が高いとして
捜査を開始。
事件の実行者である通称【追跡者】に関しての
住民への聞き取りでは
「追跡者さんが守ってくれると信じていた。」
「危険なのはあの人たちだと聞かされていた。」
「まさか嘘だったなんて……。」
「俺たちは追跡者さん……犯人を庇って
銀髪と赤髪のねえちゃんを……
酷い事をしてしまった」
と、困惑や後悔の声が相次いだ。
ーーーー
しかし、
当事者である銀髪たちは、
その頃にはもう町を離れていた。
住民達の謝罪の言葉が届くことは、
最後までなかった。
ーーーー
見に覚えの無い自分への嫌悪
そんなものは防ぎ様が無い
気にせず笑うしかないのかもしれない。
ーーーー
教会崖下3km下流
黒焦げた物体が蠢くと重々しく立ち上がる……追跡者だった。
周囲を見渡す……
周囲に目標の反応は無い……
作戦命令の更新……反応無し……
手を見る……グーパーと作動確認……
不具合はあるものの作動可能。
その時、茂みがガサガサと揺れる。
身構える追跡者……
「にゃー」
耳が大きく斑点模様が目立つ
ブルーの目を持つ子猫だった。
「……」
……猫は追跡者をジッと見上げている。
「にゃー」
「……」
周囲を索敵する……反応無し。
……親個体は居ない、脅威度0
追跡者は移動を開始しようとすると
何かを懇願する様に子猫は
「にゃー、にゃー」と言う。
振り返る追跡者……
子猫の状態を検索、
生後約2週間、栄養不足状態、衛生状態不調
子猫は必死に鳴く。
「……保護対象……ではない」
命令にない進行方向に戻るが……
足が動かない。
無視できない。
……何故?
振り返り子猫に正対する……
少しだけ迷うが身を屈めて
子猫に 手を伸ばす。
だが、
引っ込める
……また伸ばす。
子猫は伸ばした手に近付き匂いを嗅ぐと
頭を手に擦り付ける。
訳も分からずに毛並みに沿って撫でる。
抵抗なく撫でられる子猫。
「……これは、誤作動か?」
子猫を抱える追跡者。
「……指示がない」
「……どうする」
追跡者が呟くと
腕の中の子猫が「にゃ」と鳴く。
追跡者は子猫に視線を落とす。
とりあえず
この動物の栄養状態と衛生状態の改善が
必要だと遠くへ歩いていく。
子猫は安心した様に
追跡者の腕の中で喉を鳴らす。
ーーーー
「命令がない状態を……」
……継続する。
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