霧の海
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霧の日は船を出すな
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1階が海と直結した舟屋が連なる寂れた漁村。
赤髪が手隙な船頭に声をかけている。
「あそこには近付くな」
頭ごなしに船頭に言われると
赤髪膨れ面で「なんで?」と聞く。
「昔、人が消えた」
カカポはやれやれと
「はい、出た怖い話〜」
銀髪
「……」
ハスキーだけソワソワしている。
銀髪は気付いてはいたが聞かない。
赤髪は船頭の肩をバシバシ叩きながら
「大丈夫大丈夫!行ける行ける!
昔の話しだろ?」
船頭じっと赤髪見て
「死ぬぞ嬢ちゃん」
赤髪は胸を張って
「今まで何回も言われた」
銀髪は呆れた様に
「そんなので胸を張るな」
笑顔を崩さない赤髪。
「今、生きてる事に胸張ってる」
カカポ
「ちょっとだけイイ事言うな」
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別の船屋に向かいながら赤髪
「島に旧軍施設あるらしいぞ」
銀髪は横目に見ながら
「それが行きたい理由か?
……で、その情報源は?」
赤髪はえっへんと
「居酒場!」
銀髪やれやれと
「終わってるな」
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なんとか説得に成功して
ボロい小型船を出してくれる事になった。
船首で赤髪とカカポ
「テッ〜テッテ〜♪テテッ〜♪」
「テッ〜テッテ〜♪
テテッ〜テテェテェテェテェ〜♪」
インディージョーンズのテーマで
ノリノリの2人に反して霧深くなってくる。
船頭は渋い顔をして
「引き返すぞ!」
赤髪
「え〜あとちょっとじゃん!」
カカポも「そーだ!そーだ!」と野次を飛ばす。
その時。
ゴゴンッ!!船底に嫌な音が響く。
カカポはムンクの叫びの様に叫ぶ
「終わったァ!!」
銀髪が素早く被害確認を行う
「船の状態は?」
船倉から船頭が焦り顔で出て来る。
「浸水してる!
直ぐには沈まないが町までは無理だ!」
銀髪
「無線機は?」
船頭
「すぐ帰るつもりだったんだ!積んでない!」
銀髪は腕を組み顎を揉む
「霧も濃くなってきた、雨も降り出した……」
懐中時計に目をやる
「日ももう落ちる……」
赤髪は遠慮気味に
「……ちょっとヤバい?」
銀髪
「【かなり】ヤバい」
カカポ頭を抱え
「お前が【かなり】って言う時
マジ、デンジャーなんだよ!!」
銀髪はまずは生存を優先する為
「灯台目指せ!上陸出来そうな所わかるか?」
船頭は梶を握りながら
「……灯台守用の岩壁が有る筈だが……」
ハスキーは宙空に鼻を向け全神経を集中する。
「……コンクリートの匂い。
……カビの匂いがなんとか、あっち」
銀髪
「……行くぞ」
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申し訳程度の岩壁に接岸させて
獣道を突っ切ると灯台に到着した。
想定通り無人だった……
赤髪は放棄済みの灯台の中辺りを見渡しながら
「なんか前、
雨宿りした所と似た雰囲気だな」
ハスキーは顔をしかめる
「……やな匂い」
早速家探しするカカポ。
危機的状況だが暇でもある。
全員が参加する。
古い地図。
忘れられた道具達だが
妙に軍用の物が多い気がする。
「あったーーー!!」
カカポの声に駆け付ける
重厚な鉄扉だ。
赤髪がポケットを弄りながら
「よーしっ!」
ポケットの中から何かを取り出して
掲げ妙なダミ声で
「ピッキングツール!」
扉に取り付きカチャカチャと
鍵穴にツールを挿し込む……
カチャカチャカチャ
カチャカチャカチャカチャカチャ
ガッ!ガチ、ガチ!
赤髪頑張るが……
モーゼル拳銃を抜く!?
銀髪が叫ぶ!
「っ!全員伏せろ!」
全員伏せたと同時に発砲音。
跳弾で関係ない場所にも着弾!
