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友人として、これからも一緒にいてほしい①

夜会当日。毎年恒例のようにジュリアン様がシルヴァン家にお迎えにきてくれました。優しい、、、

私の態度が曖昧なのに、今までずっとお迎えに来てくれるし、夜会が終われば連れて帰ってくれる。優しい方。だけど、それは周りに王家とシルヴァン家がずっと仲が良いことを知らしめるためのパフォーマンスでもあったんです。

だから、‘候補’であっても大事にされた。本来、候補止まりであれば、ジュリアン様が王妃様主催の定例茶会で誰かを見初めれば、私はお役御免となるところなんですが、誰を選ぶともされないことで、ずっと私と一緒にいてくれました。

そんな彼に甘えて、このぬるま湯のような穏やかな空間に、ジュリアン様やお兄様たちと一緒にいられる賑やかな時間を、満喫していたんです。


大人になったら、きっともう手が伸ばせない優しい時間があるから。それを失わないよう、彼らといることを選んでいました。私は、私の心にポッカリと穴が空いていたから、その穴埋めを、彼らで代替えしていたんです。

こんな好きな人も見つからない今世で、欲しいものもないと思っていたから。今世を惰性で生きていこうとすら思っていた私なんかを、優しく真綿で包むように気にかけてくれていた彼らを、自分の都合の良い存在として扱っていた。

だから、そんな私は許されないのだとわかっています。ですが、今世にみえた、彼女がいるのかもしれないという希望に縋るため、今夜ジュリアン様に告げるんです。私の想いと、覚悟。そして、お礼を込めて。



ガラガラ……ガラ…ガラ………


ああ、ジュリアン様が来た。今年も、彼と選んだドレスと、彼の選んだアクセサリーに身を包む(わたくし)を、優しい瞳で見つめてくる彼に、チクチクした気持ちになりながらも手を取っているのです。

今夜もまた迎えに来てくれた。優しい彼に、私は今夜酷いことをするのです。。。



「ジュリアン様、本日もご機嫌麗しく。毎回のことですが、お迎えに来てくださり感謝いたしますわ。」

「やぁ、ディアナ嬢。今夜は一段と綺麗だね。その綺麗な御髪に僕と選んだドレスとネックレスが映えて、君が大人に近づいているのがわかる。」そう、彼が私を褒めそやしながら、何気に自分の贈ったプレゼントが私に合ってることをアピールする姿に、何だか彼も気づいているんだと思いました。だけど、この話は夜会が終わるまですることではないと分かるから、私も牽制しちゃいました。

「そんな、(わたくし)はまだまだ立派な大人には近づけていないです。ジュリアン様こそ、本日もその綺麗な銀の髪が整えられて、衣装に映えてますわ。それに、(わたくし)のドレスにも合うように(あつら)えた衣装ですわね。」

彼の今日の礼服、私のスカイブルーのドレスに合わせて濃紺色に水色のチーフを用意しています。彼の気合いの入れように、今日が正念場だと言われているみたいです。

「そうかい?君の美しさに合わせるなら僕も準備をしっかりしないといけないだろう?リアムにも、君のエスコートをちゃんとするようにきつく仰せつかっているからね。」ニコニコと、ジュリアン様がお兄様を引き合いに出します。そんなお兄様にちょっと恨めしい気持ちにもなりますが、今日はお兄様、キャシー様をエスコートして、2人仲良く登城するので私たちとは別行動です。だけどこれも、仕組まれているようでイヤになりますね。。。

「もう。(わたくし)ももう、小さな子どもではないのですから、そんなに心配はいりませんわ。」少し頬を膨らませながら、ジュリアン様に苦言を呈します。

「小さな、可愛いあのディアナ嬢ではもうないからね。君がどんどん綺麗なっていくから、僕も尚のこと、しっかりついていなくてはいけないんだよ。」

「………。」

サラッと私を子ども扱いしていないと返す彼に、何だかしくしくと心臓が握り潰される気持ちがして、何も言えませんでした。



ガヤガヤ……。

ああ、着いてしまった。王城。そして、夜会の会場。王家主催とあって、人が所狭しと集まっています。そんな中、ジュリアン様の登場になりますから、会場に入ると注目をされ居た堪れない気持ちにもなります。

「大丈夫かい?ディアナ嬢は、この挨拶が昔から苦手だね。」そう苦笑しながら私に優しく声をかけてくれます。

「だって、沢山の人が(わたくし)たちをみていますもの。恥ずかしいですわ。それに、(わたくし)には、皆様に応えられるだけの覚悟もありませんもの。。。」

「そうかい?君が最初に僕に放った言葉たちを思うと、肝の据わり方は相当なものだよ?僕が君に憧れるくらいには、君は、聡明で、公平だ。まるで為政者に向いているくらいには。」ジュリアン様があの頃を思い出しながら、私とのことを懐古しているんでしょうか。為政者などと例えて、(わたくし)を囲うかのよう。だけど私には、不相応です。それに、彼も分かっている。私の心に、彼はいないということを。

「そんな、幼い頃の(わたくし)の、生意気な態度ですわ。お兄様の後ろで隠れて強気なフリをしていただけ。それをまるで前向きな捉え方で仰らないで下さいな。今思うと、とても恥ずかしいですもの。」そう、悔恨を伝えます。

「そんなことはない。君は、あの頃から何も変わらない公平さと優しさがあるよ。リアムの後ろにいたとしても、ただ守られるだけでもない。変わる努力をしていたじゃないか。今も、こうして僕と挨拶周りをしてくれている。努力を止めない強さがある。その気持ちは、大切なものだ。」

「これは、ただ、他人に興味を持てていないだけです。だから、周りに気づかれないよう興味を持つフリをしていることを隠すために、取り繕っているだけです。そんな風に思われていることが居た堪れないですわ……。」

「本当に、他人に興味を持たない人は、否定も、肯定もしない。君は、大切なことは言葉にして相手に伝えられている。それは、君のいう無関心ではないんだよ。君のそれは、優しさだ。」

「………。」あぁ、本当に、彼は私を良い風に解釈する。何をしても、肯定してくれる。温かさを私に向けてくれる。こんな彼を伴侶にしたらとても幸せに生きられるのだろうと思うけど、それをしたら、()()()は、私でなくなってしまう。‘わたし’を辞めないために、(わたくし)は彼とキチンと話すんです。

「ジュリアン様、この夜会が終わったら、(わたくし)とお話してください。。。」

「ああ、いいよ。君が望むなら、僕はどんな願いも叶えてしまうだろうね。」ちょっと驚いた顔をしたジュリアン様。きっと気づいたんだけど、すぐにいつもの優しい表情(かお)になって、軽口を叩いてくれる。それが、嬉しいけど、申し訳なさも募る。

「そんな寂しそうな顔をしないでくれ。僕は、どんな話でも君とのことなら、ちゃんと話したいんだ。」

そう、彼は話してくれた。。。


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