第四章 『モルガナ』
「はぁ。」
俺は、罪悪感から溜息を着く。
俺は昨日、パンドラに、いじめっ子のいじめを無くしてもらおうと思ったが。
その結果、そのいじめっ子は階段で事故を起こし、病院へ送られることになった。
俺がもう少し細かく願っていれば、いや、そもそもそんな事願わなければ。そう考えてしまう。
「はぁ。」
俺は再び溜息を着く。
「大丈夫?」
突然後ろから、女性の声が聞こえた。
俺が後ろを見ると、そこには、俺の大好きな人である。佐々木 薫がいた。
「佐々木さん⁉」
彼女は、心配そうに俺を見下ろしていた。
「ため息なんてついてどうしたの?」
俺は、下を向いて答える。
「昨日、一のいじめが無くなって欲しいって思って、そう願ったんだ。そしたらあんな事に…。」
彼女は俺の言葉に小さく笑った。
「そんなのに責任感じてたりするの?確かに、タイミングいいけどさ。君がそう願ったから、一が怪我したなんて、確証ないじゃない。」
俺はそれを否定しようと立ちあがる。
「いや!それは違くて───、」
しかし、彼女は、そんな俺に気づかずぽんと手を叩く。
「あ!次、移動教室じゃん。急ごう!」
彼女は、そのセミロングの薄茶色の髪を揺らし、俺の前から去っていった。
俺も慌てて、次の授業の準備をした。
──────────
俺は何とか、無事にすごし、下校をする。
「こんなこと言っちゃあなんだけど、一が居ない学校生活は、平和でよかったな。」
「『そんな考えに至って、責任を逃れるのですか?』」
突然、俺の後ろから声が聞こえた。
「えっ!?」
俺が振り返ると、後ろには、パンドラよりかは少し薄い青色。空色というのだろうか、そんな髪色をした、短髪の、パンドラと同年代のような少女がいた。
少女は、そのサファイアのような目で俺を睨む。
「『お前。『パンドラ』の箱を持ってるだろ?」
俺は、箱の入っている、肩掛けの鞄を手で隠す。
「な、なんだお前!? お、俺はそんな物知らない!!」
少女はにやぁと笑う。
「『アハ!その反応!隠してる場所までバレバレ。バカみたい。』」
「う、うるせぇな。持ってるからなんなんだよ!!」
「『その箱は、人間にとっては『禁じられた箱』。それを僕に渡してくれ。』」
俺は、そう言って右手をこちらに向ける少女に言う。
「そ、そんなこと言って、お前もこの箱が欲しいだけなんだろ!! 何が『禁じられた箱』だよ!! ただ、願いを叶えてくれるだけじゃないか!!」
「『その責任が、貴方に取れますか?』」
少女の鋭い言葉に、俺はドキッとした。
「『ついさっきお前は、一とか言うやつが居なくなった事に安心してたよな?』
『あれあれ〜?でも誰のせいで彼は怪我したんだっけ〜?』
『君が願わなければ、彼は病院に行くことはなかった。』
『貴方が、現状を安心する事は禁忌のはずです。』」
ころころと口調を変え、俺を責め立てる少女。
そんな彼女に、俺は詰め寄られ、壁に背を付ける。
「『人間の願いは膨らみます。故に、『禁じられた箱』の被害も大きくなります。しかし、愚かな事に人間はその責任から逃げようとします。そして───、』」
少女が、俺を噛みちぎるかのように顔を寄せる。
「『歯止めの効かなくなった奴は、己の破滅を望み出す。』」
少女は俺から離れ、右手を俺に差し出す。
「『当然、あいつはそれを叶えるわ。そんな、バカみたいな未来を変えてあげるのよ?』
『早く、その箱をこちらへ。即刻処分するので。』」
「う、うるさい!うるさい!知るか!そんなもん!!」
俺は少女を無視して、家まで走り出す。
「『はぁ。これで、私の忠告を聞かなかった人間は六兆人目ですか。まぁ、一応最後まで見守ってあげますよ。』」




