第五章 価値
「はぁはぁはぁ。」
俺は、謎の少女から逃げるように、家まで走った。
家に着くと俺は、息を荒らげながら、自分の部屋へと行く。
「健一!どうしたの?」
母親が、俺を心配する。
「なんでもねぇよ!」
俺は部屋へと急いだ。
バタンっ。と戸を閉め、俺は鞄からパンドラの箱を取り出す。
「『やっほ〜。お呼びですか〜?ケーちん。』」
謎に浮遊し、クルクル回りながら、俺に向かってくるパンドラ。
俺は、「『トリプルアクセル〜。』」と遊んでいる彼女に聞いた。
「なぁ、お前。空色の髪の、性格がコロコロ変わる少女を知っているか?」
俺の質問に、パンドラは回るのをやめて、答える。
「『性格が、コロコロ?う〜ん。空色の髪なら『ガナ』ちゃんかな〜?』」
「ガナちゃん?」
俺の言葉を聞いて、パンドラは突然マイクを出現させ、歌い出す。
「『む〜かし、むかし、ある所に♪夢を配る者がいて〜♪彼女の手により作られた〜♪それが『ガナ』ちゃんなんだよ〜♪
だけども『ガナ』ちゃんは〜♪記憶もな〜い♪価値もな〜い♪だから、あの子はスクラップ〜♪皆から煙たがれた〜♪』」
パンドラは歌い終わると、俺のベッドへ横になった。
「『『ガナ』ちゃんは失敗作だよ。『パン』ちゃん達みたいな価値のあるカミサマじゃない。』」
パンドラは俺の方を向いて、首を傾げた。
「『あの子に何か言われたの?』」
「その子に、お前は禁じられた箱だから。すぐに手放せって言われたんだ。」
俺の言葉を聞いたパンドラは、初めて笑顔を失った。
「『それで、ケーちんはそれに従うの?あの子の戯言に?あの子の言葉に価値なんてないんだよ?『パン』ちゃんにはまだ価値が…。』」
焦るパンドラは、自分の指を使い、無理矢理の笑顔を作る。
「『そういえば、ケーちん。今朝、話してた娘いたよね?ケーちんはあの娘が好きなんだよね?ね?』」
無理矢理作られた笑顔のまま、俺に近寄ってくるパンドラ。
「お、おう…。」
「『あの娘と付き合いたい?『パン』ちゃんなら2人を付き合わせられるよ!だから、ほら!願って?ね?願ってくれるよね?』」
どんどん声を荒げながら、俺を壁へと追い込むように近寄ってくるパンドラ。
「わ、分かったよ。」
俺は彼女を押し飛ばすように、放す。
「し、正直、俺はあの子が好きだし、付き合いたい。こんな願いもお前は叶えてくれるのか?」
俺の言葉に、パンドラは笑顔を取り戻す。
「『勿論!この箱に触れれば、ケーちんの願いは叶うよ!』」
パンドラはそう言うと、いつも白い部分がピンク色になった、小さな箱を出現させ、こちらに向ける。
俺はそれに触れる。
視界が青く染まる。
青色が消え、静かな自分の部屋へと視界が戻る。
「願いは叶ったのか?」
「『叶ったよ!もう暗いから、確認は明日になるけれど。』」
俺はパンドラの言葉を聞いて、自分の部屋の戸を開ける。
そして、パンドラに背を向けたまま言う。
「ありがとう。パンドラ。」
「『うん、いいよ。だから…。
また、『パン』ちゃんに願ってね。』」




