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抜けない背中


別に急いでない山道の移動中。


パオもZものんびりと走る

たまにパオを追い抜いてはちょっかいを掛ける

いつもの光景だ。


ややキツめカーブに入りZの車体を傾ける。


すると、遠くから聞こえていた

エンジン音が、重なると

勢いよくパオとZを

ごぼう抜きするシルバーの車体。


赤髪はバイザーの奧でニヤッとする。


パオは一定速度のまま

銀髪は横目で赤髪を見る。


……何かを察したハスキーは窓から顔を出す。

「……追うなよ」


赤髪にとってはそれは

スタートの合図でしかない。


「無理」


赤髪は前傾になると同時にアクセルを開ける

一瞬咳吐いた後、回転数が上がり

ヨシムラ音が叫び始め

速度を上げパオを置いて行く。


カーブを3つ抜けた所で追いついた。

近付きながら少しそいつを後ろから観察する。

角テールランプに近未来的な後ろ姿の車体。

特徴的フロントカウルの

シルバーのGSX1100Sカタナ。


運転手はガタイの良い男

肘にプロテクターが付いた革ジャン。

バトルスーツってヤツに

Gベスト背中には

読めないが円形配されたアルファベット

その中に背面飛行の零式観測機。


勢いよく抜いたと思ったが

急いでる風でも無理してる風でもない

穏やかに滑らかに走る。


ただ、彼の巡航速度が速いだけだった。


だが、赤髪がアクセルを更に開けると

強引にカタナを抜く。


更に速度を上げて行く。

カーブを一つ……二つ……


「ふふ〜ん♪こんなもんよ!

もう、相手はミラーの向こうが……」


ミラーに視線を移すと

直ぐ後ろに付いて来てる。


アクセルを更に開ける赤髪。


……だが離せない。

ピッタリと付いて来る。


カーブに入ると

おそらくここで初めてカタナが力を出す。


背後で大きくなったエンジン音が最大化すると

大外を抜かれる!?


「くっそ!」


後ろから見るとよく分かる無駄がない。

速い。


抜けない。

カーブのたびに離されていく。


「……」


赤髪は「上等」とポツリと言うと


「パージ!」


荷物を留めているベルトの金具を外す。

リアシート上の革カバンとそれに縛着しているテント、マットが道路に落ちる!


「サイドバックも外して!」

と言うが

「なら、一回止まって!」


舌打ちをして1速落としてアクセルを開ける。

吠えるエンジン!


一気にカタナとの距離を詰める。


ーーーー

カタナ側


バックミラーをチラリと見る。

「……は?」


さっきまで後ろにいたバイクが

“別物”になっている。

「なんだコイツ」


だが

口元が少しだけ上がる。


「いいね」


スロットルを開ける。


コーナー。


赤髪、突っ込みが深いが限界まで攻める。


ペースを上げるカタナ。

ラインが綺麗すぎる

【無駄がないから速い】


赤髪抜けない。

「っ……!」


直線で並ぶ。

一瞬、視線が合う。


カタナのヘルメットには

派手な羽の様なトライバル模様。


でも目は冷静。


カタナのが声を掛ける。

「いい走りするじゃん」


赤髪、笑う

「そっちこそ!」


またコーナー。

さっきより離される。


「くそっ……!」


実力差、集中力も切れてきた。


頂上付近

カタナがウインカーを出す。


展望台の案内看板を見る。


ーーーー

展望台の駐輪場に2台が同時に滑り込む。


エンジン音が落ちる。


今までが嘘の様な静寂。

だが、手の痺れが現実だと伝える。


赤髪がヘルメット取る。


荒い息遣いだが笑顔で

「兄さん速いね!全然抜けなかった!」


相手もヘルメットを脱ぐ。


モヒカン頭に髭。

タトゥー。


タバコ、ショートホープを取り出し

ジッポで火をつける。

金属音。

紫煙を煙、吐き出す。


「そりゃどうも

……しかしお前」


ちらっとZを見る

リアシートの大物を外したとはいえ

サイドバックにカカポ入り雑嚢。

トレンチガンにその他が積まれている。


「積みすぎだろ」


赤髪

「あれはハンデ!」


相手、笑う

「バカか」


赤髪も笑いながら

「よく言われる」


少し間、風が吹く。

モヒカンはふと空を見る。


「もうダメだと思った時のやつ、知ってる?」


赤髪

「なにそれ?」


モヒカンが指でリズム取る


「シャーリー、シャーリー、イェーガー

これを3回」


赤髪

「ダサッ!」


モヒカンはニヤッと

「効くぞ」


少しだけ真面目な顔になる

「過去の自分から見て、今がOKならOKだ」


沈黙。


赤髪

「……それはちょっと分かるかも」


遠く。

銀髪のパオがゆっくり来る。


モヒカン、ちらっと見る

「……仲間か」


赤髪ニンマリと

「まあね」


モヒカンはタバコを吸い終わり火を落とす。

「いいじゃん」


カタナに跨がる

「次は軽くして来い」


カタナ、エンジン始動。


モヒカン振り返らずに

「そしたらもうちょい遊べる」


去っていくカタナ使いのモヒカン。


赤髪はしばらく見てる


小さく

「……シャーリー、シャーリー、イェーガー」


パオから覗く銀髪とハスキー


「何してる?」

「わう!」


ーーーー


パオと銀髪、ハスキーが

薄っすらと消えていく。


ーーーー

数日前


赤髪

「追跡者の脅威なくなったから解散でよくね」

カカポ

「え〜こんなあっさりなの!?

もうずっと一緒でいいじゃん!

シルバとレッド良いコンビだよ!?」


ハスキー

「……オレはシンプルに寂しい」


赤髪

「別に永遠の別れじゃね〜だろ?」


銀髪

「道は繋がってる。その内また会う」


赤髪Zに跨がるとエンジンをかけて

「じゃ、また」と2本指で敬礼の様な仕草。


銀髪も軽く手を挙げ

「じゃ」


走り出すZ

見えなくなるまで手(羽根)を振るカカポ。


渾身の遠吠えのハスキー。


ーーーー

現在


「……シャーリー、シャーリー、イェーガー」


「あ〜喫煙所遠過ぎ〜

人より多く納税してる愛国者に酷くねぇ?」


ぼやきながらカカポ。


「……シャーリー、シャーリー、イェーガー」


「ん、なんか言った?」

「おまじない」


「乙女かっ!?」

「乙女だよ!」


「……で、これから何処行く?」

「……最果てにでも行ってみるか!」


「何処かわからないけどカッコいいじゃん!」


Zの雑嚢に乗り込むカカポ。

Zに跨がる赤髪。


夕日の空の下Zのヨシムラ音が響く。


その音は

何処か別の空でパオの音と交わる。


【シルバレッド】第一部

【完】


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