たっぷりと1弾倉撃ち尽くす。
銃口にフッと息を吹き。
「開け、ゴマ!だ」
カカポが怒鳴る
「ふっざけんな!!」
全員で赤髪を責め立てる中
ハスキーの鼻がピクリとする。
弾痕だらけの扉……
明らかにカビとホコリの匂いが強くなっている
「……開いてる」
皆が一斉に向く。
「マジマジ!?」
赤髪が扉に取り付き開けて覗き込む。
地下への階段、底は見えない……
「うは、絶対ヤバい」
カカポはニヤニヤして
「でも入るんだろ?」
赤髪もニヤッとして
「もち!」
階段を下りて行く。
正直、発電機、ポンプ等の
機械室程度と思っていたが……
予想以上の規模だった。
カビやホコリの匂いに薬品臭が混じった
長い通路、荒れた様な区画、
崩落している区画、中には
非常灯が生き残っている区画まであった。
「や、やばい……マジもんじゃん」
探索を進めると破壊されているが
本格的な研究室らしき区画にたどり着いた。
部屋の真ん中に紙等を纏めて焼いた跡がある。
カカポは
「……屋内で焼き芋?」と言うが
赤髪拾った棒で焼け跡を探りながら
「さすがにツッコむぞ、
撤収前の重要書類の焼却処分だろ」
焼け跡から読める部分だけを統合する。
急いでたからなのか
地下で酸素不足だったからか
以外と燃え残っていた。
赤髪は「え〜なになに〜」と焼け残りを読む。
笑顔が消える。
「……従順化研究?」
「……群体制御?」
「……痛覚遮断、身体強化
……なんだこれ」
紙を落とす。
「人間を猟犬化しようとしたって事か?」
カカポ「うわ最悪」
赤髪「……追跡者みてぇだな」
銀髪、少し止まる
一瞬フラッシュ。
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「母港だ!生きて帰れた!!」
「ばんざーい!」
「なんだ貴様!?」
連続する銃撃音
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銀髪はボソリと
「……あれは完成形じゃない」
唾を飲み込む
「……あれはもっと、」
それと同時に
メキッ、メキッと奇妙な音が聞こえる。
施設の支えが悲鳴をあげる音を
ハスキーが聞き分け
「……多分ここ崩落する」
ギョッとする一向に
「撤退?」と首を傾げるハスキー。
銀髪はコクリと肯定する。
先陣を切り走り出すハスキー
異常に正確、迷いのない逃走。
途中天井崩落の危険回避
最短ルートを音や匂いで判断する。
カカポ走りながら
「お前ほんと何なんだよ」
ハスキーは見向きせず
「知らねぇって」
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「ここ抜けたら大丈夫」
広い空間に出ると異常な光景。
「秘密ドック!?」
「すげぇ!潜水艦有るぞ!」
水面を切り裂く様な鋭い艦首。
この国の設計では無い艦影に銀髪は
「呂号潜水艦!?……いやUボートだ」
赤髪が指差しながら
「これで逃げよう!」
「無理、自沈処理してる……けど、
何かあるかも」
Uボートに乗り込み捜索する
殆ど水没していて探索場所は限られていた。
壁に据え付けられたケースの中
金属製の防水ケースを開ける銀髪。
「……信号銃」
銀髪は信号銃を調べる。
本体は錆びが多少浮いている。
銃身部をテイクダウンし銃口を覗く。
銃口内、ライフリングは綺麗だ。
銃身を元に戻すと空撃ち……問題ない。
と赤髪に見せる
銃本体側面にZの刻印。
「お前好きそう」
赤髪はキョトンと
「意味はわからないけど好きだぞ。
Zだし」
数秒後
銀髪はにこりと
「……気に入った」
カカポが「爆弾一杯あったー!」と
ハスキーが爆薬を不本意そうに背負って来た。
ハスキーはニヤッと
「【懐かしい】重さだったぜ」
銀髪が素早く爆薬を取り上げ
「……ありがとう、お疲れ様」と
少し震えているハスキーを撫でる。
壁の薄そうな所を探して……発破。
カカポが手(羽)を上げ
「俺が見付けたから俺がやりたい!」
「……」
銀髪が有り合わせの材料で作った起爆装置を
カカポに渡す。
「3、2、1!発破!」
「……あれ?」
覗こうとするカカポを引っ掴んで戻す。
爆発音、衝撃波
「あ、ありがと」
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外への脱出成功すると
施設が完全に崩落したのか
地鳴りと共に灯台が立っていた辺りが陥没する。
一同は安堵のため息を吐く。
だが霧で救助は見えない。
灯台は死んでる。
船頭が膝を着く
「助かったけど救助が……」
銀髪が信号拳銃を構える。
それを見た赤髪ニヤッと
「届くか?」
銀髪は真剣な目で
「届かせる!」
引き金を引くと同時に
ドンッ!!
霧を裂く赤い花が空に咲く。
その赤光を見た瞬間。
ハスキー、僅かに震える。
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草原地帯での低い視線。
赤い照明弾が上がると
штурм !(シュトゥルム!)の号令
一斉に駆け出す犬達。
閃光が広がる
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ハスキーは何も言わずに、動かずにいる。
信号銃を撃ち終わり手を降ろす銀髪は
霧の向こうを見つめたまま
何も言わずハスキーの頭に手を置く。
ビクリと銀髪を見上げるハスキー。
……しばらく霧の向こうを見つめる銀髪を
見てから自分も霧の向こうを見つめる。
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遠くから汽笛。
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カカポ
「キターーーーー!!」
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霧も晴れ、日が上がり始める。
救助船の甲板。
銀髪が信号銃を見てる所に赤髪が隣りに来る。
「それ、結局持ってくんだ」
「……信号は必要だ」
カカポがジトリと
「そのうち絶対変な使い方するだろ?」
銀髪「……例えば?」
カカポ「放火とか、壁吹っ飛ばすとか?」
銀髪は宙空を見ながら少し考える。
カカポに真顔を向け。
「……できそうだな」
カカポ
「ほらァ!!」




